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小説「イメージ4」No:97

イメージ No:97

 テレビ番組【アルミの窓】のMC中山アルミから出演を依頼され経営者会
議の海会長と(株)雪月花社長福賀はライブでの収録を希望した。
事前の打ち合わせ無しのぶっつけ本番が伊東温泉・山海ホテルで行われてい
るところだ。
スタッフの事前調査で資料を集め福賀が念力を使えると解ったのでアルミが
自分に掛けてほしいと頼んだ。

「では」
福賀はアルミの目を見て息を詰めている。
或る現象が瞬時に起こった。
アルミの目が閉じられ身体が硬直したように見えて浮き上がった。
直立した身体が僅かな高さに浮遊しながら海会長の方に進んで行く。
3メートル離れていた位置を2メートル移動したところで止まり床に降りた。
福賀が何か韻を切るような仕草をした時アルミが元に戻った。

「あれっ!」
何が自分に起こったか解らないようで唖然としていたが其処はMC我に返って
スタッフに自分が福賀の念力にかかった映像を画面に出してもらった。
「全く覚えがありません。私が座った状態から立ち上がって空中を2メートル
移動した。その映像は恐らく世界でも初めてではないでしょうか?」
「さ~それは解りません」
「有難うございます。恥ずかしい事が起こらなくてホッとしました」
「私も此れは初めてで、宙に浮きながら私の方にアルミさんがやって来るので
どうしたら良いかと思いましたよ。いつの間にこんな術を身につけたのか?」
「それは会長、私のシークレットです」
と云いながら福賀が動いた。
ディレクターがアルミをうながす。
事前の打ち合わせ無しのぶっつけ本番だから福賀の動き次第なのだ。

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 福賀が海会長を誘ってエレベーターの方に歩いて行く。
其れをアルミとスタッフが追って行く。
女将が機材運搬用のエレベーターにカメラスタッフを誘導する。
客用のエレベーターには海会長と福賀そしてアルミとディレクターだ。
エレベーターは5階に止まった。
其処にはスイート・ルームが5室と宴会場がある。
リニューアルの時に福賀が頼んだ檜造りの舞台がある。
福賀は既に浴衣に着替えて檜舞台の上にいた。
舞台の脇には伊東の芸妓連が待ち構えている。

「海外で日本の文化を紹介する時に観てほしいと或る宗家にお願いして奴さん
とカッポレを習いました。其れを時々此処でおさらいをしています」
三味線が弾かれ歌が流れると福賀の身体が自然に動き出した。
ライブだから。
大学は美術学部で専攻はグラフィック・デザイン。
でもね。
彼は合気道九段、少林拳師範と気功術師範でもあるのだから。

 二曲を踊って舞台を降り、芸妓衆に礼を言ってエレベーターの方に移動だ。
福賀が決めたライブだから彼を追うしか方法がない。
降りたところは山海ホテル内の福賀の自室。
其れも海外との連絡などに使うパソコン3台の仕事部屋とアトリエ兼寝室更に
其の二部屋には外側に温泉露天風呂が付いている。
海会長も用意された浴衣に着替えていたが・・・。
「会長、先に湯船に浸かっていてくれませんか。後から行きます」
「あいよ」
男だけってことは無くなるだろうけど。
此れが男の裸の付き合いってものなんだね。

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 以心伝心とかツーと云えばカー。
ひょっとすると海会長も福賀のエスパーなのかも知れない。
もう手話はいらない。
映像が全て語ってくれるから。
海会長が湯船に浸った頃合いを見計らって福賀が露天風呂に入っていく。
福賀の後ろ姿が写される。

 五代目名人彫辰の昇り龍と桜吹雪が綺麗だ。
アルミが一瞬目を閉じたが、直ぐ大きく開き直った。
流石だ。
寸時に覚悟を決めたらしい。
辞めさせえられても仕方がない。
はっきり見た。
福賀は右手に手拭を下げて素のままの姿だ。

 海会長の右側を回って一瞬前を隠した。
そして一度首まで浸かったが少しして腰まで身体を湯面から出して泳ぎ始めた。
背中の龍が波立てて生きているようだ。
カメラがその絵を撮る。
海会長と福賀が湯船から上がろうとする。
カメラは外に見える漁火を眺めるように撮り続けていた。

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 エレベーターは1階に降りてタペストリーが掛かっているホールに戻った。
途中にCMを挟み、ディレクターが巧みに番組を作っている。
昼食抜きの2時間のライブが終わろうとしている。
「このタペストリーについて伺いたいのですが?」
また福賀の手話が蘇った。
「このタペストリーは私が国際アート・フェスティバルでグランプリを受賞し
た作品を京都で西陣織に織ってもらった物です。雪月花に入って専務になって
から此のホテルに引き寄せられて泊った時に女将さんにリニューアルの相談を
うけてホテルのポイントになる物として考えたのです」

