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小説「イメージ4」

小説 イメージ No:60

 あらすじは No:57にあります。

 此処は伊東温泉・山海ホテルの宴会場。
大浴場から上がって来た福寿司の一泊温泉旅行の連中と福賀が食事をしながら
語り合っているのは・・・あの代理所信表明演説の話。

「岩上総理が急性盲腸炎で入院の臨時ニュースが流れて既に知られていましたね」
「そうだよ。うちだって店でテレビをつけてるから解った」
「私は会社で知りました」
「あの時は外回りで街中で知りました」
「私はデパートの家電売り場のテレビで観ました」

 それぞれが臨時ニュースで知ったのだ。

「そして、国会の衆議院会議場に画面が変わりました」
「そうだ。大臣席に副総理の福さんが座っている。それぞれの大臣たちが座る」
「野党席と与党席とびっしり席がうまっていました」
「上野衆院議長が席に着きました」
「何て云うか夫々が固唾をのんだって感じだった」
「本日は総理大臣の所信表明が行られる予定ですが岩上総理大臣が急性盲腸炎
で入院され福賀副総理大臣に代理をと頼まれましたので議長特権でそれを許します。
福賀副総理大臣どうぞって云ったね」
「ビックリでした」
「誰だってそりゃあビックリだろう」
「え~そんなのあり?って感じでした」
「また、福さんが出て来たからビックリだったよ。出てきちゃったよって」
「そうです。話は議長とついていたんでしょう」
「ついていました」
「何も持ってないじゃん」
「議長に挨拶をして演壇に登って深々と頭を下げたね」
「事務方が何か持って飛んでくるかと思って観てたけど来ないよ。大丈夫か福さん」
「そんな感じで私は震えていました。本当に」

「ドキドキでした。どうなる副総理って心配していました」
「そうれが何だったんだろうって感じで始まったので参りました」
「参ったか?俺も参ったよ。シャリを握ったままで突っ立てたからな」
「恰好良かったですね。最初に云ったね。緊急事態につき議長のお許しをいただき
総理の所信表明を代行させていただきますって、そして原稿無しの演説が始まった」
「そして、まず初めにこの内閣を『よりよい環境づくり内閣』とします。国外には
好かれなくても嫌われない日本を目指し国内には国民の安全と平穏な暮らしをもとめて
いきます。そのために今までの環境を見直し悪しきを改め、良い環境づくりを進めて
行きますって」
「総論・各論・具体策としっかり国民の立場で議員の後ろに居る我々に向かって話して
くれました。こんなこと今まで無かったから感激でした」

「官僚の台本ではなくご自分の言葉で語られた」
「それも突然の事態で用意する時間も無かったのに、代理で1時間づつ休憩を挟んで
2時間もこんな素晴らしい事がなんで出来るんだろうって」
「観てて聞いてて涙が出て来て困りました」
「あの福賀専務さんが・・・いや福賀副総理が健気で凛々しくて頼もしくて泣けました」
「おいらだって悔しいけど涙が出て出て止まらなくて何なんだよ福さん酷いじゃないか」

「原稿無しっていうのが堪りませんでした。今まで何年も議員やってる人が出来なくて
企業の専務だった福賀さんが出来るんだって」
「本当だ。出来る人は出来るんだって解ったね」
「何年やってても出来ない人は出来ない」
「面白いね」
「テレビ観た人も街の大きなスクリーンで観た人もデパートやお店で観た人も観終わっ
た時はみんな拍手喝采だったでしょう」
「議場では福賀副総理が代理演説を終えた時一瞬し~~~んと静まり返ったね」
「それから一人二人と立ち上がって全員起立のスタンディングオベレーション」
「日本だけではなく世界でも無かった事でしょう」
「あれは正しく事件でした」
「良くお出来になりましたね」
「いや~あ、あれは岩上さんには申し訳ないけれど私が手伝いをさせていただくためには
幸いでした」
「え~~~?」
「あれは本当に一か八かの勝負でした。出来るか出来ないかではね」
「それはそうでしょう。今まで殆どの人が人が書いた文を読んで来たんですから」
「それは出来ないからですよね。自分にしっかりした考えが無いから人に作ってもらう」
「福賀さんはご自分の考えをしっかりお持ちになられていらっしゃる。だから出来た」

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 つづく

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