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小説「イメージ4」

イメージ No:87
 
語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)

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宮坂区民センターに飾ってあった折り紙のひな人形
 
 業界としては初めてのスカウトで福賀を獲得して会社を発展させた社長の月
下が心筋梗塞を起こし福賀の気功に助けられ福寿司恒例温泉一泊旅行に初めて
同行して貸し切り大浴場に入って上がり5階の宴会場にやってきた。

 社長として業界や経済界の付き合いはゴルフだけと決めている月下が初めて
目にする光景がそこにあった。
これぞ日本的宴会の見本の様に夫々にお膳が並び、伊東温泉の芸者衆が華やか
な着物姿で和みを振り蒔いている。
其の為に客の席と部屋一杯に和ごみの芽が生え盛っている。
座敷の奥を見ると其処には高さ50cm程の檜で出来た舞台が設えていた。

「月下さん。こっちこっち今日は貴方が主役だから」
「主役だなんて恥ずかしいです」
「そんなことはありませんよ」
「何か始まりますか?。キレイどころが来ているし、三味線も見えますし」
「こうした宴会は初めてって事はないでしょう」
「初めてのようなものです。先代の社長が呼んでくれたことがありました。が其
の後に先代が亡くなりまして、それ以後こうした宴会は出ていません」
「そうでしたか。でも役員の方たちは別でしょう」
「そうです。私だけゴルフのお付き合いに決めています。
「成程。流石ですね。お堅い事です。先代の事にご自分を戒められたんですね」
「ま、そんなところです」
「温泉のホテルに来て立食パーティってね。粋じゃないでしょう」
「そうですね。此れは大将の趣味ですか」
「これも福さんの趣味ですよ。って云うか此処の女将さんに頼まれて芸妓支援を
したそうで、フクガセンム専属バンドがあって今日来ています」
「へ~~ぇ其処までしてましたか」
「頼まれたらやる人でしょう」
「そうですね。頼まれなければやりませんが。でも自分がしたい事はどんどんや
る人でもありますね」
「そうですね。此の旅行も福さんが言い出して始まったんですから」
「面白い人ですね」
「全くです」
 そろそろ女性たちも大浴場露天風呂から上がってやってくるころだ。

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ペイントで描きました。

「わ~ぁ凄い!」
「舞台もあるんだ!」
「まぁ適当に座って・・・」
大将の女将さんに云われて夫々が席に着いた。
「フクガセンムさん。お久し振りです。今日は呼んでいただき有難うございます」
「いや~ぁご無沙汰してしまって。宜しくお願いします」
「こちらこそです」
「え~皆さん。温泉は如何でしたか。聞くだけ野暮でしたね。今日は私の親父が
来ているので久し振りに【かっぽれ】と【やっこさん】を踊ります。両方ともワン
コーラスにしときます。皆さんは食べたり呑んだりリラックスなさって楽しんでく
れると有難いですので宜しく」
いつの間にか福賀の頭に捩じり鉢巻きが・・・。
三味線が鳴り歌が追いかける。

♬かっぽれ かっぽれ ヨイトナ ヨイヨイ 沖の暗いのに 白帆がサ 見ゆる
ヨイトコリャ あれは 紀伊の国 ヤレコノコノワイノサ ヨイトサッサッサ
みかん船じゃ エサテ みかん船

♬奴さんだよ エー奴さん どちらゆく ハァーしたこりゃ 旦那を 迎えに 
さても 寒いのに 供揃い 雪の降る夜も 風の夜も さて お供は辛いね
いつも 奴さんは 高ばしょり アリャサ コリャサ それもそうかいな
姉さんだよ エー 姉さんは ほんかいな ハァーしたこりゃ
きぬぎぬの 言葉も交わさず 明日の夜は 裏の背戸には わしひとり サテ
合図はよいか 首尾をようして 逢いに 来たわいな

「う~ん」
月下は唸った。
なんだろう?この感じは?どう受け止めたら良いんだろう?
あの背中の龍と云い、和の踊りと云い。
いつもの福賀と180度の違いか、そうした角度の問題ではなく異次元の違い
と受け止めればいいのか?
それにしても其の一つ一つが素晴らしく美しい。
福賀は舞台の上に正座して深々と頭を下げている。
夢から覚めたように一瞬間を置いて大きな拍手が起こった。
改めて月下と目を合わせニコッと微笑んで舞台を降りて来た。
「お世辞じゃなく福さんの踊りは見事だ」
「始めて見ましたが気迫が迫ってきて圧倒されました。いつの間に踊りを」
「専務にしてもらってからです。必要に迫られてと云ったら良いのかも」
「私は会社の椅子に座っているだけですが」
「それも大変な事です」
「あっしなんか一日中立ったままですがね」
「それも大変な事です」

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ペイントで描きました。

 そうです。
人様々ですね。
それにしたも福賀は特別なところがありますね。
3歳で両親を亡くした。
云うなれば孤児です。
それがね総理大臣までやって日本で初めての女性の総理大臣作った。
だからと云っても誰もが福賀の様には出来るだろうか?
素質も大きな力だったに違いない。
それは親からの無形の財産。
その財産に彼は挑戦したのだろう。
叔父の家が海の近くだった事も幸いだった。
自然に触れ自然の大事さに芽生えた。
其の心は自然を尊敬し大切に思って関わるようになる。
そして叔父が合気道の有段者だったことも幸いだった。

 自分が受け継いだ無形の財産を探り発掘して力にする。
其の一つ一つの成果が彼の行動に生きている。
「ここの女将さんに伊東の花柳界に力を付けてほしいと頼まれたのが縁で踊り

質を高めるために地唄舞の宗家にお願いしたのですが、その関係で私も弟子入
りして二曲だけしっかり踊れるように教えていただきました」
「日本を感じてもらうコミュニケーションになりますね」
「そうなんです。美術では浮世絵が世界的に評価されています。踊りでもと思
いました」
「驚いてくれたでしょう」
「それは素晴らしい発想ですね」
「他に富山の【おわら風の盆」も一緒に踊ってもらいました」
「情緒がありますから良かったでしょう」
「良かったです」
「はい。最初のコミュニケーションは絵画でした。親父さんもご存じの国際ア
ートフェスティバルでグランプリを戴いた作品。その作品をアレンジして此処
のホールの壁に飾ってあるタペストリーをフランス美術連盟の方たちがツアー
で来ていて気随て私も丁度泊っていて知り合いました」
「なるほど」

「紹介はツアーコンダクターのキキさんでした。其れが縁でフランスと繋がっ
たのです。そのキキさんが日本をとても高く評価してくれていてその後もフラ
ンスに日本の理解を深める手助けをしてくれました」
「それでフランスの化粧品会社と合同の化粧品会社が出来たのですね」
「そうです。フランスに私の拠点を作れたのもキキさんのおかげです」
「だんだん君の活躍の様子が見えて来ました」
「画廊を紹介してくれたのもキキさんで、そこからアラブ系の王国とつながり
、家族の様に親しくなりましたし、王子が持つフランスの住まいに私のアトリ
エも出来ました。其処では世界の国々で重要な役割を担う人たちと会う事が出
来ます」
「今まで活躍してきた君の活動歴が良く解ってきました。このホテルからフラ
ンスへそしてアラブ系の王国にと広がって行って様々な成果を生んできたので
すね」
「これも、親父さんが私を信頼して自由に動かせてくれたからです」

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ペイントで描きました。

 つづく



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小説「イメージ4」

イメージ No:86

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    3歳の時に交通事故で両親を失う。
    父方の叔父に合気道を教えられながら育つ。
    住まいに近い海岸で自然と向き合い絵を描く事で会話を交わすように
    なる。
    国立アート大学に進み、全ての時間を使い自力を高める。
    2か月の夏休みに中国に渡り、河南省中岳嵩山の中の少室山の北麓に
    ある寺院少林寺に入門。
    少林拳と気功術を習得して師範の資格を戴く。
    合気道は大学1年の時点で九段。
    大学3年の秋に(株)雪月花(旧)雪月花石鹸株式会社・社長月下に
    スカウトされ新設の化粧品部門の宣伝部・部長で入社。
    4年目に役員として参加を望まれ専務を希望し経営に参加。
    その2年後ナミカと結婚パリ旅行の当日にじぶん党総裁候補山上に手
    伝いを頼まれ副総理を条件に承知して政界に入る。
    山上総理が健康上の理由で引退を期に民間に戻るもみんなの党の大海
    (党首)に誘われ新党「和」の党長になり総選挙で大勝し、内閣総理
    大臣になる。
    この段階で副総理に松竹梅子を置き次につながるように図るが閣僚の
    一人が反対勢力に計られスキャンダルに巻き込まれ任命責任を問われ
    辞任し再度民間に戻り(株)雪月花・副社長(株)東西観光・社長
    フランス航空・副社長 全国ホテル旅館組合・顧問 全国漁農組合・
    顧問 全国女性経営者連盟・顧問
    35歳
    
