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小説「イメージ4」

小説 イメージ No:72

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んで参ります。

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「絵でもそうですが、説明的だと見る人が持っている想像の楽しみを奪って
しまう。それはあ互いに美味しくない」
「美味しくない?」
「そうです。先輩は上手とか下手とか云わずに美味しいとか不味しくないと
云っていて絵はそういうものなんだと教わりました」
「我々は上手下手って云いますがね」
「上手下手は技術に対してですね。それは絵を技術で受け止めているのです」
「確かにそうですね」

「上手下手の世界は絵の世界と別に在ります」
「例えば工芸とか機械の世界とか?」
「そうですね」
「福寿司の大将が握る寿司は美味しいです」
「それは気持ちがこもっているから」
「握り方じゃないですね」
「そうです。だから皆さん福寿司に来たくなるんでしょう」

「絵の世界も美味しさを楽しむ世界なんですね」
「私がパリで最初に個展を開いたときのタイトルが『美味しいものは皆で楽し
みたい』でした」
「でどんな感想が?」
「夢のような最高の料理をいただきますたと・・・とても嬉しかったです」
「トレビア~ン」
「感情で受け止めてほしい世界です」
「だからフクガセンムは福寿司にいらっしゃるって事ですね」
「そうです。その通りです」

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「大将!どうですか?」
「嬉しいね。泣けてくる」
「文章もそんなところがあると思います。読む側のそれぞれ異なった個性を尊
重して楽しみをとっておく方が良いのではないかと」
「小説の主人公やそのほかの人物の具体的なデーターが多いと決められてしま
いますね」
「その方が楽だからと思う人もいるでしょう」
「でも、それで良いのかなとの思うのですね」
「でしょう。文章も色々ですね。想像力を楽しみ合う文学と物事を正確に伝え
ようとするドキュメントの文章がありますね。その外にも私の専門分野ですが
宣伝広告のデザインでは商品の写真やイラストと商品を紹介する文、コピーが
あって此れを書く人をコピーライターと呼んでいます。デザイナーのセンスも
問われますが、コピーライターのセンスも重要です。そのヘッドコピーで広告
の大半が決まってしまう位大きな役割を持ちます」

「なるほど。ヘッドコピーですか?」
「そうです。ヘッドコピーで広告の全てが決まるくらい重要な要素です」
「本文も重要だと思いますが・・・」
「勿論です。商品の内容を伝えるためには重要ですし難しい作業です。限られ
たスペースの中ですから出来る限り少ないコピーを求められます大変ですよ」
「伺っていると、ため息が出てしまいます」
「ハハハ、全くですね」
「それに、私はデザインの事を良く知らないで入ったのですが、最初に教えら
れた事がデザインは不特定多数の人を対象にするものだと云う事でした」
「不特定多数?誰と決めずに全ての人ですね」

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「そうです」
「当たり前というか当然の事で別に特別な感じはしませんが?」
「其れよりもデザインってセンスが問われる職種って感じが強いですが」
「そうですね。センスの良し悪しが重要である事は確かです。2・3年先の感
覚を持っていなければなりません。常にです」
「2・3年先の感覚を持った人?」
「其れよりも先になるとかけ離れ過ぎて遠い夢の中になって現実的では無くな
ってしまいます」
「一般の感覚より少し先の感覚の持ち主が適正と云う事」
「そうです」

「その不特定多数を対象としてやって来た積りでしたが違ってた。それは目が
不自由で物事を形で捉えられない人たちを入れて居なかったのです」
「それは絵も広告も見える世界のモノだからでしょう」
「そうですが。でも、不特定ですからどんな状況でも入れて居ないのは特定で
不特定ではありませんでした」
「なるほど。そう云われれば確かに可笑しいですね」
「描くとか作るとかは人間の本能だ云う人が居ます。確かに文字が無い時代で
も絵は描かれています。目が不自由でも絵が好きな子が居ると思います」
「見えなくても描きたいものですか?見えなくても作りたいものですか?」
「そうだと思います。

「声が出なくても歌いたいものですか?」
「そのようです。人間同士楽しいものは一緒に楽しみ合いたいです」
「でも、どうやって?」
「見えると見えないは天と地ほどの違いがありますから、同じようには出来ま
せん。具体的な感覚は視覚だけで他の感覚は抽象感覚で形を作りません。媒体
に触覚を使う以外ありません。でも殆ど第六感に依存する事になりますが」

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「フクガセンムはひよっとして既にやってたりしてませんか?」
「さあ~どうでしょう」
「ところであっちには帰らないんですか?」
「あっちには帰らないつもりですが」
「が、ですか」
「そうです。でも何かミステリアスな香りが感じられるので或いはサスペンス
が始まるかもしれませんよ」
「よほど恨みに思われているか、邪魔に思われていらっしゃるようですね」
「大いに」

つづく



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