SSブログ

小説「イメージ4」No:94

イメージ No:94
 
 語り手は空に浮かぶ「雲」の私。
主人公は福賀(フクガ)貴義(キヨシ)3歳で両親を交通事故で失った孤児だ。
叔父に合気道を教わり自分に力を付け少林寺で少林拳と気功を身に付けた。

 202404-15a.jpg

 自然と親しみ、自然と会話が出来る。
1浪したが国立アート大学在学中に日本宣伝アート協会の会員に学生で初めて
なったし、国際アート・フェスティバルでグランプリを受賞した。
その事が新聞で報じられ(株)雪月花の社長にスカウトされ入社し、社会人と
してスタートする。

「経営者会議の海さんからお電話です」
「つないでください」
「久し振り。青年部長」
「ご無沙汰しております。そろそろ伊東温泉でしょうか」
「それも良いんだが、あのアルミさんから誘いが来たんだよ」
「アルミの窓へのですか?」
「そうなんだよ。二人で出てほしいってな」
「ハハハハ。なるほど。そろそろありそうな誘いですね」
「そうかい?」
「以前。会長から私に話が来て其の繋がりって感じが残っていますから」
「そうか。なるほど。で、どうする?」

「会長さえ良ければ私は乗って良いです」
「そうか。じゃあOKだって返事するよ」
「はい。その後で伊東温泉にいきませんか?」
「良いね。背中の龍さんにも会いたいしな」
「有難うございます」

 そんな事があったと思い出した。
そう云えばあれは【アルミの窓】に出た後だったな。
じぶん党の山上に手伝いを頼まれて政界に関わって副総理になって当時党内最
大派閥の会長で総理を辞任した闇雲の贈収賄を摘発した時、福賀の替え玉をし
た彼は?今何処で何をして居るのだろう。
京都で福賀の替え玉が収賄している芝居を闇雲側に見せて、東京の赤坂で闇雲
が実際に収賄している証拠をつかんだ。
「彼ですか。京都の老舗旅館の娘さんと恋をして結婚して旅館を継いでいます」
そうだったか。

 202404-15b.jpg

「今は太っちゃって、私とは似ても似つかない大男になってます」
其れでは福賀の替え玉は居なくなった。
「私を騙る事があってはと心配されましたか?」
まあね。
「有難うございます」
ところで、経営者会議の海会長と【アルミの窓】出演の話はどうなった?
「其れなんですが、大変な事になりました。会長が話したのでしょう。伊東温泉
山海ホテルのホールで収録でどうだって?」
会長がか?
「はい、恐らく会長の悪戯心だと思うのですが。受けて立つのも良いかと」
そうか。まさかと思う相手の裏をとるか?
「そうです」

「アルミの窓のアルミさんからお電話です」
「つないでください」
「もしもし、アルミの窓のアルミです。お久し振りです。その節はお忙しいとこ
ろお付き合いいただき有難うございました。また、この度は経営者会議の海会長
さんにお願いしたお二人での出演をご承知いただき有難うございます」
「お久し振りです。又お世話になります。よろしくお願いします」
「あの~ぉ。海会長さんにご相談したところ伊東温泉・山海ホテルのホールが素
晴らしいから其方でどうかと云われました。【アルミの窓】始まって以来の局外
収録をさせていたくのですが・・・」
「会長から聞いています。OKです」
電話の向こうからビックリした空気が感じられる。

「あ・り・が・と・うございます。山海ホテルは福賀さんのエリアと海会長さん
から伺っています。何かお聞きして置く事がありましたら・・・打合せとか?」
「別にありません。当日本番で良いと思います」
「打合せ無し。当日ぶっつけ本番ですね」
「そうです」
「解りました。日程については?」
「会長と相談してご連絡します」
「よろしくお願いいたします」
フゥっと電話の向こうからため息が聞こえて来た。

 202404-15c.jpg

 片や経済界の大物、もう片方は業界で初めてスカウトされて大学から部長で
入社し、あれよあれよと驚きの中で総理大臣になって手話を使いながら所信表
明演説を原稿無しで行い、閣僚の一人がスキャンダルを図られ任命責任を問わ
れ責任を取って辞任、副総理に置いた松竹梅子を暫定だが日本では初めての女
性総理大臣にした福賀だ。
海会長も福賀社長も自分で日程を作れる二人だ。
【アルミの窓】出演の日程は直ぐ決まった。

「日程が決まりました。4月24日午後2時からライブで2時間如何ですか?」
「結構です。では其の日程と条件で2時にスタート出来るようにいたします」
どれだけ二人は悪戯っ子なんだろう。
どんな事になるのかクスクス笑いながら楽しがっているに違いない。

「アルミさん。出来るだけお二人のデーターを集めました」
【アルミの窓】のスタッフにとっては初めての局外収録、それもライブだ。
編集の楽しみは無くなったが緊張感は大きい。
スタッフもアルミも燃えないでは居られない。
「凄いわ。良くこんなに一杯データーを集められたわね」
「燃えていますから」
「私も」

 つづく


nice!(105) 

nice! 105