    福賀(フクガ)ナミカ NPOナミカ理事長 福賀貴義の妻
    月下(ツキシタ)達雄(タツオ)株式会社雪月花・社長 ナミカの父

    山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉 山海ホテル 女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座 福寿司 大将
            乙女(オトメ)       女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)株式会社東西観光・副社長 
     車(クルマ) 好人(ヨシト)  〃      取締役
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・内閣総理大臣 新党「和」党長

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 永年の社長職で心労が溜まり心筋梗塞を起こし倒れたが伊東温泉・山海ホテ
ルからヘリコプターで駆け付けた福賀の気功で三途の川から引き戻された月下
は今、福寿司恒例の温泉一泊旅行に参加している。

「月下さんで良いですか」
福寿司の大将が初めに気になる呼び方を聞いて来た。
「はい。それで宜しくお願いします」
これで月下も大将も気兼ねない感じで落ち着いたようだ。
「私が云うのも何ですが、月下だん、此れから後の会社は福さんに任せて会長
さんで今までと違った風景を楽しんでください。今日はその門出のお祝いをし
ましょう。先ずは恒例の「貸し切り大浴場露天風呂で福さんと裸の付き合いを
しながら現実と離れた世界を楽しみましょ」」


 月下は呑み歩く訳じゃなし、会社とゴルフしか外の世界を知らない。
まして福賀が自由に飛び回っている実態に触れたことがない。
福賀との約束は自由に思いのままに動いて良い事だった。

フランスに(株)雪月花の支社を作りました。
フランスに合弁会社を作りました。
中国に雪月花化粧品店を作りましたなどと報告を受ける事で彼の行動を知っ
ていた。

 その今まで知る事が無かった福賀の部分を此れから伺えそうだ。
大将に任せて付いて行こうと月下は心を決めて此れからの展開に期待した。
いつの間にか福賀は姿を消していた。
きっと自分の3階の部屋でパソコンをチェックしているのだろう。
「温泉をお楽しみいただきましたら5階の宴会場にお集まりいただきお食事
とお酒を召し上がっていただきます。他にお楽しみのプラスもございます」

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 女将が最初は男性の方から、次に女性の方になります。一度皆さんお部屋に
お荷物を置かれてロビーのホールでお待ちください。用意が出来ましたらご案
内にまいりますと告げて居なくなった。
病み上がりの月下を気遣って最上階5階のスイートルームを割り当ててくれた。
女将に礼を言って月下が福賀を探したが見当たらない。
「大将。福賀は?」
「何か用事があるのでしょう。女将が来て案内されたら大浴場に行きましょう」
「何が何だか皆目見当が付きませんが・・・」
「そうでしょう。其処が此の旅行の良いところです」
ロビーに降りてホールに行くと初めて福賀のタペストリーが月下の目に入った。
「あれは・・・?」
いつの間にか女将が近くに居て声を掛けて来た。
「あれは福賀さんにお願いしてリニューアルしていただいた時にホテルのポイン
トにとご自分の作品を京都で西陣織でタペストリーに仕立ててくださいました」
「あぁそうでしたか。彼が国際アート・フェスティバルでグランプリを取った例
の作品を西陣織でタペストリーに」
アクリル絵の具で描いた作品はフランスの美術館が買い上げている。
「私にとっては彼が受賞した件と日本広告アート連盟の学生で初めて会員になっ
た新聞記事が生涯忘れられない出来事でした其れを
が彼との出会いでしたから」
「そうでしたか」
「感慨深い気持ちが蘇りました。来て良かったです」
「私もお会い出来て良かったです。そろそろ大浴場露天風呂が貸し切りになりま
すので二階にどうぞ。温泉をお楽しみいただきましたら5階の宴会場に上がって
ください。細やかですがお食事とお酒の用意をさせていただきます」

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 常連でも初めての客は何で貸し切りなのか何度か来てる常連に聞いている。
「其れはな。福さんに一般の人と一緒に入れないものがあるからなんだよ」
と福寿司の大将が代わりに答えている。
男性で成人なら大体見当がつく。
女性の場合は機会均等と云っても一般的な認識に違いがあるから友達に聞いたり
して納得している。
運良く福寿司の旅行に同行出来たので思い切って参加してみようと意を決して貸
し切り券を貰いに行く。
「では、男性の方から時間をお知らせします。その前にお部屋割を、そしてお風
呂から上がられたら最上階と云っても5階ですが宴会場にお食事とお酒を用意さ
せていただきますのでお集まりください。女性の方も少しずらして貸し切りにい
たします。上がられましたら5階の宴会場へどうぞ」

 月下は女将の説明を聞いていて何事が起きたのだろうと福賀に聞こうと探したが
見当たらない。
女将の計らいで月下には5階のスイートルームが割り当てられた。
病み上がりでもあるので福賀も一緒に付き合う事に決めていた。
3階の福賀の部屋もあるが今日のところは未だ見せずに伏せておこう。
色々あるがさらけ出すのも程々が良いだろう。


「皆さんお入りになりました」
「有難う。お世話になります」

「失礼します」
此れが福賀の挨拶だ。
福賀は皆が浴槽の淵に程よい間隔で並んで使っているところを右端から入って行
った。
「いや~ぁ前回はホテルに着いて直ぐヘリでとんぼ返りでした。幸いに今日は親
父と一緒に来ることが出来て良かったです」
柄にもなくおどけて福賀は静かに福寿司一行に挨拶をした。
そう云うと腰まで立ち上がって皆が並んでいる前をゆっくりと泳ぎ始めた。
少しだけど温まった福賀の身体は背中の桜の花弁をほんのり紅を薄めて色付けて
色っぽく、きりっと顔を引き締めた龍が厳しい存在感を放っている。
月下は初めて福賀の背中に彫られた龍にお目に掛って度肝を抜かれ言葉を失った。
この瞬間に次元の違う世界に月下の中の風景も変わった。
福寿司の常連たちは福賀が醸し出すこの瞬間を待ち望んでいたに違いない。
この彫り物は名人五代目彫辰が命懸けで六代目を福賀に継いでもらったお礼と云
うかお守りとして彫ったものだ。
日本の刺青は本来魂を内に秘めて彫られたもので人に見せるものではない。
「皆さんと信頼関係を結びたい私の気持ちです。他言無用でお願いいたします」
10分も居ただろうか。
「お先に失礼します。後ほど宴会場で」

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 そして女風呂へ。
「皆さんお入りになっています」
「お世話になります」
脱衣所で裸になり、手拭をもって大浴場露天風呂に入って行った。
静かだ。
湯気こそ無いが熱をもった空気がやけに張りつめている。
「失礼します」
凛とした福賀の声が優しく響く。
此処でも浴槽の淵を背にして良い感じの間隔で並んでいる。
湯面からは首から上しか出ていない。
ここの大浴場の温泉は乳白色で浸かっている身体は隠れているのだが。
男湯と同じに福賀は右端に回り込んで身体を沈めた。
「私は家に居る時は生まれたままの姿で過ごして居ます。それが自然だから」
20人程の中で緊張しているのだろう、何人か小刻みに身体を揺すっている。
流石だ。
日本で初めて内閣総理大臣になった松竹梅子が口を切って答えた。
「前総理いや福賀さんは自然を大事に思われて大切になさっていらっしゃるから」
「そうです。自然ほど大切なものは無いと思います」
「自然から生き物は生まれたから?」
「そうです。自然から生まれたのでなければ何処から生まれたのでしょう」
「空から降って来たなんて事は無いですよね」
「そうですよね」
「だから自然を大事に思って大切にしなければ人間は生きられないでしょう」
「それから、福賀さんは夫々が持ち合っている違いについて色々お考えになってい
らっしゃる」
「そうです。自然を大切にする事と自然が造った様々な違いも大事ですね」
「解るような気がします」
「これも大事で大切な問題で我々の課題だと思います」
「なるほど。大事な自然と自然が造った違いですか?」
「そうです。夫々顔が違いますね。同じだったらどうなりますか?」
「考えられません」
「そうでしょう。違うから良いので、同じだったら混乱してしまうでしょう」

