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小説「イメージ4」No:89

イメージ No:89

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ[雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)

出逢い
父方の叔父・自然・雲・自由・夏休み・武道・気功・彫辰・ナミカ・月下・山海
小波・福寿司の大将・キキ・フランス航空・フランスの美術家・パリの画廊・ア
ラブ系の王国・パリのアトリエ・岩上・大海・松竹など。

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ペイントで描きました。

「福賀顧問。例の法案を提出します」
「楽しみです」
例のって何だろう?
ひょっとしてあれかな?

 衆議院本会議が始まりました。
「松竹内閣総理大臣」
「はい」
呼ばれて暫定的ではあっても女性初の内閣総理大臣松竹梅子が立ち上がった。
「よりよい環境づくり内閣として閣議決定した法案の採決を求めます」
凛として力強く議事会場に響く声で法案を読み上げた。
「同性婚並びに夫婦別性の自由を認める法案に対して皆さんの同意を求めます」
各委員会などで有りや無しかを話し合って来た改革の決定事項であった。
与野党の議員が起立して採決が行われた。
賛成絶対多数で法案は通過した。
あちらの金と権力の与党政権では検討中を理由にいつまでも決められずにいる。

「福賀さんのお陰で【よりよい環境づくり」が又一つ形になりました」
「お疲れ様です。次の課題のクリアーが楽しみになりました。益々注意が必要に
なりますね。不覚を取らないように、足元をすくわれないように気を付けないと
いけませんね」
「はい。気を付けます」
「私も外から見張っています」
「宜しくお願いします。残りの任期はまだ2以上残っていますから」
「申し訳ないです。男社会に未練を強く持っている人達が此方の世界にも多いと
思わなければいけません」
「そうですね。油断は出来ません」
「決める事は大事ですが、決め過ぎるのも良くないです」
「そうですね。人間は拘束されたくありませんから」
「気をつけます」
「あちらでは偽物をもてはやして楽しんでいるようですが、此方では本物を大事
にしたいですね」
「そうですね。価値感も色々ですが、下げずに高めたいです」
「あちらでは真似を認めて楽しんでいますが、そうした気持ちが価値感覚を低く
しているのでは?」
「人の弱点を突いて笑いあったりしていますが、それは苛めを肯定しているので
はないでしょうか?」
「そうですね。お笑いのネタのつもりでいるのでしょう。いじめとは思わずに」
「そうですね。其処にあるのは人格形成に在ってはならない優越感だと気づいて
いないようです」
「やっぱり其の元を作っているのは、金と権力が作り出した社会通念ではないで
しょうか」
「そうだと思います」
「福賀さんは日本の古武道から和の精神を身につけられ、その上、中国4000
年の歩みを学ばれ、自然と親しくされていらっしゃる」
「そうする事しかありませんでしたから」
「そうだとしても、中々出来る事ではありません」
「出来るけど行わないのは行いたいけど出来ない人に申し訳ないから・・・」
「確かに」
「良い事とか悪い事とか決めるのは自分の中では出来ますが人に対しては如何か
と思います」
「なるほど」
「自分なりに云えることの一つですが、人を傷つけない心くばりが在るか無いか
です。例えば人が歩く前を横切る行為に見られます。昔はこうした行為はしては
ならないと教えられましたし自分でも認識していました。あちらの世界では習慣
的に危険な行為が行われています」

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ペイントで描きました。

「人を思いやる気持ちが全く感じられませんね」
「前に進むところを横切るのですから物理的にも危険度は高いです」
「その危険な行為を行う気持ちは全く理解出来ません」
「いけない事とも危険な行為だとも思っていない?」
「そうとしか考えられません」
「人心の荒廃ですね」
「車と車でもあります」
「そんなに気になっていませんでした」
「人を見てしているのでしょうか?」
「私も実際には経験が無いのですが・・・」
「やはり人を見てやっているようですね」
「尚更悪質です」
「何故そうなったか理解し難いです」
「自己顕示欲でしょうか?」
「認められたい気持ちが行為に出てるのでしょうか」
「そんな事で認められたって仕方ないと思いますが」
「誰でもよかった只人を殺したかったって理解しようがない殺人」
「人の気持ちは無視して自分の気持ちだけで行動する」
「こうした精神構造を作った元凶はボランティア精神を忘れ金と権力志向になった
一部の政治屋集団ではないかと思えてなりません」
「国民の命と財産を守る精神は何処に行ってしまったのでしょう」
「人殺し戦闘機の製造販売?」
「時代が変わると心まで変わるのでしょう」
「其のままで良い訳がありません」
「そうです。福賀さんの仰る通りです」
「固い事を云うようですが、大事な事ではないでしょうか?」
「基本的に硬い思考は大事です」
「あちらで聞いた話ですが、営業の接待法は食事か酒か女だそうです」
「何て事ですか」
「物的な認識で女性蔑視です」
「そんな事が・・・」
「松竹さんは驚くでしょう。私も呆れましたが此れが全てではありませんが男社会
の一部の考え方であると思わない訳にはいきません」
「なるほど、男性の中にはそうした意識が含まれていると解りました。共存共生は
相手を知る事と福賀さんに教えていただきました。ところで福賀さんがご両親から
授かったであろう無形の財産を発掘しながら力を付けられたと伺っていますが月下
社長さんにスカウトされた時にどんな条件を出されたか知りたいのですが?」
「私が一年浪人して国立アート大学に進み卒業までに出来る限り自力をつけて23
社からオファーを受け雪月花石鹸株式会社の社長月下さんからスカウトされ、社会
人の一歩を踏み出したかですね。その条件は私が入社する前に社名を雪月花株式会
社に変更、化粧品部門を新設して製造とデザインと宣伝部門を準備して其のプロジ
ェクトの構成を社長の手で行っていただき私が入社時にトータル・マネージャーと
して其の任につき化粧品部。部長として受け入れていただく。私の入社年4月以前
1月元旦の朝刊に社名変更と化粧品部門新設並びに私の略歴と化粧品宣伝部・部長
として入社の紹介を載せた2ページ見開きの広告を有力紙に掲載する事に加え入社
後は社内外を問わず活動は自由に何れの拘束は一切無しが入社条件の全てでした」
聞き終わって松竹は大きく深呼吸をした。

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ペイントで描きました。

「私は小さな町工場を経営する父の手伝いをしていましたから伺った条件は夢のよ
うで驚きで胸が詰まりそうでした。その条件は其のまま受け入れられたのでしょう
か?お金の話は?」
「出した条件は全て受け入れられました。報酬の事は一切社長にお任せしました」
再び松竹は深く深呼吸をして思った。
3歳で両親を失って叔父に育てられた人が前代未聞の条件で業界で初めてのスカウ
ト入社で社会人をスタートさせた福賀貴義を知る事が出来た。
両親の顔も朧げな悲しみが無いと云えない状況で前へ前へ力を付けながら進んでい
る福賀がそこに居る。
頑張らねば出来る限り頑張らねば。
松竹は聞いて良かった。
生まれて初めての驚きだったし、愉快だったし、楽しくて体中が笑ってしまった。
男の社会は昔から戦争の歴史だった。
世界が大国を目指して戦って来た。
そして未だ戦争をして殺し合っている。
愚かさも無視して。

つづく


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