「此処は福賀さんにとって或る意味でイメージのスタートの場所のようですね」
「そうです。全くその通りです」
「まだまだ福賀さんは不思議でなりません。またよろしくお願いいたします」
「中々その機会は難しいですが・・・」
「海会長さん。今日は大変お世話になり有難うございます。また宜しくお願いし
たいです」
「私が驚いたと話した福賀君の表の仕事を支えているものは彼が寸時を惜しまず
努力を重ねたからだと思ったのでアルミさんに頼まれて一肌脱がせてもろいまし
たが500回のお祝いになりましたでしょうか?」
「お陰様で十二分視聴者の皆さんにお楽しみいただけたと思います。更に福賀さん
の不思議さが増えました。ご本人は出演は難しいと仰っています」
「彼の事でしたら私が何とかしましょう。その節はどうぞ私を使ってください」
「そんな~使うなんて恐れ多い。でも海会長さんにお願いしないと福賀さんは来て
くれませんので宜しくお願いいたします」
福賀は二人の会話を手話にするのに困っていた。

「ところで、福賀さん。お子様は?」
「その事は、二人で何人か養子をお世話していただいて育てたいと決めています」

 つづく



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小説「イメージ4」No:96

イメージ No:96

「女性にも女にはって無いですか?」
福賀がアルミに聞いて来た。
「どうでしょう?考えてもみませんでしたが、あると思いますよ」
でも、その件は宿題にさせてくださいとアルミはかわした。

「海会長さん。遊びの事で伺いたいのですが?」
「遊びね。大して遊んでいませんが・・・」
「いいえ。遊びの仕事のうちだし生きるって事っておっしゃいました」
「私がそんな事を・・・」
会長はかわそうとした。

「前回伺っています」
「まあね。遊びも生きるために必要な事でしょう。私は古い人間だから時代に
よって生き方の違いも知っています。確かに昔の遊びも知ってるし、経験んも
しています」
「政治家のお偉いさん方は夜な夜な銀座のクラブなどに遊びに行かれてるそう
ですが会長さんも夜な夜な遊びにいらっしゃいますか?」
「夜な夜なは行きませんよ。たまには行きますが、私が行くのと政治家の先生
が行くのは同じにしてほしくないです」
会長は憤然と言い放った。

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「どういう事ですか?」
「私は経営者同士の付き合いだったり仕事関係の付き合いだったりですが、彼
らは公僕です。国民の血税を使って居る訳ですから立場がちがいます」
「海会長さんは政治家の先生たちがクラブで遊ばれるのは感心しないと」
「そうですよ。遊びなんかしていてはいけない立場です」
「先生、先生と呼び合っていますが其れについては如何ですか?」
「気持ち悪い」
「はっきり仰いましたね。すっきりです」
「まあね。先生先生っておだてる方も良くないんだけどね」
「貴女彼らに何か教わりましたか?」
「いえ。何も教わっていません」

「そうでしょう。私も彼らに教わった事ないです。国民のため、国のために働
く立場の人間でしょう彼たちは」
「海会長さん。お酒召し上がっていませんよね」
「素面ですよ。はっきり云って夜の世界でお店を経営していらっしゃる経営者
がいらっしゃる。経営者同士で持ちつ持たれつって関係ですね。私たちは」
「経営の世界は昼の部と夜の部があるのですね」
「そうです。そして、その中でも色々あると云う事ですね」
「なるほで。昔に吉原あり、負の遺産と認識していますが?」

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「そうですね。確かに負の遺産です。だから其れを美化してはいけないと思う」
「海会長さんはどの辺まで負の資産をご存じですか?」
「知識としては可成り昔の負の遺産を知っています。若い頃は父親に連れていか
れました。今は夜の銀座でクラブに行っています」
「お馴染みのお店も何軒かあったり・・・」
「そうです。一軒だけとはいきません。複数の件数ですよ。アルミさん行きたそ
うですね。今度一緒に夜の経営者を梯子しますか?」
「是非おねがいします」
「前回ちょこっと云ってしまった福賀君につながるあれね」
「連れて行ったら福賀さんが知ってた店だったって・・・」

「そう。私にも失敗が沢山あるんですよ」
「お酒を楽しんだり、それも女性がお相手で・・・」
「夜の女性も色々。お客も色々。お酒が入るから気持ちが解放されて負の遺産を
戴く事も多々あったりしますね」
「其れも男だからですか?」
「そうだね。良い事じゃないけど、男だから仕方ない。此れも勉強なんて飲み込
んだり」
「洒落ですか?」
「まあね。私は福賀君のように怖い世界から守られてないから。痛い目にも会う」

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「海会長さんは昔と今を経験されてるから若い人たちに対応されていらっしゃる」
「それはどうか解りませんが・・・」
「福賀さんの話が出たところで、昔と今について如何ですか?」
アルミが福賀に振って来た。
「如何ですかって、何が?」
「男の遊びの世界です」
「吉原の話は、昔々の先輩の話として聞きましたが吉原から学校に通っていた先
輩が居たそうですよ」
「吉原に家が在ったのですか?」
「そうではなくて吉原に泊まり続けていたんです」
「え~っ!そんな事・・・」
「学校が学校と云うところもあったのでしょう」
「不謹慎極まりない」
「女性が女としての感じですね」
「でも、男ってその話を聞いた時に凄いな~って思いましたよ」
「え~?」