そう云いながら福賀は左に向かって泳ぎ出した。
湯面は優しく波立ち女性たちを慌てさせた。
この瞬間に外とつながる空間に異次元の世界が現れたに違いない。
「では、お先に失礼して5階の宴会場で又お会いしましょう」
宴会場には何かが用意され福賀を待っていた。

 つづく


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小説「イメージ4」

イメージ No:85

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    3歳の時に交通事故で両親を失う。
    父方の叔父に合気道を教えられながら育てられる。
    住まいに近い海岸で自然と向き合い絵を描く事で自然と会話を交わ
    すようになる。
    国立アート大学に進み、2ヶ月の夏休みを使って中国に渡り少林寺
    に入門。
    少林拳と気功術を習得して師範の資格を得る。
    大学1年の時点で合気道九段。
    前・総理大臣 現在35歳
    じぶん党の山上総裁に手伝いを頼まれ副総理、山上総理辞任・離党
    政界引退を期に民間に戻るが、みんなの党・党首大海に誘われ新党
    「和」の党長になり、総理になるが閣僚の一人がスキャンダルを起
    こし任命責任を問われ辞任して元に戻る。
    (株)雪月花・副社長(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長
    全国ホテル・旅館組合顧問 全国漁・農組合顧問 全国女性経営者連
    盟顧問 
    
    福賀(フクガ)ナミカ NPOナミカ理事長 福賀貴義の妻
    月下(ツキシタ)達雄(タツオ)(株)雪月花・社長 ナミカの父
    
    山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座 福寿司・大将
            乙女(オトメ)       女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添乗員
     車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・常務取締役 元・ドラ
       イバー
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・内閣総理大臣

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ペイントで描きました。

「私は社長の役柄として福賀貴義を何処にも行かせずに来てもらわねばと思ったの
です。運よく娘のナミカが福賀君を知っていたので直ぐ会う事が出来たし、来ても
らえたので社長としての役割を果たせました。本来なら此の時点で私の仕事は終わ
っていたのです。折角得られた福賀君を最大限に生かしたい思いで今まで来てしま
ったのです」

「そうでしたか。そうですよね。この福さんを自由に泳がせて思うがままに力を発
揮してもらう為の環境づくりは大変だったでしょう」
「彼がどれ程の能力を待っているか他の人たちは解っていないのですから」
「そうですね。デザインや広告の世界は一般には解りずらいですから」
「そうなんです。社名変更や化粧品部門新設も全て彼の案だとは知らせていません
でした」
「社内では社長の案だと」
「そうです。役員会にはかりながら私が全て行ったのです。其れが彼の条件でした」
「なるほど。下準備が出来たところに福さんが入って来た」
「そうです。化粧品宣伝部・部長として」
「あのフクガセンムさんが国際アートフェスティバルでグランプリを取った新聞記
事は会社の人も見てたのでは?」

「そうですね。役員も見ていました。私にアクションを求められました」
「そうでしょう。経営に関わる人だったら欲しがるのが当然でしょうから」
「でも、彼を獲得出来たと云えませんでした。もしも情報で自社株を買うような人
が出たら犯罪を作ってしまう恐れが多分にあったからです」
「成程。フクガセンムさんが雪月花に入る事が解ったら絶対に株も動きますね」
「彼が何処の企業に関わるか大きな関心事になっている事は間違いありません」
「正月元旦に出た2ページ見開きの新聞広告で役員も社員も初めて知りました」
「よく我慢出来ましたね社長さん」
「早く正月が来てくれと毎日願っていました」
「役員の方たちに恨まれたでしょう」
「福賀君とコンタクトを取ったことは云っていました。でも彼は独立してデザイン
事務所を持つそうで、其の時はクライアントになってほしいと云っていたと伝えて
いました。でも喜んでくれましたよ」

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パステルで描きました。

「福さん直ぐ結果を出したじゃないですか」
「そうです。1年後収益2倍、2年目3倍。結果は信頼につながりました。社内だ
けではなく株主さまからも福賀の信頼は絶大なもので、是非とも役員の席で福賀を
見たいと要望があって、社の役員からも要望があって彼に打診しました」
「それで役員に」
「そうなんです」
「で、専務ならって云われた?」
「役員の方たちは専務を望まれるとは思っていなかったでしょう。私も全く思って
もいませんでしたから驚きました」
「其の時の空気はどんな感じでした?」
「時間が止まった感じでした」
「そうでしょうね。予想外だったでしょうから」
「私にも他の役員にも初めての体験でしたから」
「興味津々」

「私はだまって役員たちの様子を伺いました」
「ここは我慢ですか?」
「そうです。沈黙は金ですね。一人の役員が私に聞いて来ました」
「なんて?」
「私はどう思うかと」
「で?」
「私は良いと思うと答えました」
「それで?」
「社長が良いと思われるなら私は同意しますと云われました」
「決まりですね」
「役員全員が拍手で答えてくれました」
「フクガセンム誕生ですね」
「そうです」
「それでああなってこうなって」
「政界から帰って来てくれて副社長になってもらって今度は私の代わりに社長にな
ってもらいます」
「本当にお疲れさまでした。これからは福さんを楽しんで眺められますね」
「以前、経営者会議の会長が福賀を柔らかくしてやると云われてご自分の領域を連
れまわしたら、それは福賀の領域だったりして、お返しにと会長を連れて行ったと
ころが福寿司さんで此の恒例の温泉一泊旅行に同行して山海ホテルに行かれて電話
を掛けて来ました」

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ペイントで描きました。

「何と?」
「堅いと思ったら大きな間違いだった。あいつはどんな所でだっておっしゃてまし
た。なので、国立アート大学出だと云ったら其処がどんな大学か解っていらっしゃ
たようで、何で其れを云ってくれなかったって怒られて仕舞いましたよ」
「仕方ないね。畑違いだから」
「其れからですね。会長の意識が変わったのは、福賀を経営者会議の青年部・部長
にしたり、テレビの【アルミの部屋」のアルミさんから福賀の出演依頼があったの
ですが、スケジュールが取れないと断っていたところ会長が出演した時に頼まれた
と電話を掛けて来たりしてましたね」
「そうなんです。会長は結構真っ直ぐな人で面白いです」
「福さんにかかっちゃあ会長さんも面白がられるんだ」
「そんな事ないですよ。良い人だって云ってるんだから」
「ナミカさん時の様に今日は寝てませんね。親父さんと一緒では」
「当たり前でしょう大将」
バスは乗ってるか動いているか止まっているのか解らない絶妙な感じで伊東温泉・
山海ホテルに到着。
「ようこそ福寿司ご一行さまお待ちしていました。前回はとんだ事でしたが如何
でした?」
「福さんが例のあれで無事回復されて今日ご一緒です」
「それはそれはようございました」
「ご心配をお掛けしました。月下です。福賀が大変お世話になっております。また
今日は私もお世話になります。宜しくお願いいたします」
「これはこれは。ご無事でなによりでした。お世話になってるのは私の方でして今
後ともよろしくお願いいたします」
女将の案内で先ずは2階の大広間に・・・そして例のあれが始まった。
「福さん。良いんですね」
「勿論。いつも通り」
「てんで女将さん宜しくお願いいたします」
「では皆さんのお部屋割りの後、ご希望の方には大浴場露天風呂男風呂30分、女
風呂30分貸し切りにさせていただきますので貸し切り券を受け取ってください」
「え?突然来て30分も貸し切りって出来るんですか?」
初めてついて来た福寿司の常連が驚く。
「出来るんだから不思議でしょう」
何回も来ている常連が受けて答えている。
「月下社長さんもよござんすね」
「はい。皆さんと一緒にお願いします」

