SSブログ

小説「イメージ4」

イメージ No:81

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私。
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理大臣 現・総理府特別顧問
    今は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した(株)
    雪月花・副社長(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長
    アーティスト 合気道九段・少林拳師範・気功術師
    
    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ・理事長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
            乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添乗員
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役 元・ドライバー

 2024-01-25A.jpg

「では、前・総理で今は我が社の社長は窓際の席で奥様は通路側にお願いします。
この福寿司さまご一行の温泉一泊旅行は通称フクガセンムが企画されたものでして
恒例になっておりまして、私も運転手の車もあ!いけない。失礼をいたしました。
いつも我が東西観光をご利用くださり有難うございます。今日と明日ご一緒させて
いただきます添乗員の山谷海乃です。そしてドライバーは車好人です。宜しくお願
いいたします」
此処で乗車の客たちから拍手が起こる。

「有難うございます。常連の方もいらしゃれば今日が初めてのお方もいらっしゃい
ますので簡単に自己紹介をさせていただきます」
此処でまた大きな拍手が送られる。
「私は普通の高校を普通に卒業して東西観光バス会社に就職しました。その時既に
会社は倒産の危機にさし掛かっていたのですが其れを知らずに世界グルメツアーを
考えて提案していました。今考えれば誰もそれどころではなかったでしょう。誰も
聞いてくれませんでした。そうです此の福寿司さまご一行の恒例温泉一泊旅行に乗
せていただいた時に何故かうちの社長が一緒でした。山海ホテルについてから社長
にお願いしましたが聞いてもらえませんでした。仕方なく取りすがるように必死で
フクガセンムさんをロビーで捕まえて企画の話をしました。此れから社長に会うの
で其の後でゆっくり聞かせてもらうと云われました。そして社長に頼まれて会社を
任せてもらう事になったからこの案を形にいましょうって云われました。あ~ぁあ
の時の嬉しさを思い出します。泣けました。幸せってあるんだな~。フクガセンム
さんが(株)東西観光にして世界グルメツアー部を作ってくれました。おまけに私
を其の部の部長に・・・。私はその時19歳でした」
お~!っと驚きの声が上がりました。

「私が部長なんて無理ですって云いました。そんな事聞いた事ありますん。皆怒り
ますよ。私が考えた企画が取り上げられて形になれば嬉しいです。それで充分です
から部長は止めてくださいってお願いしました。そしたら何て云ったと思います?
其れは無責任だよって。云われてびっくりしました。貴女が考えた事を他の人が出
来ますか?って。年齢は関係ありません。貴女は明日から世界グルメツアー部の部
長です。よろしくって決められてしまいました」
うお~って感動のうめき声のような叫び声と大きな拍手が長く続いた。
「私はどの位か解らないほど頭をさげて皆にお願いしましたし謝りもしました。決
めた人はニコニコして居てるだけでした。も~ぉ何て変わった人なんでしょう?そ
して会社はフクガセンムさんの思い通りに立ち直ったのですが何と今度は副総理で
山上さんを手伝うなんて云って行ってしまいました。部長だった私に企画担当取締
役やれって無茶苦茶じゃありませんか?」

 2024-01-25B.jpg 

「それは確かに無茶苦茶だけど間違いではなかったね」
「そうですよ。立派にやってるじゃないですか」
「立派何てとんでもありません。四苦八苦ですよ。寝ちゃってるし・・・」
「申し訳ありません。変わった人に見込まれてしまって災難でしたね」
「奥様~有難うございます。その一言で報われました」
「良かったね。今まで其の気持ちを云いたかったんだね」
「そうなんです。大将解ってくれました?」
「解った。よ~く解った。私がしっかり聞きましたよ」
「私も心から感謝しています」
「山谷は文句を云ってません。感謝しています。感動をいただいています」
「そうでしょう。それも解るよ。私は笑っているけど素晴らしいと感じてる
んだよ。実はね」

「本当にそう思ってくれてます」
「山谷さんは素晴らしい出会いをしたんだな。良かったなって思てるよ」
「福賀も大変な事を頼まれていますから・・・」
「そうですね。そう云えば国立アート大学の時にもその後も色々頼まれ続け
られてますね」
「そうですね。私も世界グルメツアーを頼んで始まったのでしたし・・・」
「そうなんですよ。頼まれることから始まっていますね」
「福賀さんが頼んで始まったのは福寿司温泉一泊旅行だけかな?」
「そうですね。でも山海ホテルの定宿は?」
「そうだ。あれがあったか。あれは福さんが頼んで泊めてもらって始まった」
「それ以外は頼まれて始まってますね」
「じぶん党の山上さんから頼まれた一件は大変だったでしょう」
「そうですね。結婚して私としては初めてのパリ旅行で宿泊した其の夜でした
から驚きました。でも大変って感じはなかったです。解っていましたから」
「解っていたとは?」