「え~って其れも男はって事です。理解出来ないと思いますが」
アルミは暫く黙ってしまった。

 やっと気を取り直したのだろう。
「福賀さんはご両親を3歳の時に交通事故で亡くされました。その後、合気道五
段の叔父さまに育てられ大学に入学の時点で九段になられた。大学の夏休みが2
か月近く在ると知って中国の少林寺に入門して中国四千年の歴史を少林拳を通し
て学び大学卒業までに師範の資格を得て、その時点で気功も習得されたと伺って
います。其れだけでも大変な事だと思いますが、其の上に美術の表裏と云っては
語弊があると思いますが裏美術と福賀さんは仰っていましたが和の刺青師でもあ
り名人の称号六代目彫辰さんでいらっしゃる」
此処まで一気に云ってからふ~っとため息をついた。

「はい。その通りで間違いありません」
「そして、自然と会話をされる」
「はい。いたします」
「前回には伺っていませんでしたが・・・念力もなさるとか?」
「よくご存じで・・・」
「今回の為にスタッフが一生懸命に頑張ってくれました」
「凄い!これは私のシークレットな部分です」
「是非お願いです。私に掛けていただけませんか?」

 つづく

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小説「イメージ4」No:95

イメージ No:95

 この物語はフィクションであり現実のようで現実ではない。
現実は様々な他力の規制で成り立っており、ある所では一つの思想によって規
制され又ある所では金と権力で社会が作られている。
 
 昔々ある所の社会は女性を頂点に置いた時代があった。
しかし、やがて其の時代も男性が殺し合いで社会を支配するようになった。
人と人が殺し合う弱肉強食こそ男性社会の本質である。
 
 フィクションでは肉体的な力や武器で支配する男性社会とは違う女性社会が
自然を愛するイメージのなかで成立する。
其れが此の物語の主人公・福賀(フクガ)貴義(キヨシ)のイメージである。

 語り手は空に浮かぶ【雲】の私。

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 自然の造形は実に素晴らしい。
植物にしても魚にしても動物にしても生き物に全く同じものはない。
夫々に違いを持たせて造られている。
しかし、其の違いにも非常に厳しい違いを造って私たちに試練を与えている。

 見えたり見えなかったり聴こえたり聴こえなかったり等、視覚・聴覚・触覚
・味覚・嗅覚の五感の違い。
また五感とは別に身体的な能力や思考に関係する知的能力の違い。
その全てを持たずに生まれてくる事もある。

 それらの一つを失っても不自由である。
故に誰もが生まれてくる子に願う五体満足などは奇跡であって恵まれ過ぎであ
る。
其れでも一応一通り持ち合わせていると更に豊かさや便利さを望んでしまう。

 さて、そんな事を心の中に持ち続けている福賀貴義は3歳の時に交通事故で
失った両親から恵まれた五感と優れた知的能力を受け継いでいる。
叔父に引き取られたとは云え本来は孤児だ。
精神的にどれ程のダメージを受けているか解らない。
救いは合気道五段の叔父と住まいの近くに広がる砂浜と打ち寄せる波が広がる
海と親しみ会話が出来るようになった事だろう。

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 XZ東京テレビ【アルミの窓】のMC山中アルミと制作スタッフ達が伊東温泉
・山海ホテルのホールに集まっている。
いつもは局のスタジオで行うのだが福賀と海の希望で初めの局外収録。
其れもライブだ。

 会場は1階フロントに繋がるロビーのホールだ。
ホールの外から向かって左側に広い壁面、そこには大きなタペストリーが飾っ
てある。
其の壁面の前に二つの椅子が左側に向かって右側にMCアルミの椅子が置かれ
ている。

 その向かい側に3台のカメラが構えている。
勿論、前もって山海ホテルをアルミとディレクターそしてカメラマン其の他の
スタッフが現場を確認と女将との当日の打ち合わせを済ませている。
ホールの配置設定と一部のスペースを観客用に用意する。
あたかも其処に局のスタジオが移ったように。
出来ればライブの様子は夫々部屋のテレビで観てくれるようにと女将にお願い。

 昼食はどうするか女将がアルミに聞いて来た。
「みんなどうする?」
アルミがスタッフに聞く。
「終わってからで良いのでは?」
ディレクターがスタッフに問う。
「終わってからで良いです」
スタッフから元気な気持ちが跳ね返って来た。

 13時を過ぎて入念なチェックが行われていく。
外に動きがあった。
2階のバルコニーで見ていたスタッフから連絡が入った。
福賀の愛車、白のポルシェが着いたと。
玄関を入る二人を手持ちカメラが撮る丁度14時ぴったりだ。 
入ったところで二人は女将と挨拶を交わしてホールに向かった。

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 ホールに入った福賀が手話でアルミに挨拶をした。
それを受けたアルミは自分が大事な事を忘れていた事に気付いて硬直してし
まった。
すかさず福賀がカバーする。
「当日ぶっつけ本番のライブでとお願いしたのは私の方でして事前の打ち合わ
せも無しにしていただいたので今日は私が手話通訳をさせていただきます。先
ず椅子の配置ですが・・・私が真ん中でお二人と自分の会話を手話でします」

 ライブですからその場で椅子の配置をスタッフが直して夫々の位置が決定。
こんな事は【アルミの窓】始まって以来の事でアルミは黙って立っていた。
何か今日のMCは福賀になってしまったようだ。
夫々の位置はタペストリーが掛かった壁面を背に中央に福賀。
左側に海会長そして右端にアルミが向き合う形になった。