 つづく

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小説「イメージ4」

イメージ No:84

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    3歳の時に交通事故で両親を失う。
    その後、父方の叔父に育てられ、合気道を教えられながら絵を描き続け
    国立アート大学に進み、2か月の夏休みを使い4千年の歴史を学びたい
    と中国河南省にある中岳嵩山の中の少室山の北麓にある寺院少林寺に入
    門し福悟空の僧名をいただき少林拳と気功術の師範資格を得る。
    合気道九段。
    前・総理大臣 現在35歳
    今は月下社長にスカウトされた(株)雪月花に戻り副社長。
    その他に(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長。
    全国ホテル・旅館組合の顧問 全国漁・農組合の顧問 全国女性経営者
    連盟の顧問。

    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ理事長 福賀貴義の妻
    月下(ツキシタ)達雄(タツオ)株式会社雪月花・社長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座福寿司・大将
            乙女(オトメ)      女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添乗員
     車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役 元・運転手
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・内閣総理大臣

 月下と福賀を乗せた救急車が病院に着く。
取り合えず緊急病棟の一室に運ばれベッドを並べて点滴を続けている。
家からナミカの母親と弟が横須賀線で駆け付けた。

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 人間は死んでしまったらそれっきり、植物の様にまた生えたり出来ない。
生きていてこそ色々あって楽しいのだ。
「福賀さんも倒れたとナミカから聞いてびっくりしました」
「いや、大した事はありません。社長はもう大丈夫ですから安心してください。
少し働き過ぎたようですね。皆が頼り過ぎたようです。気を付けるようにします」
「有難うございます。お仕事の話は一切しない人ですので全く解りませんでした。
少しゆっくりしてもらうようにします」
「社長は真面目な方だからお付き合いはゴルフに限っていらっしゃる。其れも気を
使う仕事の一部になっていますから疲れも溜まったのでしょう」
「そうなんですね。ゴルフは運動だから身体に良いと思っていましたが間違いだっ
たのですね。福賀さんはゴルフはなさらないのですか?」
「ゴルフは苦手でして社長に任せたのも私の責任でした。此れほど負担になってた
とは思っていなかったです。申し訳ありませんでした」
「私もこれほど真面目だとは思っていませんでした。ゴルフは社交になっていたり
しますからね。仕方ないと思いますが、福賀さんはゴルフをなさらず何を?」
「私はもっぱら食べる事と温泉大好きで色々お付き合いをしています」
「世界中を飛び回っていらっしゃるようですね。ナミカから聞いています。それも
お付き合いでしょう」

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「はい。色々人夫々役割がありますので」
「月下にも出来れば福賀さんのようにそうしてほしいです」
「はい。此れからは社長にもゴルフは程々にして美味しいものを食べたり温泉に浸
って楽しんでほしいです」
「是非そうしていただきたいです」
「承知しました」
「あなた。聞いていました?」
「あぁ聞いてましたよ。結構なお話でした」
「そうでしょう」
「福賀君には大変お世話になってるから頑張りましたが今回あのキラキラした川の
手前から引き戻してもらったので福賀君に会社を頼もうと思っていますよ」
「そうしてください。折角あちらに行かずに助けていただいたのですから無理をな
さらないでください。もうこんなにドキドキは嫌ですから」
「家内もそう云ってる。福賀君どうだろう?」
「そうですか。社長のお気持ちは良く解りました。最初から頼まれていますから
此れからも其の続きとして了解です。明日は役員たちも見舞いに来られるでしょう
から社長の気持ちを伝えて皆さんが承知されたらお引き受けいたします」
「そうか。それを聞いてほっとした。有難う」

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 緊急病棟を出て一週間が経って月下は退院した。
「え!らっしゃい!」
いつもの元気な大将の声だ。
「お~!福さんこないだは大変だったね」
「心配かけて申し訳ない」
「また今日もお連れさんで」
「ご心配をおかけした張本人の私です」
「あぁ!ナミカさんのお父さんようこそ。それじゃこないだのやり直し
ってことだね。福さん気が利いてんね」
「大将思いっ切りぱ~っと行きましょう」
「あいよ。女将!」
「あいよ」
「いや~ぁこれですね。経営者会議の会長が云ってました。この感じですね」
「福さんには専務になられて間もない頃からなんですよ」
女将がのれんを外しの灯りを消して中にはいる。
初めての客はなんだ?何だ?って常連客にお伺いを立てている。

 2024-0208c.jpg

「突然ですが今日は店の温泉一泊旅行になりやした。うんで一緒に行きたい人は
心配を掛ける事がないように連絡をしてどうぞ。行けない人は今日の勘定は無し。
また来てね」
女将が行く人の名前と連絡先を書く紙を配って二か所に電話をする。
「女将!どうだ?」
「OKです」
と云って福賀の席に久保田の萬壽とお茶を運んで来た。
「福賀さんには今まで大変お世話になっています。ご無事でなによりでした」

月下は「あいつはとんでもない奴だ」って聞かされていた事を思い出していた。
其れが此れから始まるのだ。

 つづく

    
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小説「イメージ4」

イメージ No:83

 おらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 3歳の時に交通事故で両親を失い、父方の叔父に合気道を教えられ、海
    辺で自然と会話し、国立アート大学でグラフィック・デザインを学び、
    自分に出来る限りの力を付ける努力にはげんだ。
    福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    前・総理大臣
    今は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した(株)雪
    月花の副社長。(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長
    アーティストであり、武道家(合気道九段・少林拳・師範・気功術師)

    福賀(フクガ)ナミカ NPOナミカ理事長 福賀貴義の妻
    山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉 山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座 福寿司・大将
            乙女(オトメ)       女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添乗員
     車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役 元・ドライバー
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・内閣総理大臣

 202401-28A.jpg
 
 今までの内閣が出来なかった仕事が出来てホッとした一時をフクガセンムとして
福寿司恒例温泉一泊旅行にナミカを初めて誘って伊東温泉・山海ホテルへ・・・。
福賀がじぶん党の総裁候補の山上に頼まれて政治に関わった時にイメージした女性
の総理大臣も副総理、そして新党「和」の党長から総理大臣を経て松竹梅子を副総
理から総理大臣へとイメージを形にした。

 福賀が(株)雪月花の月下社長にスカウトされて、新設の化粧品部門で宣伝部長
として入社したのが23歳、そして4年で専務になり、3年後に政界入りした時3
0歳で副総理、2年務めて引退。
その後2年民間に戻ってフランス航空の副社長として呼ばれたりしていたら今度は
みんなの党の党首に新党結成を誘われ再び【よりよい環境づくり】を始め34歳の
時に総選挙で大勝して第一党になり総理大臣。
一年後閣僚の一人がスキャンダルを起こし指名責任者としての責任を問われ責任を
とって辞任。
暫定的ながら副総理の松竹梅子が内閣総理大臣になった。
福賀貴義当年取って35歳。

「ナミカさんが福さんと逢ったのはお幾つの時でした?」
福寿司の女将が聞いた来た。
「私が高3の夏でした。友達4人と海水浴に行った時に海の家で逢いました」
「そうでしたか。フクガセンムさんは其の時は?」
「大学4年生でしたね。又寝ちゃってます」
「4歳違いですね」
「そうです」

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「良く解りました。有難うございます」
「35歳の前総理でしたか。何か楽しくて嬉しくて笑ってしまいます」
「福さん35歳。初めて歳聞いたけどこりゃフィクションだ」
大将も大笑いしている。
乗っているんだか、乗っていないんだか解らないバスが伊東温泉・山海
ホテルに着きました。
「今日はいつもより早いお着きですね。え!フクガセンムさんの奥様が
ご一緒で、それはそれは初めまして大変お世話になっております山海ホ
テルの女将の山海小波です」
「主人が大変お世話になっております。フクガナミカです。宜しくお願
いいたします」
二人で同じ挨拶をし合っている。
先ずは大広間の方にとうながされて皆が静かに移動する。
其の時二人のスマホの電話に着信があった。
「もしもし、福賀です。え!社長が急に倒れた?解りました。直ぐ戻り
ます」
「ナミカ!」
「同じです」
「女将さん。ナミカのお父さんが倒れた。ヘリを呼んでください。大至急
で東京の株式会社雪月花まで」
「はい!」
山海ホテルの女将がヘリ会社に連絡する。
「直ぐ来てくれます。屋上に急ぎましょう」
「ヘリポートを造っておいて良かった」
「福賀さんに云われて良かったです」
「そんな訳で申し訳ない。次に又ご一緒しましょう」
「ご無事を願っています」
「有難う」