「何が起こるか解らない人だって」
「そうですか。そこが違うんですね。私とは」
「変わった人と思えば大した事ではありません」
「確かに云えています」
「変わった人か。間違いなく世界一変わった人だ」
「でも、世界グルメツアーは山谷さんがお考えになった企画でしょう。でした
ら他の人では務まりませんね」
「でも、年が~」
「ホホホ年齢関係あります?」
「無いですか?」
「無いと思います」
「実はこの人のお父さん雪月花の社長さんですよ」
福寿司の女将さんがそっと口を挟んだ。

「え~そうだったのですか」
初めて聞いた山谷はビックリした。
「まさかこんなに色々な展開になるとは思いもしなかったのですが。高校3年の
時、友達と海水浴に行った海の海の家で友達の手伝いをしに来ていた彼に出会っ
たのですから偶然です」
「それがお父様の福賀スカウトにつながった?」
「そうです。父があの時の新聞。福賀が学生で初めて日本広告アート連盟の会員
になった事と国際アート・フェスチバルでグランプリを受賞した記事が載ってる
新聞です。母を呼んで見るように勧めたのです。母は前に私のアパートで友達を
呼んでバースデイ・パーティをした時にお友達として福賀を紹介していました。
母がこの人を知ってると云ったので、偶然泊まり合わせていた私にコンタクトを
頼みました。電話したら居たので其の日に二人は会う事が出来ました」
「ナミカさんのお父様が雪月花の社長だとは福賀さんは知らなかった?」
「それが・・・そろそろ就活が始まる頃でしたので何となくつながると良いなと
思う気持ちがあって私の父は雪月花の社長をしていますってチラッと云っていま
した」

 2024-01-25C.jpg

「成程。其れでは既に福賀だんの中には雪月花があたのですね。23社からオフ
ァーがあっても」
福賀が眠りから覚めて話をつないで来た。
「そうですね。先輩を通して来ていた企業の業種が食品だったり薬だったりでし
たから。雪月花は石鹸を主体にしている会社ですから化粧品を業種として増やせ
る可能性がありました。そこで夢を持ちたい希望がありました」
「そうですか。ナミカさんとの出会いが福賀さんの夢につながったのですね」
「これも運ですね」
「父は社長として最高の仕事が出来たと喜んでいました」
「それは社長でないと解らない事ですが、100年に一人出るか出ないかって人
材を取るか取られるかは企業として大きな案件なのでしょうね」
「そうですよね。浮くか沈むかでしょうから」
「実際に一年後に収益が2倍3年目で3倍と増えたそうですから」
「それで株主からも役員にと望まれ社内の役員からも押されて役員にと云われて
専務ならと云ったんですね」

「そうです。部担当の役員では思うようにお役に立てないからです」
「じぶん党の山上さんにも官僚としてって云われた時に副総理ならって云ったそ
うですね」
「そうです。全てダメもとですから。それに此方からお願いしてないです。頼ま
れての事ですから」
「頼まれてって強いですね」
「頼まれたいですね」
「頼みたい人でなくては頼まれませんよ」
「それはそうだ。頼みたくなる人になるのが先だね」
「あの正月元旦の2ページ見開きの新聞広告には驚かされました」
「私もです。今までに無かった本当に目が覚める思いの新聞広告でした」
「大将も見たでしょう」
「ああ見ましたよ。ビックリしましたよ」
「社名変更と化粧品部門新設。そして福賀さんの略歴と化粧品宣伝部・部長とし
て入社紹介の新聞広告。今までに一度も無かった広告でした」
「此れだけで株式会社雪月花は何処の企業よりも一歩も二歩も前に出た企業とし
て知られたと思います」