「良い訳になりますが、いつもは局の【アルミの窓】ようのスタジオを使って
収録した後に編集で音の代わりに文字を入れていましたから・・・申し訳あり
ませんでした」
中央に座っている福賀が手話でアルミの謝罪を通訳する。
「いや。私は何も考えていませんでした。流石に福賀君は状況を把握していた
ようだ。あの総理所信表明演説を思いだしたよ」

「手話通訳士のようには出来ませんから時間が掛かりますが2時間在りますの
で頑張ります」
勿論自分の発言も手話で。

「有難うございます。では福賀さんに手話通訳をお願いして【アルミの窓】を
始めます。実は今日で500回になります。これも皆様のお陰と心から感謝し
ております」

ホールに用意された客席から大きな拍手が挙がった。

「片や日本の経済を守っておられる経営者会議の海会長さんと前総理として日
本で初めて女性の内閣総理大臣を作られた今は株式会社雪月花の福賀社長さん
にご無理をお願いしてお越しいただきました」

「私は二度目になります。多くの人たちに支持されている【アルミの窓】に出
させていただき、それも記念になる500回に呼んでいただき光栄に思ってい
ます」

「私も会長と同じ気持ちです。今日は日程も条件も自由に決めさせえていただ
き申し訳なく思っています。呼んで良かったと喜んでいただけるように頑張り
たいと思っています」

「前回は海会長さんから日本の経済について色々お話を伺う事が出来て大変勉
強になりました。今日は堅い世界から柔らかい世界を覗かせえていただければ

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と思っています」

「そうですか。柔らかい世界の私ですか。頑張りましょう」
「それから福賀さんですが・・・」
「私の柔らかい世界ですか?」
「はい。前回の時に海会長さんが福賀さんの柔らかさに驚かれたと伺っていま
すので」
「会長が頑張りると仰っていては頑張らない訳に行きません」

「先輩を置いては進めませんので海会長さんにお聞きします」
「来ましたね。何でしょう?」
「今は株式会社海船舶の会長さんでいらっしゃる」
「そうです。代々船の会社ですから」
「代々ですと・・・あの有名な回線問屋の?」
「前回はそう云う話はしなかったね。そうです・その前は水軍だったりして」
「村上水軍の流れだったりします?」
「しますね」

「なんと、歴史をたどるようで興味津々です」
「北前船は主に日本海沿岸にところどころに拠点を置きましたから」
「今でも其の実態は生きて居るんですか?」
「生きてないと云えば噓になりますね」
「海会長さんは日本海と太平洋を駆け巡る正に海の男ですね」

「日本は島国ですからね。国から出るには海か空でしょう」
「そうですね。今は直ぐ上を見てしまいますが」
「飛行機ね。だけど重い物とか、大きな物は空は無理です。
「重機とか身近な物では石油が一番解り易いですね」
「そうですね。タンカーですか」
「そうですね。でも私のところでは漁船もヨットも扱っていますよ」
「お魚ですね。身近です」
「アルミさん。お魚好きですか?」
「お魚大好きです」
「肉は?」
「肉も大好きです」

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「生き物は寝かせえて運ぶわけにはいきません」
「そうですね。お魚は冷凍に出来るでしょう。でも牛とか馬はだめですね」
「船の燃料は?」
「石油ですね」
「電気かと思いまいした」
「電気も使いますよ。でも石油が主力です。飛行機も石油で飛びますが」
「石油って大事なんですね」
「そうです。石油をエネルギーに変えて走ったり飛んだりしています。昔、日
本が最後の戦争をした理由にしているのがアメリカが日本の石油輸入ルートを
全部抑えたからと云っています」
「当時、日本の海軍はアメリカより充実していたと聞いています」
「それは事実でしょう。アメリカは陸地が広いから島とは云えない。日本の陸
地面積は狭いから海に囲まれた島ですね」
「島国ですね」

「ヨットいいですよ」
「会長さんはヨット持っていらっしゃる?」
「大したヨットじゃありませんが一応持っていますよ」
「海に船。ロマンティックですね」
「まぁね(笑)」
「一度乗せていただきたいです」
「良いですよ。でも、海はいつも優しいとは限りませんよ」
「そうですね。荒れたり、海賊に出会ったり怖い事もあるんでしょう」
「ありますね。それを知っておくことが大切ですね。私は子供の頃から男の子
は船に乗って海の向こうに出て行けと父親に云われたものです。男はと云うと
福賀君に笑われますが」
「いや。私も大学の先輩に薦められた本で男は船に乗って海の向こうに夢をも
つものだと思っていました」
「男はって云うのが男性にはあるんでしょうね」
「女性には女にはって無いんですか?」
「いや~どうでしょう?」

 つづく

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小説「イメージ4」No:94

イメージ No:94
 
 語り手は空に浮かぶ「雲」の私。
主人公は福賀(フクガ)貴義(キヨシ)3歳で両親を交通事故で失った孤児だ。
叔父に合気道を教わり自分に力を付け少林寺で少林拳と気功を身に付けた。

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 自然と親しみ、自然と会話が出来る。
1浪したが国立アート大学在学中に日本宣伝アート協会の会員に学生で初めて
なったし、国際アート・フェスティバルでグランプリを受賞した。
その事が新聞で報じられ(株)雪月花の社長にスカウトされ入社し、社会人と
してスタートする。