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屋上に女将二人と大将が送りに来た。
ヘリコプターが到着。
福賀とナミカが乗り込む。
ヘリコプターが飛び立つ。
車では高速の料金所や一般道に降りれば信号で止まらなければならない。
空からなら止まらずに行ける。
(株)雪月花も福賀の勧めで屋上を改造してヘリポートを造っていた。
空高く上ったヘリは東京を見下ろして降りて行くと其処は到着地点だ。
「今、病院から先生が来てくれています」
「お世話になります」
「副社長お願いします」
「貴義お願い。助けてください」
「解った。全力を尽くします」
「先生お世話になり有難うございます」
「あぁ福賀さん。月下さんは心筋梗塞の状態です」
「解りました。呼び戻したいので私に任せていただけませんか?」
「どうぞどうぞお任せします」
「有難うございます」
福賀は倒れている月下に跨った。
大きく気を吸い上げている。
数度繰り返したか。
其の気を月下に向かって吐き掛けて行った。
何度も何度も繰り返し気を入れて行く。
ふっと月下の口から息が漏れた。
その息が広がって目が開いた。
「フ ク ガ さ ん か」
「フクガです」
「キ ミ ノ テ 二 ヒ カ レ タ」
「そうですか。お帰りなさい」
そう云ったと思ったら福賀は気を失って倒れた。
「二人に点滴を」
先生の指示で救急車が二台呼ばれた。

 つづく
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小説「イメージ4」No:82

イメージ No:82

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私。
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理
    今は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した(株)
    雪月花の副社長(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長
    アーティスト 武道家(合気道九段・少林拳師範・気功術師)
    福賀(フクガ)ナミカ (旧姓・月下)NPOナミカ理事長

    山海(サンカイ)小波(コナミ) 山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
            乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添
    乗員 
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役 元・ドライ
    バー
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・内閣総理大臣

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「皆さん。お気付きになられなかったのは当然です。福賀社長になって一番最
初になさったのが私が企画した世界グルメツアーと乗っているか乗ってないか
解らないドライビングでした」
「なるほど」
「車ドライバーは、運転中ですので私が代わりに話します。オチャメと云うか
イタズラっ子と云うか、社長として入ってくる前に研修生を装って運転車両部
に挨拶に来たそうです。その時に車が二種免許を持っているか聞いたそうです。
持ってるって云われたのでお得意の社員旅行のオーダーが入っていたので運転
をさせたそうです」
「それは無茶苦茶だ」
「そうなんです。危なかったら変わる積りだったと云っていました。それがお
客さまに凄く褒められた運転だったそうです。それが今皆さんが気が付かれた
運転でした。車が惚れ込んで運転車両部へ来ないかと誘ったそうですが、その
時に総務部に呼ばれているからと返事をそらされて今度は車が総務に呼ばれ貴
方に運転車両部・部長の辞令を社長が出していかれたと告げられたそうです」
「ビックリでしょうね」
「フクガセンムさんって部長がお好きなんでしょうか?」
「ご自分が部長で始まったから?」
部長好きの冗句が受けてほのぼのとした笑いが広がった。
「それが今では運転車両部担当取締役です」
「そうだ。役員にって望まれたら専務が良いって云った人だからね」
「そして閣僚でって云われて副総理が良いって云った人ですから」
「ナミカさんどうでした?」
「呆れました。良く云う人だなって。笑っちゃいました」

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「頼まれてやるとしたら出来る役を取るのが当たり前でしょう」
「そうですよね」
「責任を持ってもらえば其れだけの働きをしてくれるものです」
「でも、役でダメになる人もいますよ」
「そうですね。その他が自分に合っている人もいますね」
「それを見分けるのは私としては直感です」
「そうだ。何だろうと思っていたんだけど。解った。直感だった」
「大将もそうでしょう」
「あっしも直感だね。何か決める時は直感だね」
「変に高い役をもらって途端に威張りだす人もいますね」
「其れは見当違いの大失敗だ」
「其れはどうなんでしょうか?」
「感違いってもんでしょう」
「そうです。大きな感違いです」
「直感で何を感じるかって云うと優越感を持ってる人かどうかです。人格形成
で大切な事は人を見下す優越感を持っているかどうかです」
「そう。直ぐ人を管理しようとか、支配しようとか思う人いますね」
「その人は人格形成過程で気が付かずに育ってしまったのです」
「人ってさ。ある程度育ってしまうと人格って決まってしまうでしょう」
「そうですね。人に云われても気が付かない」
「そうです。でも人に云われたことを聞こうとすれば修正出来ます」
「そうですね」
「車さんは人の姿から感じて修正したのです。立派な事です」
「素直が一番ですね」
「あっしも見習いたいね」
「大将もそんなとこあるんですか?」
「いっぱいある」
素直な大将にどっと笑いがおこった。

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兎に角、此方側は彼方の金と権力で成り立っている世界と違うから安心出来る。
「此方では前・総理もフクガセンムだから奥さまもナミカさんで良いですか?」
「はい。そうしていただければ嬉しいです」
皆から拍手喝采。

 自称縄文人の福賀は都会を離れ山深いところに籠っている。
蛍と一緒に夜を過ごしたり、滝の音を聞いたりしており、それは彼が彼である自
然な姿なのだろう。
自然から生まれた事、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感を授かった事に感謝
し、自分が出来る何かを求め続けている。
「縄文人は火山の近くに住んでいたらしい」
福賀は拠点を段々と富士山の麓に近づけている。
「自然に良くないことはしない」
「生物に良くないことはしない」
こうした話はいつも周りの人たちとしている。

「先ずは、あちこちに散在している自然に悪しきものを無能にしよう」
「それはフクガセンムが冬眠したように?」
「いや、永久に眠ったままにしよう」
「その他の事もやろうと思えば出来る事ですね」
「そうです」
「あの驚異的なダイナマイト以上のモノは自然を害します」
「科学も文化とバランスを取るようにしましょう」
「バランスが大事ですね」

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「出来るからと云ってやり過ぎないように気を付けましょう」
「作るだけではなく、後の事も考えて作りましょう」
「過ぎて良い事はありません」
「フクガセンムは雪月花に入られて、商品の販売と回収を行いましたね」
「そうです。売る責任は処理にも責任があると思ったので」
「自然を汚さないで、自然の恩恵を生かす方向を思考する」
「あっちの道は何れ破綻します」
「だから、こっちの道を整備するのですね」
「そうです。もう男社会至上主義は自然破壊と残虐しか出来なくなっています」
「そうです。女性に任せましょう。自然を守り生かしてくれるでしょう」
「松竹梅は日本を象徴する花ですね。植物から始めるのが良いかと思います」」
「そうですね。和食にも使われています。日本画のモティーフにも使われます」
「松竹梅子さん。私は貴方を日本の救世主、いや世界の救世主に選びました。思
い切ってよりよい環境づくりを世界規模で進めてください」
「解りました。ご期待に添えるように努力します。ところで福賀さんは?」
「私は頼まれたことを手伝いながら土偶や絵を描いて山の中で暮らします。でも
気が向いたら福寿司さんに行くために時々山を降りて行きます」
「私も福賀さんに頼みたくなったら福寿司さんにお誘いしますのでよろしく」
「ではまた」

 つづく




    
    
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小説「イメージ4」

イメージ No:81

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私。
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理大臣 現・総理府特別顧問
    今は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した(株)
    雪月花・副社長(株)東西観光・社長 フランス航空・副社長
    アーティスト 合気道九段・少林拳師範・気功術師
    
    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ・理事長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
            乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長 元・添乗員
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役 元・ドライバー

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「では、前・総理で今は我が社の社長は窓際の席で奥様は通路側にお願いします。
この福寿司さまご一行の温泉一泊旅行は通称フクガセンムが企画されたものでして
恒例になっておりまして、私も運転手の車もあ!いけない。失礼をいたしました。
いつも我が東西観光をご利用くださり有難うございます。今日と明日ご一緒させて
いただきます添乗員の山谷海乃です。そしてドライバーは車好人です。宜しくお願
いいたします」
此処で乗車の客たちから拍手が起こる。