「福賀さんの入社が社長によるスカウトだった事も衝撃でした」
「スカウトはスポーツ界か芸能界のものでしたから企業でもあるんだって」
「社名変更からあの新聞広告まで10項目の要望を全て受け入れた月下社長も
大きな方ですね」
「その前にナミカさんと出会っていたのも不思議ですね。何か大きな力が働いて
いる様な気がしてなりません」
「そうですね。先ず其処からが始まりですか?」
「それとも福賀さんが3歳の時にご両親を交通事故で無くされた。其処からでは
ないでしょうか?」
「そこから今の福賀さんに通常は想像もつかない不思議な力が働き始めたのかも
知らませんね」
「恐らく、その力は今も、そして此れからも・・・」
「でしょうね」
「福賀さん!また寝ちゃった」
「あ!そう云えばっ気が付きました?車が動いているのか止まっているのか?」
「気が付きませんでした」
「これが福賀社長直伝我が社の売り運転です」

 つづく

nice!(105) 

小説「イメージ4」

イメージ No::80

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理
    現在は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した
   (株)雪月花・副社長 (株)東西観光・社長 フランス航空副社長
    アーティスト
    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ理事長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
    福崎(フクザキ)乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役

 ある国の窃盗団にさらわれた人たちを取り返して来たナミカのNPO財団は
日本とヨーロッパのある国で夫々船を降り家族の元に帰った。
その計画を立て指揮した福賀と財団理事長のナミカは今パリのホテルに居た。
そしてホテルに宿泊したその夜に盗賊二人をヒットマンだと思い動きを奪い
気絶したまま廊下に放置したが警察に福賀たちの身元が解ってしまう。
それは内密にとお願いして朝食をとってホテルを出た。
さてどうしようかと福賀は考えた。
先ずは自分が使っているアトリエにナミカを案内しよう。
そして、午後の便で日本に帰ろう。

「私が使っているパリのアトリエに行こう」
コンコルド広場の近くにある福賀の作品を扱ってくれている画廊による。
「妻のナミカです。アトリエに行って来ようと思います」
「お~!初めまして」
「主人がお世話になっています」
「マダム。車を取ってきます」
「どうぞ行ったらっしゃい」
「一つの仕事がやっと終わったところなので又ゆっくり来ます」
「はい。知っていますよ。ご苦労様でした」
「では又」

 マドレーヌ寺院を抜け、サンラザール駅を抜けたところにアラブ系王国の
王子所有のお城があった。
福賀が車の窓からリモコンを押すと門扉が開いた。
中に入ると花壇があり、周り込むと玄関に着いた。
一人の男が迎えに現れた。
「私は庭師で此処の管理をたのまれています。ジャンです」
「私の妻です」
「お~!奥様で。初めまして宜しくお願いいたします」
「主人がお世話になっています。こちらこそ宜しくお願いいたします」
「ごゆっくりどうぞ。何かありましたら呼んでください。直ぐ来ますから」
中に入ると吹き抜けの広いエントランスに螺旋階段が二階へと延びていた。

 2024-01A.jpg

「わ~凄い」
「此の二階に二部屋私のアトリエがあるから案内する」
「螺旋階段なんて映画みたいだわ」
「日本でもあるだろうけど。外国だと違和感が無くて良い感じだろう」
「そうね。螺旋階段ってやっぱり洋風よね」
「そうだね。自然が一番だね」
「広い!一部屋どのくらいあるんだろう?」
「20畳くらいかな?」
「裏もあるのね。二間続きのキッチン。まるでレストランの厨房みたい」
「此処で各国の要人や高官が集まるんだ」
「世界の【よりよい環境づくり】について?」
「そう。あの会社の専務の時からね」
「アラブ系の王子様に会ったのは画廊で?」
「いや。個展の会場で」
「そうなんだ」
「作品を高く評価してくれて、国に呼んでくれた」
「その時に王様が心筋梗塞で倒れられた」
「そうなんだ。空港に着いたら王子の弟が迎えに来てて」
「王様が倒れて迎えに来られないと」
「でも、早かったから何とか気功術で回復出来たんだけど」
「そのお礼に石油基地二か所をいただいた」
「そうなんだ。それでNPOナミカが出来たんだけど」
「そうね。その力は凄く大きい」
「だから世界の中で色々な行動が出来たのね」
「人が持ち合う様々な違いを基本として付き合い方を学んだ」
「貴義は芸術の世界を持ってるから」

 2024-01B.jpg

「そうだね。芸術は世界共通だからコミュニケーションにつながる」
「日本だけじゃなく、世界の【よりよい環境づくり】を理念としてでしょう」
「そう。そして人間は生物。自然を大事にしないとね」
「そうね。人間は自然から生まれました」
「では、又ゆっくり来るとして、帰りますか」