「経営者会議の海さんからお電話です」
「つないでください」
「久し振り。青年部長」
「ご無沙汰しております。そろそろ伊東温泉でしょうか」
「それも良いんだが、あのアルミさんから誘いが来たんだよ」
「アルミの窓へのですか?」
「そうなんだよ。二人で出てほしいってな」
「ハハハハ。なるほど。そろそろありそうな誘いですね」
「そうかい?」
「以前。会長から私に話が来て其の繋がりって感じが残っていますから」
「そうか。なるほど。で、どうする?」

「会長さえ良ければ私は乗って良いです」
「そうか。じゃあOKだって返事するよ」
「はい。その後で伊東温泉にいきませんか?」
「良いね。背中の龍さんにも会いたいしな」
「有難うございます」

 そんな事があったと思い出した。
そう云えばあれは【アルミの窓】に出た後だったな。
じぶん党の山上に手伝いを頼まれて政界に関わって副総理になって当時党内最
大派閥の会長で総理を辞任した闇雲の贈収賄を摘発した時、福賀の替え玉をし
た彼は?今何処で何をして居るのだろう。
京都で福賀の替え玉が収賄している芝居を闇雲側に見せて、東京の赤坂で闇雲
が実際に収賄している証拠をつかんだ。
「彼ですか。京都の老舗旅館の娘さんと恋をして結婚して旅館を継いでいます」
そうだったか。

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「今は太っちゃって、私とは似ても似つかない大男になってます」
其れでは福賀の替え玉は居なくなった。
「私を騙る事があってはと心配されましたか?」
まあね。
「有難うございます」
ところで、経営者会議の海会長と【アルミの窓】出演の話はどうなった?
「其れなんですが、大変な事になりました。会長が話したのでしょう。伊東温泉
山海ホテルのホールで収録でどうだって?」
会長がか?
「はい、恐らく会長の悪戯心だと思うのですが。受けて立つのも良いかと」
そうか。まさかと思う相手の裏をとるか?
「そうです」

「アルミの窓のアルミさんからお電話です」
「つないでください」
「もしもし、アルミの窓のアルミです。お久し振りです。その節はお忙しいとこ
ろお付き合いいただき有難うございました。また、この度は経営者会議の海会長
さんにお願いしたお二人での出演をご承知いただき有難うございます」
「お久し振りです。又お世話になります。よろしくお願いします」
「あの~ぉ。海会長さんにご相談したところ伊東温泉・山海ホテルのホールが素
晴らしいから其方でどうかと云われました。【アルミの窓】始まって以来の局外
収録をさせていたくのですが・・・」
「会長から聞いています。OKです」
電話の向こうからビックリした空気が感じられる。

「あ・り・が・と・うございます。山海ホテルは福賀さんのエリアと海会長さん
から伺っています。何かお聞きして置く事がありましたら・・・打合せとか?」
「別にありません。当日本番で良いと思います」
「打合せ無し。当日ぶっつけ本番ですね」
「そうです」
「解りました。日程については?」
「会長と相談してご連絡します」
「よろしくお願いいたします」
フゥっと電話の向こうからため息が聞こえて来た。

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 片や経済界の大物、もう片方は業界で初めてスカウトされて大学から部長で
入社し、あれよあれよと驚きの中で総理大臣になって手話を使いながら所信表
明演説を原稿無しで行い、閣僚の一人がスキャンダルを図られ任命責任を問わ
れ責任を取って辞任、副総理に置いた松竹梅子を暫定だが日本では初めての女
性総理大臣にした福賀だ。
海会長も福賀社長も自分で日程を作れる二人だ。
【アルミの窓】出演の日程は直ぐ決まった。

「日程が決まりました。4月24日午後2時からライブで2時間如何ですか?」
「結構です。では其の日程と条件で2時にスタート出来るようにいたします」
どれだけ二人は悪戯っ子なんだろう。
どんな事になるのかクスクス笑いながら楽しがっているに違いない。

「アルミさん。出来るだけお二人のデーターを集めました」
【アルミの窓】のスタッフにとっては初めての局外収録、それもライブだ。
編集の楽しみは無くなったが緊張感は大きい。
スタッフもアルミも燃えないでは居られない。
「凄いわ。良くこんなに一杯データーを集められたわね」
「燃えていますから」
「私も」

 つづく


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小説「イメージ4」No:93

イメージ No:93

 現実は小説より奇なりと云われるが此の小説はフィクションだから現実より
も奇なりである。

 語り手は空に浮かぶ「雲」の私である。
主人公は福賀(フクガ)貴義(キヨシ)3歳で両親を交通事故で失った孤児だ。
なのに合気道九段で少林寺で修行して少林拳と気功は両方とも師範である。

 自然と親しみ、自然と会話が出来る。
1浪したが国立アート大学在学中に日本宣伝アート協会の会員に学生で初めてな
ったし、国際アート・フェスティバルでグランプリを受賞した。
その事が新聞で報じられ(株)雪月花の社長にスカウトされる。
「それが最初から部長なんだから。現実よりは奇なりでしょう」
「そして福寿司の温泉一泊旅行になったのは専務になって直ぐでしたね」
「伊東温泉・山海ホテルの大浴場貸し切り」