「有難うございます。常連の方もいらしゃれば今日が初めてのお方もいらっしゃい
ますので簡単に自己紹介をさせていただきます」
此処でまた大きな拍手が送られる。
「私は普通の高校を普通に卒業して東西観光バス会社に就職しました。その時既に
会社は倒産の危機にさし掛かっていたのですが其れを知らずに世界グルメツアーを
考えて提案していました。今考えれば誰もそれどころではなかったでしょう。誰も
聞いてくれませんでした。そうです此の福寿司さまご一行の恒例温泉一泊旅行に乗
せていただいた時に何故かうちの社長が一緒でした。山海ホテルについてから社長
にお願いしましたが聞いてもらえませんでした。仕方なく取りすがるように必死で
フクガセンムさんをロビーで捕まえて企画の話をしました。此れから社長に会うの
で其の後でゆっくり聞かせてもらうと云われました。そして社長に頼まれて会社を
任せてもらう事になったからこの案を形にいましょうって云われました。あ~ぁあ
の時の嬉しさを思い出します。泣けました。幸せってあるんだな~。フクガセンム
さんが(株)東西観光にして世界グルメツアー部を作ってくれました。おまけに私
を其の部の部長に・・・。私はその時19歳でした」
お~!っと驚きの声が上がりました。

「私が部長なんて無理ですって云いました。そんな事聞いた事ありますん。皆怒り
ますよ。私が考えた企画が取り上げられて形になれば嬉しいです。それで充分です
から部長は止めてくださいってお願いしました。そしたら何て云ったと思います?
其れは無責任だよって。云われてびっくりしました。貴女が考えた事を他の人が出
来ますか?って。年齢は関係ありません。貴女は明日から世界グルメツアー部の部
長です。よろしくって決められてしまいました」
うお~って感動のうめき声のような叫び声と大きな拍手が長く続いた。
「私はどの位か解らないほど頭をさげて皆にお願いしましたし謝りもしました。決
めた人はニコニコして居てるだけでした。も~ぉ何て変わった人なんでしょう?そ
して会社はフクガセンムさんの思い通りに立ち直ったのですが何と今度は副総理で
山上さんを手伝うなんて云って行ってしまいました。部長だった私に企画担当取締
役やれって無茶苦茶じゃありませんか?」

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「それは確かに無茶苦茶だけど間違いではなかったね」
「そうですよ。立派にやってるじゃないですか」
「立派何てとんでもありません。四苦八苦ですよ。寝ちゃってるし・・・」
「申し訳ありません。変わった人に見込まれてしまって災難でしたね」
「奥様~有難うございます。その一言で報われました」
「良かったね。今まで其の気持ちを云いたかったんだね」
「そうなんです。大将解ってくれました?」
「解った。よ~く解った。私がしっかり聞きましたよ」
「私も心から感謝しています」
「山谷は文句を云ってません。感謝しています。感動をいただいています」
「そうでしょう。それも解るよ。私は笑っているけど素晴らしいと感じてる
んだよ。実はね」

「本当にそう思ってくれてます」
「山谷さんは素晴らしい出会いをしたんだな。良かったなって思てるよ」
「福賀も大変な事を頼まれていますから・・・」
「そうですね。そう云えば国立アート大学の時にもその後も色々頼まれ続け
られてますね」
「そうですね。私も世界グルメツアーを頼んで始まったのでしたし・・・」
「そうなんですよ。頼まれることから始まっていますね」
「福賀さんが頼んで始まったのは福寿司温泉一泊旅行だけかな?」
「そうですね。でも山海ホテルの定宿は?」
「そうだ。あれがあったか。あれは福さんが頼んで泊めてもらって始まった」
「それ以外は頼まれて始まってますね」
「じぶん党の山上さんから頼まれた一件は大変だったでしょう」
「そうですね。結婚して私としては初めてのパリ旅行で宿泊した其の夜でした
から驚きました。でも大変って感じはなかったです。解っていましたから」
「解っていたとは?」

「何が起こるか解らない人だって」
「そうですか。そこが違うんですね。私とは」
「変わった人と思えば大した事ではありません」
「確かに云えています」
「変わった人か。間違いなく世界一変わった人だ」
「でも、世界グルメツアーは山谷さんがお考えになった企画でしょう。でした
ら他の人では務まりませんね」
「でも、年が~」
「ホホホ年齢関係あります?」
「無いですか?」
「無いと思います」
「実はこの人のお父さん雪月花の社長さんですよ」
福寿司の女将さんがそっと口を挟んだ。

「え~そうだったのですか」
初めて聞いた山谷はビックリした。
「まさかこんなに色々な展開になるとは思いもしなかったのですが。高校3年の
時、友達と海水浴に行った海の海の家で友達の手伝いをしに来ていた彼に出会っ
たのですから偶然です」
「それがお父様の福賀スカウトにつながった?」
「そうです。父があの時の新聞。福賀が学生で初めて日本広告アート連盟の会員
になった事と国際アート・フェスチバルでグランプリを受賞した記事が載ってる
新聞です。母を呼んで見るように勧めたのです。母は前に私のアパートで友達を
呼んでバースデイ・パーティをした時にお友達として福賀を紹介していました。
母がこの人を知ってると云ったので、偶然泊まり合わせていた私にコンタクトを
頼みました。電話したら居たので其の日に二人は会う事が出来ました」
「ナミカさんのお父様が雪月花の社長だとは福賀さんは知らなかった?」
「それが・・・そろそろ就活が始まる頃でしたので何となくつながると良いなと
思う気持ちがあって私の父は雪月花の社長をしていますってチラッと云っていま
した」

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「成程。其れでは既に福賀だんの中には雪月花があたのですね。23社からオフ
ァーがあっても」
福賀が眠りから覚めて話をつないで来た。
「そうですね。先輩を通して来ていた企業の業種が食品だったり薬だったりでし
たから。雪月花は石鹸を主体にしている会社ですから化粧品を業種として増やせ
る可能性がありました。そこで夢を持ちたい希望がありました」
「そうですか。ナミカさんとの出会いが福賀さんの夢につながったのですね」
「これも運ですね」
「父は社長として最高の仕事が出来たと喜んでいました」
「それは社長でないと解らない事ですが、100年に一人出るか出ないかって人
材を取るか取られるかは企業として大きな案件なのでしょうね」
「そうですよね。浮くか沈むかでしょうから」
「実際に一年後に収益が2倍3年目で3倍と増えたそうですから」
「それで株主からも役員にと望まれ社内の役員からも押されて役員にと云われて
専務ならと云ったんですね」

「そうです。部担当の役員では思うようにお役に立てないからです」
「じぶん党の山上さんにも官僚としてって云われた時に副総理ならって云ったそ
うですね」
「そうです。全てダメもとですから。それに此方からお願いしてないです。頼ま
れての事ですから」
「頼まれてって強いですね」
「頼まれたいですね」
「頼みたい人でなくては頼まれませんよ」
「それはそうだ。頼みたくなる人になるのが先だね」
「あの正月元旦の2ページ見開きの新聞広告には驚かされました」
「私もです。今までに無かった本当に目が覚める思いの新聞広告でした」
「大将も見たでしょう」
「ああ見ましたよ。ビックリしましたよ」
「社名変更と化粧品部門新設。そして福賀さんの略歴と化粧品宣伝部・部長とし
て入社紹介の新聞広告。今までに一度も無かった広告でした」
「此れだけで株式会社雪月花は何処の企業よりも一歩も二歩も前に出た企業とし
て知られたと思います」

「福賀さんの入社が社長によるスカウトだった事も衝撃でした」
「スカウトはスポーツ界か芸能界のものでしたから企業でもあるんだって」
「社名変更からあの新聞広告まで10項目の要望を全て受け入れた月下社長も
大きな方ですね」
「その前にナミカさんと出会っていたのも不思議ですね。何か大きな力が働いて
いる様な気がしてなりません」
「そうですね。先ず其処からが始まりですか?」
「それとも福賀さんが3歳の時にご両親を交通事故で無くされた。其処からでは
ないでしょうか?」
「そこから今の福賀さんに通常は想像もつかない不思議な力が働き始めたのかも
知らませんね」
「恐らく、その力は今も、そして此れからも・・・」
「でしょうね」
「福賀さん!また寝ちゃった」
「あ!そう云えばっ気が付きました?車が動いているのか止まっているのか?」
「気が付きませんでした」
「これが福賀社長直伝我が社の売り運転です」