「え、らっしゃい!」
のれんを潜って戸を開けて入ると大将の元気な声が飛んで来た。
「おいおい、生きてたんだね」
「悪いけど私はしぶといんでね。簡単には死にませんよ」
「そうかい其れは良かった。おや?今日はお連れさんがあるんで?」
「私の妻がお寿司を食べたいって云うものだから」
「え~。奥様で。これはこれはお初にお目にかかりやす。福賀さんには大変
お世話になっておりやす。女将!」
「あらあら。奥様でいらっしゃいますか。福賀さんには専務さんの時からお世
話になりっぱなしです。ささどうぞ、うちではフクガセンムって云っています。
隅っこがお好みで、こちらが定席です。どうぞどうぞ」
「いつもこれでして」
と久保田の萬壽とお茶を持って来てコの字のカウンター右端の席に置き外に出
てのれんを外して中に入れ、鍵を掛けてしまった。
「もうね、魑魅魍魎の世界から戻って来たんだし、お寿司が食べたいと云われ
たんで福寿司さんに伺いました」

 2024-01C.jpg

「良いんですかい?」
「良いんですよ」
「女将!良いんだってよ」
「そうでしょう。そう来なくちゃ」
何か女将が今まで一番うれしそうだ。
「え~皆さん。突然ですが此れから店の温泉一泊旅行になりやした。店は閉めま
すから一緒に行きたい人は付いて来ていいです。行けない人はお代はいりません。
又の機会にしましょう」
女将さんが行く人に名前と連絡先を聞いてメモをする。
常連はこの時を待っていたように家に連絡の電話を掛けて連れにも連絡を入れさ
せている。
30分程準備している間、福賀夫妻は大将と話しながら好きなネタを握ってもらい
寿司を楽しんでいる。
 
「東西観光です。バスが着きました。今日は特別なお客様がいらっしゃると女将
さんに云われていますので添乗員の私の後ろの席を指定席にいたします。後の方
は適当にどうぞ」
「特別なお客様ってどなたですか?」
「フクガセンムご夫妻ですよ」
「え~前総理ご夫妻でしたか。失礼しました」
「特別って好きじゃないね」
「好きじゃなくてもこの際仕方ないでしょう」
「それは間違いなく特別です」
「え~添乗員の私も知りませんでした」
「本当ですよ。貴女の会社の社長ご夫妻ですよ」
「ぎゃ~車さん大丈夫ですか?」
「ちょっと危ないかも。でも大丈夫です。教えていただいた通りに運転しますか
ら心配はいりません」

 つづく

nice!(110) 

小説「イメージ4」

イメージ No:79

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    前・総理大臣
    3歳で両親を失い、合気道五段の叔父に育てられ、高校3年で八段
    大学1年で九段のなった。
    両親なら授かった無形の財産を生かし抜こうと必死で努力した。
    国立アート大学卒業前に国際アート・フェスティバルでグランプリを
    取った事が新聞で大きく報じられ(株)雪月花の社長・月下から即日
    スカウトされ化粧品宣伝部長で入社、4年で専務になり一年後時の与
    党総裁候補の岩上に頼まれ副総理として手伝う事になる。
    今、其の時のホテルに居て月下からの電話を受け話をして、ナミカと
    変わったところだ。

 202401a.jpg

    「ナミカ。誰かって誰なの?」
    傍に居た福賀がナミカに赤外線グラスを渡し、寝室を指して行けと合図
    をした。
    そして部屋の灯りを消し、相手の動きを伺った。
    グレーのスーツを着た男性の二人だ。
    突然の消灯に戸惑った気配が感じられた。
    福賀が素早く動いた。
    一瞬にして二人とも床に倒されて動かなくなった。
    赤外線グラスから相手の様子は良く解る。
    先ず両者の右腕の関節を外し、次に両者の大腿骨の関節を外した。
    そして当身をして気絶させた。
    さて処分の方法は如何にしたら良いか考える。
    「自分で処理するとしても日本とは違うし、ホテルの人に手伝ってもら
    う訳にもいかない。。やはり相手のデーターを消して廊下に放置するし
    かないだろう」

 202401b.jpg

     身元が解る様なものを取り出して廊下にそっと運び出した。
    古いホテルを選んだのが部屋への侵入を容易にしたのだ。
    キィがオートロックなら容易に侵入は出来なかったのだかた。
    取り上げた所持品を見て解ったが、ヒットマンのような類のものではな
    かった。
    単に旅行者を狙った盗賊の類だった。
    福賀はそっと廊下を覗いて見た。
    まだ二人は横たわったままでいた。
    傍に行って足の関節と右腕の関節をはめた。
    所持品もヒットマンのモノでは無い事が解ったので返した。
    
