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小説「イメージ4」No:91

イメージ No:91

 3歳で両親を失った子供が「こうしていタラ」とか「こうしていレバ」無しに
親から受け継いだであろう無形の財産の発掘を父方の叔父の合気道指導と自然と
の会話に導かれながら国立アート大学に進み、様々なコンペで賞を取りながら実
践で力をつけながら2ヶ月の夏休みを全て使い中国の少林寺に入門して少林拳と
気功術を習い師範の資格をえる。

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 大学3年に大きな出来事に出会い正面から向き合う。

 その一つは思いも掛けない刺青師名人五代目彫辰に命を掛けて六代目彫辰を継
いでほしいと頼まれ仕方なく承知した。
六代目彫辰の証明として更に福賀個人と関わるところに危害が及ばないお守りと
して背中に日本の彫り物として代表的な絵柄・登り龍を彫られる。

 二つ目は3学年の秋11月頃だったか、卒業後の就職に関わる話だった。
先輩を通して23社からオファーが来ていたが此れから何か出来るイメージをも
っており、その年の夏に海の家で出会ったナミカの父からのスカウトがあって
7項目ほどの条件を全て受け入れてくれた(株)雪月花の新設化粧品部門トータ
ル・マネージャー兼化粧品宣伝部・部長で入社し社会人としてスタートした。

 入社1年後2年後と社の業績が2倍3倍と上がると共に役員や株主から福賀の
経営への参加が打診され希望した専務取締役で参加する事になる。
2年後、ナミカと結婚してパリへ旅行するが到着の夜にじぶん党の総裁候補・山
上から電話で総裁を引き受ける条件として福賀の手伝いを付けている話があり、
副総理としてなら手伝えると返事をする。
国民の支持率26%ながら衆参とも絶対多数の勢力下の瀕死の状況でじぶん党の議
員たちは生き残るためなら何でもOKなので福賀副総理が受け入れられた。

 二人の共通の理念【よりよい環境づくり】を推進してきたが2年後、山上総理
が心筋梗塞で三度倒れ福賀が気功を使って助けたが体調不良で辞任、じぶん党か
らも脱退し政界から下野した。
手伝いを頼んだ人が居なくなった福賀も副総理を辞し、じぶん党からも外れ元の
民間人に戻った。
そして又2年後、最大野党のみんなの党・党首大海に誘われ新党「和」の党長に
なり衆参合わせた総選挙に出て大勝、初めて総理大臣になる。

 2年後、閣僚の一人がスキャンダルに巻き込まれ任命責任を問われ、責任を取
て辞任して副総理に置いた松竹梅子が暫定だが総理大臣になった。
日本で初めて女性の内閣総理大臣の誕生だ。

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語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    (株)雪月花副社長(株)東西観光社長 フランス航空副社長
    日本宣伝アート協会会員 フランス美術家連盟会員
    その他顧問多数 
    年齢37歳

 そして今、社会人としてスタートした(株)雪月花で前期の株主総会が開か
れようとしており、会場に春めいた空気が漂っていた。
時間が来て役員たちが入って来た。
「あれ?福賀副社長が居ない」
「また、何処かに行ってしまったか?」
会場にどよめきが起こっていた。
事務方の総務部長が軽く咳ばらいをして開会を宣言した。
月下社長が立ち上がって株主に向かって深く頭を下げる。
「最初に人事の件で皆様にご報告とご了承をいただかなければいけません」
またまた福賀副社長が居なくなって役員人事変更するってか?
夫々が隣と肩付き合って怪訝そうに話し始めた。
「実は・・・」
そら来た。
「実は私が先日柄にもなく心筋梗塞を起こしました。幸い伊東温泉に行ってた
福賀副社長がヘリで飛んで来て三途の川の手前から引き戻してくれました。大
して働いても居ないのに寄る年波には逆らえないと社長の役を降りさせていた
だく事にし、役員方々の了承を得ました。まだ少し会社に関わっていてほしい
と云われ会長として残る事になりました」
此処で無念の気持ちも在ったのだろう、一呼吸の間をとりました。

「幸い色々と社外で活動していた福賀がやっと落ち着いてくれる事になりまし
たので彼に社長の役を任せる事に役員会で決まりました。福賀社長どうぞ」
おぉ!え~本当に?
凄い拍手が渦を巻くように自然発生する中に福賀が入って来た。
月下会長の隣に立って頭を
深々と下げた。
「よ!福賀前総理」
笑い声。
「待ってました。福ちゃん。愛してるよ」
もうアイドルだ。
「もう何処にも行かないで。お願い」
本音でしょう。
下げた頭を上げにくい福賀が動かない。
「頼みますよ新社長」
この位で良いかなと静かに頭を上げて・・・。
「新しく社長になりました福賀貴義です」
「解ってるよ」
どっと笑い声が上がった。
隣で月下が苦笑している。
 
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 そんな事全く気にしてない株主たち。
「まだまだ色々教えていただかなければなりません。月下会長には入社前から
私の我儘を聞いていただき社内に気を使わせて来ました。その為の神経の消耗
は計り知れないものがあります。心筋梗塞は重度のストレスによるものと伺っ
ています。本当に申し訳なく思って居ます。また我儘を許していただき心から
感謝しております」
今度は無言の拍手が暫く続いていた。

「私の好きな温泉にお連れして疲れを癒していただこうと思います。そうです
ね。海在り山在り。ミネラル豊富な美味しいものを皆さん一緒に行かれるよう
な企画を考えてみたいです」
今度は拍手と一緒に踊り出す株主たち。
「皆さんあっての雪月花です。新米の社長ですがどうか、厳しいご指導ご鞭撻
を戴きたいと願っています。どうぞよろしくお願い申し上げます」
手が痛くなった株主は腕を振りながら拍手している。
福賀が改めて深々と頭を下げた。
「では、お手元にお配りした経営内容につき経理部長からご説明させていただ
きます」
すかさず手が挙がった。
「どうぞ」
「株主総会終了の動議を提出します」
「賛成!」の声が合唱のように響き渡った。

「前期株主総会終了の動議は賛成多数で決定しました」
もう拍手を忘れて株主たちは立ち上がっている。
「別室にささやかなお飲み物と料理を用意してありますのでどうぞ」
「これが堪らなく良いのよこの会社は・・・」
会社によっては荒れたり長引いたりすんなり収まらないが雪月花は違う。福賀
が居るから総会屋が来ない。
まるでお祭りのような雰囲気で終わった。
株主たちは福賀に聞きたい事が沢山あるから楽しみ一杯だ。
もう福賀に掴まって離れない女性の株主で大変。
揉みくちゃになりながら今までして来た経験話で対応している。

 株主総会と簡単なパーティが終わって福賀は社長室に戻った。
福賀が専務になった時に入社して秘書室に配属され専務付き秘書なった海辺が
今度は社長付きになった。
秘書室に電話をする。

「海辺さん。6時半二人福寿司さんに予約入れてください」
「はい。接待ですか?」
「そうです。また貴女に色々お世話になりますから」

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 つづく

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