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小説「イメージ4」

イメージ No::80

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理
    現在は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した
   (株)雪月花・副社長 (株)東西観光・社長 フランス航空副社長
    アーティスト
    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ理事長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
    福崎(フクザキ)乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役

 ある国の窃盗団にさらわれた人たちを取り返して来たナミカのNPO財団は
日本とヨーロッパのある国で夫々船を降り家族の元に帰った。
その計画を立て指揮した福賀と財団理事長のナミカは今パリのホテルに居た。
そしてホテルに宿泊したその夜に盗賊二人をヒットマンだと思い動きを奪い
気絶したまま廊下に放置したが警察に福賀たちの身元が解ってしまう。
それは内密にとお願いして朝食をとってホテルを出た。
さてどうしようかと福賀は考えた。
先ずは自分が使っているアトリエにナミカを案内しよう。
そして、午後の便で日本に帰ろう。

「私が使っているパリのアトリエに行こう」
コンコルド広場の近くにある福賀の作品を扱ってくれている画廊による。
「妻のナミカです。アトリエに行って来ようと思います」
「お~!初めまして」
「主人がお世話になっています」
「マダム。車を取ってきます」
「どうぞ行ったらっしゃい」
「一つの仕事がやっと終わったところなので又ゆっくり来ます」
「はい。知っていますよ。ご苦労様でした」
「では又」

 マドレーヌ寺院を抜け、サンラザール駅を抜けたところにアラブ系王国の
王子所有のお城があった。
福賀が車の窓からリモコンを押すと門扉が開いた。
中に入ると花壇があり、周り込むと玄関に着いた。
一人の男が迎えに現れた。
「私は庭師で此処の管理をたのまれています。ジャンです」
「私の妻です」
「お~!奥様で。初めまして宜しくお願いいたします」
「主人がお世話になっています。こちらこそ宜しくお願いいたします」
「ごゆっくりどうぞ。何かありましたら呼んでください。直ぐ来ますから」
中に入ると吹き抜けの広いエントランスに螺旋階段が二階へと延びていた。

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「わ~凄い」
「此の二階に二部屋私のアトリエがあるから案内する」
「螺旋階段なんて映画みたいだわ」
「日本でもあるだろうけど。外国だと違和感が無くて良い感じだろう」
「そうね。螺旋階段ってやっぱり洋風よね」
「そうだね。自然が一番だね」
「広い!一部屋どのくらいあるんだろう?」
「20畳くらいかな?」
「裏もあるのね。二間続きのキッチン。まるでレストランの厨房みたい」
「此処で各国の要人や高官が集まるんだ」
「世界の【よりよい環境づくり】について?」
「そう。あの会社の専務の時からね」
「アラブ系の王子様に会ったのは画廊で?」
「いや。個展の会場で」
「そうなんだ」
「作品を高く評価してくれて、国に呼んでくれた」
「その時に王様が心筋梗塞で倒れられた」
「そうなんだ。空港に着いたら王子の弟が迎えに来てて」
「王様が倒れて迎えに来られないと」
「でも、早かったから何とか気功術で回復出来たんだけど」
「そのお礼に石油基地二か所をいただいた」
「そうなんだ。それでNPOナミカが出来たんだけど」
「そうね。その力は凄く大きい」
「だから世界の中で色々な行動が出来たのね」
「人が持ち合う様々な違いを基本として付き合い方を学んだ」
「貴義は芸術の世界を持ってるから」

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「そうだね。芸術は世界共通だからコミュニケーションにつながる」
「日本だけじゃなく、世界の【よりよい環境づくり】を理念としてでしょう」
「そう。そして人間は生物。自然を大事にしないとね」
「そうね。人間は自然から生まれました」
「では、又ゆっくり来るとして、帰りますか」

「え、らっしゃい!」
のれんを潜って戸を開けて入ると大将の元気な声が飛んで来た。
「おいおい、生きてたんだね」
「悪いけど私はしぶといんでね。簡単には死にませんよ」
「そうかい其れは良かった。おや?今日はお連れさんがあるんで?」
「私の妻がお寿司を食べたいって云うものだから」
「え~。奥様で。これはこれはお初にお目にかかりやす。福賀さんには大変
お世話になっておりやす。女将!」
「あらあら。奥様でいらっしゃいますか。福賀さんには専務さんの時からお世
話になりっぱなしです。ささどうぞ、うちではフクガセンムって云っています。
隅っこがお好みで、こちらが定席です。どうぞどうぞ」
「いつもこれでして」
と久保田の萬壽とお茶を持って来てコの字のカウンター右端の席に置き外に出
てのれんを外して中に入れ、鍵を掛けてしまった。
「もうね、魑魅魍魎の世界から戻って来たんだし、お寿司が食べたいと云われ
たんで福寿司さんに伺いました」

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「良いんですかい?」
「良いんですよ」
「女将!良いんだってよ」
「そうでしょう。そう来なくちゃ」
何か女将が今まで一番うれしそうだ。
「え~皆さん。突然ですが此れから店の温泉一泊旅行になりやした。店は閉めま
すから一緒に行きたい人は付いて来ていいです。行けない人はお代はいりません。
又の機会にしましょう」
女将さんが行く人に名前と連絡先を聞いてメモをする。
常連はこの時を待っていたように家に連絡の電話を掛けて連れにも連絡を入れさ
せている。
30分程準備している間、福賀夫妻は大将と話しながら好きなネタを握ってもらい
寿司を楽しんでいる。
 
「東西観光です。バスが着きました。今日は特別なお客様がいらっしゃると女将
さんに云われていますので添乗員の私の後ろの席を指定席にいたします。後の方
は適当にどうぞ」
「特別なお客様ってどなたですか?」
「フクガセンムご夫妻ですよ」
「え~前総理ご夫妻でしたか。失礼しました」
「特別って好きじゃないね」
「好きじゃなくてもこの際仕方ないでしょう」
「それは間違いなく特別です」
「え~添乗員の私も知りませんでした」
「本当ですよ。貴女の会社の社長ご夫妻ですよ」
「ぎゃ~車さん大丈夫ですか?」
「ちょっと危ないかも。でも大丈夫です。教えていただいた通りに運転しますか
ら心配はいりません」

 つづく

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