     そっと部屋に帰って静かに様子を伺う事にした。
    「お母さま。ごめんなさい。ホテルにワインとオードブルを頼んでいた
    事を忘れていたのホホホ」
    「なんだ。そうだったの。急に誰か来たって云うから心配しちゃった」
    「大丈夫です。ピストル以外だったら大丈夫な人が付いてますから」
    「そうだったわね。でも気を付けてね」
    「有難うございます。ちょっとゆっくりして帰ります。お父様によろし
    く云っといてください」
    「二人がしてくれた今まで誰も出来なかった事。待っていた人は当然だ
    けど沢山の人が自分の事の様に喜んでいます。私も嬉しい。有難う」
    「当たり前のことを当たり前にしただけです」
    「それが今まで出来なかった事だって、お父さん云っています私もです」
    「照れるな。貴義に云っておきます。寒くなるから風邪引かないで」
    「貴方たちもね」

 202401c.jpg

     トントンとドアが優しい音を立てた。
    「ホテルのモノです。ちょっとよろしいでしょうか」
    「はい。何でしょう?」
    「ちょっとお伺いしたい事がありまして・・・」
    「はい。どうぞ」
    「失礼します。何かご迷惑な事がありませんでしたでしょうか?」
    「いえ、何もありませんが」
    「そうですか。良かったです。実は最近周辺のホテルで盗難の被害が
    起こっていまして、今日当ホテルでも窃盗の被害があったような気配
    が伺われましたので警察に連絡して来てもらい其れらしい者を確保し
    て調べてもらったら、未遂だと云うので確認のため伺っております」
    「そうでしたか。わざわざお見舞いに来ていただき有難うございます」
    「いえ、何事も無くてほっとしました。何か必要なものがありましたら
    お持ちしますが・・・」
    「折角仰っていただいたので、良かったらワインと何かオードブル的な
    ものお願い出来ませんでしょうか?」
    「はい。畏まりました。直ぐお持ちいたします」
    良い具合に片付いたらしいと二人は顔を見合わせて微笑み合った。

    トントン
    「は~い」
    「ワインとオードブルをお持ちしました」
    「有難うございます」
    「わ~ぁこんな高価なワインなんてそれにお洒落なお料理!」
    「いえいえ。此れはオーナーからのお礼ですから・・・」
    「オーナーから?」
    「はい」
    「何で?」
    「全て解っています。お二人がどの様な方々か」
    「バレましたか?」
    「はい」
    「此処はフランスですよね」
    「そうです。パリでございます」
    「そうでしたね」
    「メルシェ・ボク」
    「オー・シャンジェリジェ」

     つづく
nice!(100) 

小説「イメージ4」

イメージ NO:78

 この道はフィクションの道であって、現実の道は隣に在る。
主人公の福賀貴義は3歳の年に両親を交通事故で失い、叔父の元で合気道を習得
しながら自然と会話し、自分のイメージでタラレバ無しで突き進んでいる。

語り手 空に浮かぶ雲
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)通称はフクガセンム
    前・総理大臣 今は(株)雪月花・副社長 (株)東西観光・社長 
    フランス航空副社長 全国ホテル・旅館連盟・顧問 全国魚農連盟・顧問
    福賀(フクガ)ナミカ NPO「ナミカ」理事長 福賀貴義の妻
その他 山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉・山海ホテル・女将 
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座・福寿司・大将
    福崎(フクザキ)乙女(オトメ)銀座・福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・総理大臣
    アリス・キキ フランス航空アジア課・役員 前・トラベルコンダクター

 2024-1.jpg

 隣の現実の道では年明けに震度7の大地震が起きて多くの人が亡くなり、安否が
不明な人も沢山いる状況だ。
他方、政治に問題が露呈して其の解明が急がれている。
其の道と此の福賀が歩く道はどう違うのだろう。

