SSブログ

小説「イメージ4」

イメージ No:79

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    前・総理大臣
    3歳で両親を失い、合気道五段の叔父に育てられ、高校3年で八段
    大学1年で九段のなった。
    両親なら授かった無形の財産を生かし抜こうと必死で努力した。
    国立アート大学卒業前に国際アート・フェスティバルでグランプリを
    取った事が新聞で大きく報じられ(株)雪月花の社長・月下から即日
    スカウトされ化粧品宣伝部長で入社、4年で専務になり一年後時の与
    党総裁候補の岩上に頼まれ副総理として手伝う事になる。
    今、其の時のホテルに居て月下からの電話を受け話をして、ナミカと
    変わったところだ。

 202401a.jpg

    「ナミカ。誰かって誰なの?」
    傍に居た福賀がナミカに赤外線グラスを渡し、寝室を指して行けと合図
    をした。
    そして部屋の灯りを消し、相手の動きを伺った。
    グレーのスーツを着た男性の二人だ。
    突然の消灯に戸惑った気配が感じられた。
    福賀が素早く動いた。
    一瞬にして二人とも床に倒されて動かなくなった。
    赤外線グラスから相手の様子は良く解る。
    先ず両者の右腕の関節を外し、次に両者の大腿骨の関節を外した。
    そして当身をして気絶させた。
    さて処分の方法は如何にしたら良いか考える。
    「自分で処理するとしても日本とは違うし、ホテルの人に手伝ってもら
    う訳にもいかない。。やはり相手のデーターを消して廊下に放置するし
    かないだろう」

 202401b.jpg

     身元が解る様なものを取り出して廊下にそっと運び出した。
    古いホテルを選んだのが部屋への侵入を容易にしたのだ。
    キィがオートロックなら容易に侵入は出来なかったのだかた。
    取り上げた所持品を見て解ったが、ヒットマンのような類のものではな
    かった。
    単に旅行者を狙った盗賊の類だった。
    福賀はそっと廊下を覗いて見た。
    まだ二人は横たわったままでいた。
    傍に行って足の関節と右腕の関節をはめた。
    所持品もヒットマンのモノでは無い事が解ったので返した。
    
     そっと部屋に帰って静かに様子を伺う事にした。
    「お母さま。ごめんなさい。ホテルにワインとオードブルを頼んでいた
    事を忘れていたのホホホ」
    「なんだ。そうだったの。急に誰か来たって云うから心配しちゃった」
    「大丈夫です。ピストル以外だったら大丈夫な人が付いてますから」
    「そうだったわね。でも気を付けてね」
    「有難うございます。ちょっとゆっくりして帰ります。お父様によろし
    く云っといてください」
    「二人がしてくれた今まで誰も出来なかった事。待っていた人は当然だ
    けど沢山の人が自分の事の様に喜んでいます。私も嬉しい。有難う」
    「当たり前のことを当たり前にしただけです」
    「それが今まで出来なかった事だって、お父さん云っています私もです」
    「照れるな。貴義に云っておきます。寒くなるから風邪引かないで」
    「貴方たちもね」

 202401c.jpg

     トントンとドアが優しい音を立てた。
    「ホテルのモノです。ちょっとよろしいでしょうか」
    「はい。何でしょう?」
    「ちょっとお伺いしたい事がありまして・・・」
    「はい。どうぞ」
    「失礼します。何かご迷惑な事がありませんでしたでしょうか?」
    「いえ、何もありませんが」
    「そうですか。良かったです。実は最近周辺のホテルで盗難の被害が
    起こっていまして、今日当ホテルでも窃盗の被害があったような気配
    が伺われましたので警察に連絡して来てもらい其れらしい者を確保し
    て調べてもらったら、未遂だと云うので確認のため伺っております」
    「そうでしたか。わざわざお見舞いに来ていただき有難うございます」
    「いえ、何事も無くてほっとしました。何か必要なものがありましたら
    お持ちしますが・・・」
    「折角仰っていただいたので、良かったらワインと何かオードブル的な
    ものお願い出来ませんでしょうか?」
    「はい。畏まりました。直ぐお持ちいたします」
    良い具合に片付いたらしいと二人は顔を見合わせて微笑み合った。

    トントン
    「は~い」
    「ワインとオードブルをお持ちしました」
    「有難うございます」
    「わ~ぁこんな高価なワインなんてそれにお洒落なお料理!」
    「いえいえ。此れはオーナーからのお礼ですから・・・」
    「オーナーから?」
    「はい」
    「何で?」
    「全て解っています。お二人がどの様な方々か」
    「バレましたか?」
    「はい」
    「此処はフランスですよね」
    「そうです。パリでございます」
    「そうでしたね」
    「メルシェ・ボク」
    「オー・シャンジェリジェ」

     つづく
nice!(100) 

nice! 100