 つづく

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小説「イメージ4」

イメージ No::80

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)前・総理
    現在は社長(月下)のスカウトで化粧品宣伝部・部長で入社した
   (株)雪月花・副社長 (株)東西観光・社長 フランス航空副社長
    アーティスト
    福賀(フクガ)ナミカ(旧姓・月下)NPOナミカ理事長
    山海(サンカイ)小波(コナミ)山海ホテル・女将
    福崎(フクザキ)正人(マサト)福寿司・大将
    福崎(フクザキ)乙女(オトメ)福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役

 ある国の窃盗団にさらわれた人たちを取り返して来たナミカのNPO財団は
日本とヨーロッパのある国で夫々船を降り家族の元に帰った。
その計画を立て指揮した福賀と財団理事長のナミカは今パリのホテルに居た。
そしてホテルに宿泊したその夜に盗賊二人をヒットマンだと思い動きを奪い
気絶したまま廊下に放置したが警察に福賀たちの身元が解ってしまう。
それは内密にとお願いして朝食をとってホテルを出た。
さてどうしようかと福賀は考えた。
先ずは自分が使っているアトリエにナミカを案内しよう。
そして、午後の便で日本に帰ろう。

「私が使っているパリのアトリエに行こう」
コンコルド広場の近くにある福賀の作品を扱ってくれている画廊による。
「妻のナミカです。アトリエに行って来ようと思います」
「お~!初めまして」
「主人がお世話になっています」
「マダム。車を取ってきます」
「どうぞ行ったらっしゃい」
「一つの仕事がやっと終わったところなので又ゆっくり来ます」
「はい。知っていますよ。ご苦労様でした」
「では又」

 マドレーヌ寺院を抜け、サンラザール駅を抜けたところにアラブ系王国の
王子所有のお城があった。
福賀が車の窓からリモコンを押すと門扉が開いた。
中に入ると花壇があり、周り込むと玄関に着いた。
一人の男が迎えに現れた。
「私は庭師で此処の管理をたのまれています。ジャンです」
「私の妻です」
「お~!奥様で。初めまして宜しくお願いいたします」
「主人がお世話になっています。こちらこそ宜しくお願いいたします」
「ごゆっくりどうぞ。何かありましたら呼んでください。直ぐ来ますから」
中に入ると吹き抜けの広いエントランスに螺旋階段が二階へと延びていた。

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「わ~凄い」
「此の二階に二部屋私のアトリエがあるから案内する」
「螺旋階段なんて映画みたいだわ」
「日本でもあるだろうけど。外国だと違和感が無くて良い感じだろう」
「そうね。螺旋階段ってやっぱり洋風よね」
「そうだね。自然が一番だね」
「広い!一部屋どのくらいあるんだろう?」
「20畳くらいかな?」
「裏もあるのね。二間続きのキッチン。まるでレストランの厨房みたい」
「此処で各国の要人や高官が集まるんだ」
「世界の【よりよい環境づくり】について?」
「そう。あの会社の専務の時からね」
「アラブ系の王子様に会ったのは画廊で?」
「いや。個展の会場で」
「そうなんだ」
「作品を高く評価してくれて、国に呼んでくれた」
「その時に王様が心筋梗塞で倒れられた」
「そうなんだ。空港に着いたら王子の弟が迎えに来てて」
「王様が倒れて迎えに来られないと」
「でも、早かったから何とか気功術で回復出来たんだけど」
「そのお礼に石油基地二か所をいただいた」
「そうなんだ。それでNPOナミカが出来たんだけど」
「そうね。その力は凄く大きい」
「だから世界の中で色々な行動が出来たのね」
「人が持ち合う様々な違いを基本として付き合い方を学んだ」
「貴義は芸術の世界を持ってるから」

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「そうだね。芸術は世界共通だからコミュニケーションにつながる」
「日本だけじゃなく、世界の【よりよい環境づくり】を理念としてでしょう」
「そう。そして人間は生物。自然を大事にしないとね」
「そうね。人間は自然から生まれました」
「では、又ゆっくり来るとして、帰りますか」

「え、らっしゃい!」
のれんを潜って戸を開けて入ると大将の元気な声が飛んで来た。
「おいおい、生きてたんだね」
「悪いけど私はしぶといんでね。簡単には死にませんよ」
「そうかい其れは良かった。おや?今日はお連れさんがあるんで?」
「私の妻がお寿司を食べたいって云うものだから」
「え~。奥様で。これはこれはお初にお目にかかりやす。福賀さんには大変
お世話になっておりやす。女将!」
「あらあら。奥様でいらっしゃいますか。福賀さんには専務さんの時からお世
話になりっぱなしです。ささどうぞ、うちではフクガセンムって云っています。
隅っこがお好みで、こちらが定席です。どうぞどうぞ」
「いつもこれでして」
と久保田の萬壽とお茶を持って来てコの字のカウンター右端の席に置き外に出
てのれんを外して中に入れ、鍵を掛けてしまった。
「もうね、魑魅魍魎の世界から戻って来たんだし、お寿司が食べたいと云われ
たんで福寿司さんに伺いました」

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「良いんですかい?」
「良いんですよ」
「女将!良いんだってよ」
「そうでしょう。そう来なくちゃ」
何か女将が今まで一番うれしそうだ。
「え~皆さん。突然ですが此れから店の温泉一泊旅行になりやした。店は閉めま
すから一緒に行きたい人は付いて来ていいです。行けない人はお代はいりません。
又の機会にしましょう」
女将さんが行く人に名前と連絡先を聞いてメモをする。
常連はこの時を待っていたように家に連絡の電話を掛けて連れにも連絡を入れさ
せている。
30分程準備している間、福賀夫妻は大将と話しながら好きなネタを握ってもらい
寿司を楽しんでいる。
 
「東西観光です。バスが着きました。今日は特別なお客様がいらっしゃると女将
さんに云われていますので添乗員の私の後ろの席を指定席にいたします。後の方
は適当にどうぞ」
「特別なお客様ってどなたですか?」
「フクガセンムご夫妻ですよ」
「え~前総理ご夫妻でしたか。失礼しました」
「特別って好きじゃないね」
「好きじゃなくてもこの際仕方ないでしょう」
「それは間違いなく特別です」
「え~添乗員の私も知りませんでした」
「本当ですよ。貴女の会社の社長ご夫妻ですよ」
「ぎゃ~車さん大丈夫ですか?」
「ちょっと危ないかも。でも大丈夫です。教えていただいた通りに運転しますか
ら心配はいりません」

 つづく

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小説「イメージ4」

イメージ No:79

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    前・総理大臣
    3歳で両親を失い、合気道五段の叔父に育てられ、高校3年で八段
    大学1年で九段のなった。
    両親なら授かった無形の財産を生かし抜こうと必死で努力した。
    国立アート大学卒業前に国際アート・フェスティバルでグランプリを
    取った事が新聞で大きく報じられ(株)雪月花の社長・月下から即日
    スカウトされ化粧品宣伝部長で入社、4年で専務になり一年後時の与
    党総裁候補の岩上に頼まれ副総理として手伝う事になる。
    今、其の時のホテルに居て月下からの電話を受け話をして、ナミカと
    変わったところだ。

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    「ナミカ。誰かって誰なの?」
    傍に居た福賀がナミカに赤外線グラスを渡し、寝室を指して行けと合図
    をした。
    そして部屋の灯りを消し、相手の動きを伺った。
    グレーのスーツを着た男性の二人だ。
    突然の消灯に戸惑った気配が感じられた。
    福賀が素早く動いた。
    一瞬にして二人とも床に倒されて動かなくなった。
    赤外線グラスから相手の様子は良く解る。
    先ず両者の右腕の関節を外し、次に両者の大腿骨の関節を外した。
    そして当身をして気絶させた。
    さて処分の方法は如何にしたら良いか考える。
    「自分で処理するとしても日本とは違うし、ホテルの人に手伝ってもら
    う訳にもいかない。。やはり相手のデーターを消して廊下に放置するし
    かないだろう」

