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小説「イメージ4」

小説 イメージ No:59

 岩上総理が体調不良で総理を辞め、自分党を離党した。
福賀も副総理を辞め、自分党を離党した。
そして政界に関わる以前の株式会社雪月花の専務に、東西観光の社長とフランス航空の
副社長に戻った。

 その福賀にみんなの党の党首・大海から新しい党づくりを頼まれ、それを受けて今は伊
東温泉山海ホテルに集まって新党「和」を結成したところだ。

 そして後日、夫々の党や個人の立候補が行われる前に、気心が知れた福寿司の面々と伊
東温泉一泊旅行で密かに山海ホテルに東西観光のバスでやってきた。

「そうなんですね」
「あの時の岩上総理の話では、これからは女性に頑張ってもらわないとって事でした。それ
は私と同じでした」
「それにしても、女性の大臣は一人か二人がやっとでしょう。今までは?」
「そうだね。申し訳みたいにね。女性の閣僚も居ますよって」
と福寿司の大将が同調。
「それが男女半々の組閣。前代未聞でした」
常連客が受けて決める。
「あの時は自分党は支持率最低の闇雲総理でしたね」
「辞職しましたが」
「自分党の議員たちは何でも良いから自分たちが議員で居られたい」
「そう思って居たのでしょう」
「そこを岩上さんは掴んだ」
「そうです。党の改革と政権改革に絶好のチャンスだと岩上さんは思ったのです」
やっと福賀が岩上さんの狙いを認めた。
そして付け加えた。
「男女機会均等法は在っても実際は絵に描いた餅でしたから先ずは形にしたのです」
「それは岩上さんが決めたのですか?」
「私が私のイメージしていたものを岩上さんに提案しました」
「そうでしたか。男女半々の組閣なんて世界でも無かった事ですね。それが福さんの手伝い
か」
「大きな手伝いですね」
「イメージは形に出来る時に形にしないとイメージのままになってしまいます」
「確かに」
「やっぱり福さんだ」
「絵に描いた餅を食べられる餅にしましょうって岩上さんに云いました」
「云ってみるもんですね」
「そうです。そのために私を手伝いに頼んだのですから」
「なるほど。岩上さんは解っていたんだね。福さんのイメージの凄さを」
「たぶんね」
「機会均等には良い機会でした」
「洒落ですか。それって」
「いや、大真面目です」
「それが福さんのイメージを形にするって奴で先ずは均等の形から」
「そうです。初めが大事ですから。大将は流石です。良く解ってる。何処でも誰でもやっ
てる事をやっても何も変わらないって」


「話はあの原稿無しの代理演説に戻らせていただきますが、あれをフランス航空の社長が
観ていたそうですね」
「そうなんです。以前に会っていて、私に関心があったらしいのです」
「それで福賀さんが副総理を辞めたら呼ばれて副社長に」
「あちらも社長以下役員が居て皆の合意がなければ出来ない事ですが出来ました」
「辞めても帰るところが沢山あって福さんは良いね。あっしなんか一つの店しか居るとこ無
し」
「何云ってんですか。皆さんに囲まれて愛されている大将は一国一城の主じゃないですか」
「使われているんじゃないって素晴らしいですよ」
「そうだそうだ。その通りだ。大将は幸せ者ですよ」
「そうか。そうなんだ。云われてみて初めて解ったよ」
どっと笑いが沸いて起こった。

「みんな夫々って事ですね。違いを持ち合ってる」
「ところで、こんな素晴らしい旅行って始まったのはどんな事からなんですか?」
初めて参加した常連さんが聞いて来た。
「最初ね。それがね。突然、あの時、株式会社雪月花の専務だった福さんがブラって入って
来て其の瞬間に何か縁みたいなものを感じてね。今でも不思議なんだけどね。良い感じだな
~って、そしたら行き成り云ったね。大将、私が全部もつから此れから温泉一泊旅行に行か
ない?って」

「へ~え、それってビックリだったでしょう?」
「それはそれはビックリしましたよ。でも抵抗は全く無かったね。良いな~って思っちゃった」
「へ~え、それは何で?」
「それは、あっしもそんな気持ちがあったからだね。ぱ~っと行ってみたい気持ちが」
「大将の気持ちがぴったり合ったんですね」
「そうなんだね。こっちの気持ちを云ってくれた人。生まれて初めてだったから」
「嬉しかったんだ。通じるものが在って、タイミング良く云われちゃったんですね」
聞きたかった人も、聞かれたかった人も、納得して頷いている。

 他の人が聞いて来た。
「その時の福賀専務が副総理になった時はどうでしたか?」
「あの時は驚いたよ。まさか専務が副総理って常識じゃあ有り得ない話だから冗句だろうと」
「思いましたか。そうでしょうね。私もまさかでした」
「その後で総理と一緒に組閣をして結果、男性と女性の閣僚を半々にしたと聞いて福さんだと」
「納得しましたか?」
「だって福さん以外にそんな事出来るの居ないからね。その後もサプライズが続いちゃって
もう気持ちよくて嬉しくなっちゃたぜ」
「そうですね。総理の突然の入院で代理演説でしょう」
「それも原稿無しで2時間。総論・各論・具体案と今まで誰もして来なかった事をやったね」
「あの時の状況を思い出すね」
「再現してみましょうか?」
「やってみよう」

 つづく

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