 パリの福賀のアトリエでは・・・
「福賀さん。総理を辞めてもお忙しいですね」
パーティに集まった中国の高官が労う。
「はい。色々とやり残して政界に入って手伝っていたものですから」
「未だ少し関わっていらっしゃる」
「はい。外部からですが・・・」
「解っています。でも、うちの方にも来てください」
「はい、近いうちに必ず伺います」
「うちの方にも出来るだけ早く来てください。父が首を長くして待っています」
「気になっています。国王はお元気ですか?」
「元気は元気ですが、淋しがっています」
「国王には福賀は直ぐにでも飛んで行きたいとお伝えください」
「キットですよ」
「はい。皆さんに話していたでしょう。私が政界に手伝いに行った時の事」
「新婚旅行でパリに来ていたら与党の総裁候補の岩上さんから手伝いを頼まれた」
「そうです。キキさんに後の数日妻にパリを案内お願いして翌日日本に帰った事」
「そうでしたね」
「今、盗まれた人たちを取り返して全員を送り届けた私の妻がブルターニュに来て
います」
「それは大事な事ですね。その時の時間を取り戻してください」
「有難うございます。必ず皆さんの国に伺いますから」
福賀はナミカの為にエッフェル塔の近くのホテルに部屋をキープした。

 2024-2.jpg

「ナミカ。お久ぶり」
「パリ。懐かしいです」
「あの時は済まなかったね」
「お仕事大丈夫?」
「大丈夫。皆に話してあるから」
「良かった」
「あの時、雪月花社長の義父から電話が来て、次にじぶん党の岩上さんに手伝いを
頼まれ副総理なら良いと承知して翌日に日本に帰る事になったからね。その後を明
日から楽しもう。今夜はピカソやマティス其れからモディリアニ、シャガール、ユ
トリロ、キスリング、パスキン、藤田嗣治などの魂が浮遊しているモンパルナスで
食事をしよう」
「予約は?」
「ピエール エルメにしてある」
「有難う」
「私の大大先輩の魂に是非ナミカにも逢ってほしい」
「逢えるかしら?逢いたいです」
「大丈夫。ナミカならきっと逢えるよ」

「どう?フランスでのフレンチは?」
「やっぱりフレンチね」
「此処に居て日本に帰ったら何が食べたいかな?」
「貴義は?」
「肉かな?そう、馬刺しが食べたいな。ナミカは?」
「私はお寿司が食べたい」
「そうか。じゃ~お寿司を食べに行こう」
「あ!何かかすって行った!」
「どんな感じだった?足を引きずってなかった?」
「そんな感じ}
「ロートレックかも?」
「貴義の顔がマティスになっている」
「ほんと?」

 2024-3.jpg

 外に出ると冷たい風が吹いていたが二人には温かい風に感じた。
そんな感じのまま二人はホテルに帰った。
待っていたように福賀に義父の月下から電話が入った。
「福賀です。今モンパルナスで食事して帰って来たところです」
「其れは良かった。今度は前のような事はないから安心して。様子を知りたかった
から電話しました」
「そうでしたか。ドキッとしました。こちらは楽しんでいます。ナミカさんと変わ
ります」
「ナミカです。今日はピカソやマチスやロートレックや昔のアーティストに逢いま
した」
「美術館費行ったの?」
「いいえ。レストランで美味しい料理を食べました」
「良く解りませんが?」
「ホホホ解り易く云えばお化に逢いました」
「お母さんと代ります」
「ナミカ元気?」
「元気よ。お母さまは?」
「元気よ。帰ったら遊びに来なさい。待ってますよ」
「あ!誰か入って来たみたい」
「誰かって誰?」

 つづく


nice!(100)  コメント(11) 

小説「イメージ4」

イメージNo:77

 松飾.jpg

 当ブログにおきましては昨年中皆さんにお越しいただき有難うございました。
新しい年になった途端に震度7の大きな地震が能登半島に起こり大変多くの方
が亡くなり計り知れない被害がありました。

 私が居るところは東京です。
それでも何となく横に揺れる感じがしました。

IMG_20231201_170333.jpg

 夕方で日が暮れようとしていました。
テレビが地震の報道に切り替わりました。
9時まで何処の曲も能登半島の地震報道をしていました。

 再び震度7の地震報道に驚きましたが誤報と解りほっとしました。
それでも3度の地震、4度の地震と地震報道がテロップで流されました。
恐らく能登半島周辺に居られる方はその揺れを身体で感じられ続けて
いるのだろうと思って悲しかったです。

 地震の名前が決まるのが早くてびっくりしました。
「令和6年能登半島地震」

 そして次の日。

海上保安庁機が居る滑走路に日航機が降りていき衝突炎上の事故が2日に
起こりました。
空港の管制塔からは自衛隊機に其の滑走路の使用許可を出していないと事。
5人の命が亡くなっています。

 新年そうそう自然災害の事故と人為的事故が続きました。
命の尊さを噛み締めさせられる正月になりました。
齢88年お世話になるばかりですが今年もよろしくお願いいたします。

 man-1.jpg



laner-88

nice!(99)  コメント(64)