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     身元が解る様なものを取り出して廊下にそっと運び出した。
    古いホテルを選んだのが部屋への侵入を容易にしたのだ。
    キィがオートロックなら容易に侵入は出来なかったのだかた。
    取り上げた所持品を見て解ったが、ヒットマンのような類のものではな
    かった。
    単に旅行者を狙った盗賊の類だった。
    福賀はそっと廊下を覗いて見た。
    まだ二人は横たわったままでいた。
    傍に行って足の関節と右腕の関節をはめた。
    所持品もヒットマンのモノでは無い事が解ったので返した。
    
     そっと部屋に帰って静かに様子を伺う事にした。
    「お母さま。ごめんなさい。ホテルにワインとオードブルを頼んでいた
    事を忘れていたのホホホ」
    「なんだ。そうだったの。急に誰か来たって云うから心配しちゃった」
    「大丈夫です。ピストル以外だったら大丈夫な人が付いてますから」
    「そうだったわね。でも気を付けてね」
    「有難うございます。ちょっとゆっくりして帰ります。お父様によろし
    く云っといてください」
    「二人がしてくれた今まで誰も出来なかった事。待っていた人は当然だ
    けど沢山の人が自分の事の様に喜んでいます。私も嬉しい。有難う」
    「当たり前のことを当たり前にしただけです」
    「それが今まで出来なかった事だって、お父さん云っています私もです」
    「照れるな。貴義に云っておきます。寒くなるから風邪引かないで」
    「貴方たちもね」

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     トントンとドアが優しい音を立てた。
    「ホテルのモノです。ちょっとよろしいでしょうか」
    「はい。何でしょう?」
    「ちょっとお伺いしたい事がありまして・・・」
    「はい。どうぞ」
    「失礼します。何かご迷惑な事がありませんでしたでしょうか?」
    「いえ、何もありませんが」
    「そうですか。良かったです。実は最近周辺のホテルで盗難の被害が
    起こっていまして、今日当ホテルでも窃盗の被害があったような気配
    が伺われましたので警察に連絡して来てもらい其れらしい者を確保し
    て調べてもらったら、未遂だと云うので確認のため伺っております」
    「そうでしたか。わざわざお見舞いに来ていただき有難うございます」
    「いえ、何事も無くてほっとしました。何か必要なものがありましたら
    お持ちしますが・・・」
    「折角仰っていただいたので、良かったらワインと何かオードブル的な
    ものお願い出来ませんでしょうか?」
    「はい。畏まりました。直ぐお持ちいたします」
    良い具合に片付いたらしいと二人は顔を見合わせて微笑み合った。

    トントン
    「は~い」
    「ワインとオードブルをお持ちしました」
    「有難うございます」
    「わ~ぁこんな高価なワインなんてそれにお洒落なお料理!」
    「いえいえ。此れはオーナーからのお礼ですから・・・」
    「オーナーから?」
    「はい」
    「何で?」
    「全て解っています。お二人がどの様な方々か」
    「バレましたか?」
    「はい」
    「此処はフランスですよね」
    「そうです。パリでございます」
    「そうでしたね」
    「メルシェ・ボク」
    「オー・シャンジェリジェ」

     つづく
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小説「イメージ4」

イメージ NO:78

 この道はフィクションの道であって、現実の道は隣に在る。
主人公の福賀貴義は3歳の年に両親を交通事故で失い、叔父の元で合気道を習得
しながら自然と会話し、自分のイメージでタラレバ無しで突き進んでいる。

語り手 空に浮かぶ雲
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)通称はフクガセンム
    前・総理大臣 今は(株)雪月花・副社長 (株)東西観光・社長 
    フランス航空副社長 全国ホテル・旅館連盟・顧問 全国魚農連盟・顧問
    福賀(フクガ)ナミカ NPO「ナミカ」理事長 福賀貴義の妻
その他 山海(サンカイ)小波(コナミ)伊東温泉・山海ホテル・女将 
    福崎(フクザキ)正人(マサト)銀座・福寿司・大将
    福崎(フクザキ)乙女(オトメ)銀座・福寿司・女将
    山谷(ヤマタニ)海乃(ウミノ)(株)東西観光・副社長
    車(クルマ)好人(ヨシト)(株)東西観光・取締役
    松竹(マツタケ)梅子(ウメコ)現・総理大臣
    アリス・キキ フランス航空アジア課・役員 前・トラベルコンダクター

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 隣の現実の道では年明けに震度7の大地震が起きて多くの人が亡くなり、安否が
不明な人も沢山いる状況だ。
他方、政治に問題が露呈して其の解明が急がれている。
其の道と此の福賀が歩く道はどう違うのだろう。

 パリの福賀のアトリエでは・・・
「福賀さん。総理を辞めてもお忙しいですね」
パーティに集まった中国の高官が労う。
「はい。色々とやり残して政界に入って手伝っていたものですから」
「未だ少し関わっていらっしゃる」
「はい。外部からですが・・・」
「解っています。でも、うちの方にも来てください」
「はい、近いうちに必ず伺います」
「うちの方にも出来るだけ早く来てください。父が首を長くして待っています」
「気になっています。国王はお元気ですか?」
「元気は元気ですが、淋しがっています」
「国王には福賀は直ぐにでも飛んで行きたいとお伝えください」
「キットですよ」
「はい。皆さんに話していたでしょう。私が政界に手伝いに行った時の事」
「新婚旅行でパリに来ていたら与党の総裁候補の岩上さんから手伝いを頼まれた」
「そうです。キキさんに後の数日妻にパリを案内お願いして翌日日本に帰った事」
「そうでしたね」
「今、盗まれた人たちを取り返して全員を送り届けた私の妻がブルターニュに来て
います」
「それは大事な事ですね。その時の時間を取り戻してください」
「有難うございます。必ず皆さんの国に伺いますから」
福賀はナミカの為にエッフェル塔の近くのホテルに部屋をキープした。

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「ナミカ。お久ぶり」
「パリ。懐かしいです」
「あの時は済まなかったね」
「お仕事大丈夫?」
「大丈夫。皆に話してあるから」
「良かった」
「あの時、雪月花社長の義父から電話が来て、次にじぶん党の岩上さんに手伝いを
頼まれ副総理なら良いと承知して翌日に日本に帰る事になったからね。その後を明
日から楽しもう。今夜はピカソやマティス其れからモディリアニ、シャガール、ユ
トリロ、キスリング、パスキン、藤田嗣治などの魂が浮遊しているモンパルナスで
食事をしよう」
「予約は?」
「ピエール エルメにしてある」
「有難う」
「私の大大先輩の魂に是非ナミカにも逢ってほしい」
「逢えるかしら?逢いたいです」
「大丈夫。ナミカならきっと逢えるよ」

「どう?フランスでのフレンチは?」
「やっぱりフレンチね」
「此処に居て日本に帰ったら何が食べたいかな?」
「貴義は?」
「肉かな?そう、馬刺しが食べたいな。ナミカは?」
「私はお寿司が食べたい」
「そうか。じゃ~お寿司を食べに行こう」
「あ!何かかすって行った!」
「どんな感じだった?足を引きずってなかった?」
「そんな感じ}
「ロートレックかも?」
「貴義の顔がマティスになっている」
「ほんと?」

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 外に出ると冷たい風が吹いていたが二人には温かい風に感じた。
そんな感じのまま二人はホテルに帰った。
待っていたように福賀に義父の月下から電話が入った。
「福賀です。今モンパルナスで食事して帰って来たところです」
「其れは良かった。今度は前のような事はないから安心して。様子を知りたかった
から電話しました」
「そうでしたか。ドキッとしました。こちらは楽しんでいます。ナミカさんと変わ
ります」
「ナミカです。今日はピカソやマチスやロートレックや昔のアーティストに逢いま
した」
「美術館費行ったの?」
「いいえ。レストランで美味しい料理を食べました」
「良く解りませんが?」
「ホホホ解り易く云えばお化に逢いました」
「お母さんと代ります」
「ナミカ元気?」
「元気よ。お母さまは?」
「元気よ。帰ったら遊びに来なさい。待ってますよ」
「あ!誰か入って来たみたい」
「誰かって誰?」

 つづく


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