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「それも気まぐれ突然ですから」
「色々な事が現実より奇なりですね」
「とうとう日本で初めて女性の内閣総理大臣を作ってしまったし」
「凄いですよ。全ての原発を凍結しましたね」
「米軍基地も全部失くして武器を持たない中立国を宣言した」
「世界の各国と不戦条約を結びましたね」

「凄い事ばかりやって来た。ミサイルで打って来たら売って来たところにUター
ンする仕掛けを開発し特許を取った」
「あれも凄い。人間冬眠。人口が増え過ぎたら部分的に交代で冬眠し合う」
「ご自分で冬眠第一号になった」

 山海ホテルの女将が久し振りの海辺と懐かしそうに話している。
「海辺さん。今度は社長付きの秘書さんですね」
「そうなんです。また度々伺うと思いますので宜しくお願いいたします」
「こちらこそ。同士ですもの宜しくです」
「私たちは社長になられてもフクガセンムです。会社では社長ですが」
「キキさん時々来てますよ。ちょうど今日もいらっしゃています」

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「やっぱり。何かそんな感じがしていました」
「そうでしょう。私たちエスパーですものね」
「そうです。あの松竹さんは?」
「勿論。フクガセンムのエスパーですよ」
「今日はやっぱり」
「お見えになってます」
「そうでしたか」
「集まりましたね」

「此れからですね」
「そうですね。此れからが大変です」
「緊張します」
「私もです」
女将が真剣な顔で応えた。
「後で集まって話しましょう」
「そうですね」
海辺も秘書ではない顔になっている。

「皆さん大広間に集まっていらっしゃいますから部屋割りをして来ます。貸し切
りを決めて、お風呂から上がったら宴会場へ、フクガセンムのカッポレと奴さん
のおさらい、其の後に集まりましょう」
「今は暫定総理ですから次の総選挙で正式に総理大臣になってもらわなければ」
「本番に向けてですね」
「では後ほど」

「皆さん。大浴場男風呂と女風呂30分貸し切りにします。ご希望の方には貸し
切り券を渡しますから取りに来てください」
何なに貸し切り券だと?といぶかる初めての客に福寿司の大将と女将が説明をし
ている。
「へ~ぇそうなんですか。そいつは貸し切りで入らなけりゃなるまい」
「そうなんですか。其れは貴重な体験です。是非お願いします」
って初めて参加の女性客も貸し切り券をもらいに行く。

 割り当てられた部屋に夫々入室して貸し切りの時間が来るのを待っている。
先ずは男性の貸し切り時間が知らされる。
「こんな事は福寿司さんだから出来るんだよ。他のお客さんでは中々出来ません
から有難いです」
「其れはそうなんだけど,そこで優越感を持っちゃいけませんよ」
「大丈夫ですよ大将。感謝もし、申し訳ないとも思ってますから」
「まあね。実のところ皆さんって云うより福さんの希望でって事だからね」

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「あぁ見えても福さんは照れ屋だからね。其のうえ口下手って来てるんで皆に話
すより一緒に入った方が良いんだね」
「裸の付き合いでしょう。私らと仲良くしたいって寸法だ」
「そうだね。コミュニケーションってやつだね」
「意外ですね。国会で手話を使って原稿無し2時間の所信表明演説をした人が話
下手って本当ですか?」
「本当なんだよ。店に来て寿司を食べていても殆ど話をしない。久保田の萬壽が
好きでね。ちびりちびり呑んで、あっしが握った寿司をつまんではニコニコして
るだけなんだから」

「そうですね。私が伺った時もフクガセンムがしゃべって居るの見た事ないです」
「もっとも、来たら直ぐ温泉一泊旅行になるからね」
「あの温泉で背中の龍を泳がせる姿が全てを語っているんでしょう」
「それは私たちも納得ですが・・・」
「なにせ、外ではやる事をしっかりやってるから不思議だよな」
「これからも楽しみですね大将」
「そうだな。此れから何をやらかすか興味津々だな。本当は危険が一杯で心配な
んだけどな。本人も其れは解っているだろ」
「そうでしょうね。今までの政治家が出来なかった事や行わなかった事を全部や
って来てますからね」

「どんなに憎んでいるか。筋違いですがね。恨んでいるでしょう」
「色んな人や組織に狙われてもいるでしょう」
「多分ね」

 つづく

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小説「イメージ4」No:92

イメージ No:92
語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)

 春の株主総会は期待されていた福賀貴義新社長の就任報告が承認された後、
閉会の動議が出され、賛成多数で採択されパーティ会場に移った。
やっと帰って来た福賀に男女の株主たちが群がって何とか話を聞き出そうと
ワイワイガヤガヤお祭りのような騒ぎになっている。
福賀は落ち着いたものでニコニコしながら丁寧に対応して株主総会を閉じた。
外にはやっと8分咲の桜が夫々の存在を示していた。

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 社長室に帰って福賀は秘書室に電話した。
「海辺さん。銀座の福寿司さん6時半二人予約入れてください」
「はい。接待ですか?」
「そうです。また海辺さんに色々お世話になるので改めてお願いしたい事も
あります。如何ですか?」
「はい。大丈夫です。6時過ぎにお店の方に行くようにします」
「よろしく」

