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小説「イメージ4」 [小説]

イメージ No:64

 あらすじはNo:57にあります。
抜けている部分は回毎に折り込んでまいります。

 衆・参両院の解散で総選挙になり、告示が行われた。
自分党は最大派閥の闇雲が収賄で摘発され収監、内閣で残っているのは
大和田副総理だけになり、新しい内閣が出来るまでの仕事をしている。
党からは可成りの議員や党員が抜けて以前の勢いは無い。

 マスコミに立候補を匂わせて姿を消していた福賀の新党結成・党長と
して立候補が発表された。

「とうとう出て来ましたね。福賀さん」
「今度は総理ですね」
「どんな所信表明演説になるか楽しみです」
「何?街頭演説はしないって?」
「どういう事だ?」
「以前にこうした例はあったようですが」
「いや、あれは都知事の時じゃなかったか?」
「いえ、国政選挙でもでした」
「そうだったか。其れにしても福賀さんには又また振り回されるな」

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「そうですね。何処に現れるか皆目見当がつきません」
「こうなったら連携で行きましょう」
「連絡を密に情報交換宜しくお願いします。
「してナンバー2は?」
「松竹梅子(まつたけ・うめこ)副党長です」
「何か見えてきたぞ」
「え!また何か?立候補者男女の比率が男性1に対して女性2だと」
「これも始めから前代未聞です」

「衆議院立候補者420名。参議院立候補者300名だそうです」
「戦わずして勝負ありですか?」
「そうだな」
「いよいよ福賀総理大臣誕生か?」
「濃厚ですね」
「政界も官界も変わるだろうな」
「経済界も自然界も変わりそうですね」
「これは今世紀最大の事件になりますね」
「正にこれは事件だ。わくわくする事件だね」
「今から彼の”よりよい環境づくり第2章”が楽しみです」
「何しろデザイナーでアーティストで武道家で六代目彫辰ですから」
「武道は合気道9段、少林拳師範、気功術師範ですしね」

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「アラブ系大国に国王から命を助けてもらったお礼と石油基地を二つ
もらっているって云うから凄い」
「アートの方ではフランスのパリの画廊で福賀さんの作品を欲しい人
が作品を待っているそうだ」
「兎に角、あの代理所信表明演説は世界に発信されて知られている」
「更に、岩上総理の変わりで世界各国を飛び回り嫌われない日本を説き
続けて多くの国と不戦条約を交わし締結してきた仕事は大きいです」
「今までの内閣は防衛・防衛って攻撃される事を前提にして膨大な予算
を組んで来た。これにはアメリカからの圧力が掛かっていたようだが」

「福賀さんが国連に働きかかけた事が大きかったですね」
「問題があっても云わなければ無いも同然って事ですから」
「福賀さんは会社の専務時代に外国と交流をもって来たし」
「そうですね。それも内部の重要な人物と接していました」
「だから政権が変わってもつながりが続くんですね」
「流石です」
「福賀前総理が五代目彫辰さんに捕まって六代目を命懸けで頼まれたのも
6月だったと聞いています」

「6月は福賀さんにとって何かが起こる月なのでしょうか?」
「五代目彫辰さんが3年も毎日福賀さんの下校時に様子を伺っていたって
云うのも凄いけど、匕首(あいくち)を前に置かれて詰め寄られた福賀さん
が命の尊さを思って承知してしまったって話も凄いです」
「親から貰った体に墨なんか入れやがってと云った話を聞いた事があります」
「だけどね。五代目は無理を頼んだ福賀さんに災いが襲わないようにお守り
として彫ったんだそうだ」

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「この者とこの者が関わるところに一切手出し無用の事って裏社会の頭が連盟
で血判した書状を六代目彫辰さんが作らせて福賀さんに渡してあるそうだ」
「五代目が六代目に日本の刺青を裏の文化として出来る限り優秀な人に継がせ
たくて東京アート大学に通う人を見ていて福賀さんに目をつけたのでしょう」
「五代目の目は確かだって福賀さんの行動と成果を観れば明らかだね」
「彫辰はその世界では名人の称号らしいです」
「昨今、外国人や若者たちのタトウとの違いに命を懸けたのかも知らませんね」

「色々な意味の違いがあるけれど五代目には日本の刺青は精神的なモノであって
人に見せる装飾的なモノではないのですよ」
「日本の刺青の事を『我慢』と云う人もいますね」
「そして、人を見る目と云う事では株式会社雪月花の月下社長も凄いですね」
「新聞の記事を見て直ぐアタックして福賀さんの条件を全て受け入れてスカウト
したのですから」
「段階的には雪月花から副総理になる訳だし」
「まず部長で入って専務になって、それから副総理ですから」
「そして今度は内閣総理大臣?」

「組閣の時の呼び込みどうでした?」
「あの時も前代未聞。岩上総理が事務方と二人で始まったね」
「一番目に副総理に大和田さんが呼ばれた、その次だ誰が来るかと待っていたら
党からではなく民間から福賀さんが呼ばれたから大騒ぎになった」
「それも迎えの車ではなくて自前の黒のポルシェに乗って来た」
「恰好良かったですね」
「良かったね。みんな初めは解らなくて誰だ誰だって懸命に情報集めに走った」

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「岩上総理が辞め、福賀副総理も辞め残された大和田副総理はどうですか」
「今は選挙で出来る限りの事をするしかないけれど何れは福賀さんと派閥ごと
合流するのでは?」
「よりよい環境づくり」
「此れからどうなるでしょう。興味津々です」

 当の福賀貴義はどこにも姿を現さない。
ポスターは貼られているが新党「和」しんとう・わって書いてあり、ふくがきよし
此れだけで顔写真なし。
党長として政権への抱負や主義主張がテレビであるだろうと思いきや無し。
代わりに副党長の松竹梅子氏が出演している。
本人は何処に居るのかマスコミは探しに探してやっと捕まえた。
と云うか見掛けたのは何と祭りの踊りの輪の中だった。

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「やっぱり伊豆にいらっしゃった」
「福賀前副総理でいらっしゃいますか?」
「そうです。良く解りましたね。福賀貴義です。何かご用で?」
「何かご用って?何をしていらっしゃるんですか?」
「踊っていますが何か?」
「選挙運動の期間中ですが」
「選挙は未だですよ」
「立候補の皆さん選挙に向けて盛んにアピールしていますが」
「皆さんは皆さん。私は私なりに選挙に対しています」

 記者たちは苛ついて我を忘れているようだ。
「何かおっしゃる事ありませんか?」
「それは上野公園で皆さんとお会いした時にお話しました。此処でマスコミの
皆さんに其れは出来ません」
「そうでした。失礼しました。福賀前副総理を只今伊豆のお祭りの中で発見です」
「迷子の子供みたいに云わないでください。とうとう見つかってしまいました」
「福賀前総理でした」
「そうでしたハハハ」

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つづく

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