「えらっしゃい!」
「雪月花の海辺さんでしたね。お久し振り」
福寿司の大将と女将が優しく海辺を迎えてくれた。
「福賀副社長が社長になられて又私が秘書に付きました」
「そうでしたか。とうとう福さん社長になりましたか」
「月下さんもこれで安心ですね」
「そうだと思います」
「海辺さんも大変なお役目でしょうけど、また此処に来てもらえる回数も増
えて私たちは嬉しいですよ」
「福さんは雪月花に入ってから出たり入ったり忙しく動いていたからね」
「今度は落ち着いていただけると良いのですが」」
「そうですね。でもどうかな~?」

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「えらっしゃい!お~福さんだ」
「いらっしゃいませ。とうとう社長さんだそうで。おめでとうございます」
「有難うございます。皆さんのお陰です。此れからも宜しくお願いします」
「こちらこそです」
女将が福賀の定席カウンターの一番端へ久保田の萬壽とお茶を運んで来た。
「福さん。良いんだね」
「宜しく」

「さ~ぁ。今日は突然だけど店の温泉一泊旅行になりやした。一緒に行きた
い人は付いて来て良いよ。行けない人は残念代で今日の代金は無しだ」
女将が外に出て灯りを消し、のれんを店の中に入れた。
二か所に電話を入れる。
「あれになったので・・・」
「いつも突然でごめんなさい」

 大将が心配そうに伺っている。
「両方OKです」
「さ~行く人は心配かけないように連絡して」
女将が行く人の連絡先と電話番号を書き込むメモ用紙を渡して回る。
常連客は良い日に来たと大喜び。
連れはどうなってるのか聞いて自宅に電話している。
「今日は当たりなんだよ。なかなかない機会なんだよ。おみやげ沢山持って
帰るから。そう。よろしく」
「もしもし。福寿司さんから。お店の旅行に一緒に行く事になりました。何
でって又とない機会だから。こないだ行った?そうだっけ。又行ってきます。
よろしく」

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「毎度有難うございます。東西観光です。バスが着きましたのであ店のお客さ
んから乗ってください。それからお店の方と、最後に社長と、おや?海辺さん
お久し振りです。うちの社長が雪月花の社長に、それで又、秘書さんに、そう
でしたか。さ、どうぞお乗りください。私の後は特等席。社長は窓際、海辺さ
んは通路側。はい、出発します」
いつものように福寿司の温泉一泊旅行ご一行を乗せてバスは取締役の車の運転
で伊東温泉・山海ホテルに向かって走り出した。

 東西観光は以前、観光会社にバスと運転手と添乗員を貸し出すバス会社だっ
たが運営が危なくなっていて福賀に助けを求め福寿司恒例のバス旅行に社長が
便乗して来た時に山谷が企画した世界グルメツアーを福賀に話した。
東西観光バス会社の救済を頼まれ社長になった福賀が(株)東西観光にして、
山谷の企画を採り上げて世界グルメツアー部を作り山谷を部長にした。
今、山谷は福賀の元で副社長をしている。
運転をしている車は車両部の係長だったが今は常務取締役になっている。

「皆様、本日は当東西観光をご利用いただき有難うございます。このご旅行は
私が入社する前から行われていたようです。何も知らない私は世界グルメツア
ーの企画案を作りアピールして回りましたが誰も聞いてくれませんでした。後
で解ったのですが、会社は明日をも知れない危機にあったのでした。たまたま
添乗員として乗り合わせた此の福寿司さんの温泉一泊旅行でした。スポンサー
が雪月花の福賀専務さんと聞いて世界グルメツアーの企画案を聞いていただき
ました。同乗してきた前社長は福賀専務に会社の救済を頼みに来ていたのでし
た。会社は福賀専務さんが社長を引き受けて立て直すことになり、私が企画し
た【世界グルメツアー」を主要の業務にして株式会社東西観光を発足されまし
た。其の時私は未だ19歳でしたが世界グルメツアー部の部長にされました。
私が部長なんて無理ですと抗議しましたが、貴女が考えたものを誰が出来ます
か出来るのは貴方だけです。思いのままにやってください。困ったら私が助け
ますって云われてしまいました」

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「そうだったんだ」
「嬉しかったと思うけど大変だったでしょう」
「19歳で部長はきついよね」
「貴女の企画を聞いていなければ福さんも社長を引き受けなかったと思うよ」
「そうですよね」
福賀は黙って聞いている。
「其れからもう一つ。今運転している車も係長から部長になりました。福賀社
長は社長として会社に入る前に研修生の振りをして車両部に行きました。其処
で車係長に会います。運転免許を持ってるか聞かれた社長は大型二種免許を持
ってると答えると運転して見せてくれと云ってお得意様の社員旅行の運転をさ
せたそうですが其の運転がお得意様に絶賛されてしまいます。車も研修生の運
転を只物ではないと認めていて車両部に誘ったそうですがその場は総務部に呼
ばれているのでと云われ、その直ぐ後に車も総務部に呼ばれ明日から部長にと
社長が辞令を書いて行かれたと云われたそうです」

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「福さんは部長が好きなのかな?」
「まさか?」
「それは冗談だけど、そんな無謀な事をする人を係長から部長にしましたね。
私には全く考えられません」
「それだけの何かがあったのでは?」
「その係長から部長になった人が今は常務取締役です。新入社員で部長にさせ
られた私も今は副社長ですから笑っちゃうでしょう」
どっと笑いが起こった。
「福さん自身、大学から部長で入社して4年で専務、2年後に副総理、そして
総理大臣だったんだから」
「なるほど」
「ところで東西観光の運転手さんは皆さんこうなんですか?」
「気が付かれました?」
「何とも言えない心地よさ」
「そうです。福賀社長仕込みのノーマル・ドライビングが我が社の売りになっ
ていて好評です」
「福さん。どうして無謀な事を要求した人が部長になったか教えてよ」
「素直で率直だからです」
「そうか。云えてるね。素直が一番。率直って素晴らしい」
「でしょう大将」
「そうだね。うちらもそうだもんな福さん」

 伊東温泉・山海ホテルに着きました。
「お待ちしていました。福寿司ご一行様どうぞ。先ずは大広間の方へ。あれ?
海辺さん、お久し振り」

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 つづく

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小説「イメージ4」No:91

イメージ No:91

 3歳で両親を失った子供が「こうしていタラ」とか「こうしていレバ」無しに
親から受け継いだであろう無形の財産の発掘を父方の叔父の合気道指導と自然と
の会話に導かれながら国立アート大学に進み、様々なコンペで賞を取りながら実
践で力をつけながら2ヶ月の夏休みを全て使い中国の少林寺に入門して少林拳と
気功術を習い師範の資格をえる。

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 大学3年に大きな出来事に出会い正面から向き合う。

 その一つは思いも掛けない刺青師名人五代目彫辰に命を掛けて六代目彫辰を継
いでほしいと頼まれ仕方なく承知した。
六代目彫辰の証明として更に福賀個人と関わるところに危害が及ばないお守りと
して背中に日本の彫り物として代表的な絵柄・登り龍を彫られる。

 二つ目は3学年の秋11月頃だったか、卒業後の就職に関わる話だった。
先輩を通して23社からオファーが来ていたが此れから何か出来るイメージをも
っており、その年の夏に海の家で出会ったナミカの父からのスカウトがあって
7項目ほどの条件を全て受け入れてくれた(株)雪月花の新設化粧品部門トータ
ル・マネージャー兼化粧品宣伝部・部長で入社し社会人としてスタートした。

 入社1年後2年後と社の業績が2倍3倍と上がると共に役員や株主から福賀の
経営への参加が打診され希望した専務取締役で参加する事になる。
2年後、ナミカと結婚してパリへ旅行するが到着の夜にじぶん党の総裁候補・山
上から電話で総裁を引き受ける条件として福賀の手伝いを付けている話があり、
副総理としてなら手伝えると返事をする。
国民の支持率26%ながら衆参とも絶対多数の勢力下の瀕死の状況でじぶん党の議
員たちは生き残るためなら何でもOKなので福賀副総理が受け入れられた。

 二人の共通の理念【よりよい環境づくり】を推進してきたが2年後、山上総理
が心筋梗塞で三度倒れ福賀が気功を使って助けたが体調不良で辞任、じぶん党か
らも脱退し政界から下野した。
手伝いを頼んだ人が居なくなった福賀も副総理を辞し、じぶん党からも外れ元の
民間人に戻った。
そして又2年後、最大野党のみんなの党・党首大海に誘われ新党「和」の党長に
なり衆参合わせた総選挙に出て大勝、初めて総理大臣になる。

 2年後、閣僚の一人がスキャンダルに巻き込まれ任命責任を問われ、責任を取
て辞任して副総理に置いた松竹梅子が暫定だが総理大臣になった。
日本で初めて女性の内閣総理大臣の誕生だ。

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語り手 空に浮かぶ「雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)
    (株)雪月花副社長(株)東西観光社長 フランス航空副社長
    日本宣伝アート協会会員 フランス美術家連盟会員
    その他顧問多数 
    年齢37歳

 そして今、社会人としてスタートした(株)雪月花で前期の株主総会が開か
れようとしており、会場に春めいた空気が漂っていた。
時間が来て役員たちが入って来た。
「あれ?福賀副社長が居ない」
「また、何処かに行ってしまったか?」
会場にどよめきが起こっていた。
事務方の総務部長が軽く咳ばらいをして開会を宣言した。
月下社長が立ち上がって株主に向かって深く頭を下げる。
「最初に人事の件で皆様にご報告とご了承をいただかなければいけません」
またまた福賀副社長が居なくなって役員人事変更するってか?
夫々が隣と肩付き合って怪訝そうに話し始めた。
「実は・・・」
そら来た。
「実は私が先日柄にもなく心筋梗塞を起こしました。幸い伊東温泉に行ってた
福賀副社長がヘリで飛んで来て三途の川の手前から引き戻してくれました。大
して働いても居ないのに寄る年波には逆らえないと社長の役を降りさせていた
だく事にし、役員方々の了承を得ました。まだ少し会社に関わっていてほしい
と云われ会長として残る事になりました」
此処で無念の気持ちも在ったのだろう、一呼吸の間をとりました。

「幸い色々と社外で活動していた福賀がやっと落ち着いてくれる事になりまし
たので彼に社長の役を任せる事に役員会で決まりました。福賀社長どうぞ」
おぉ!え~本当に?
凄い拍手が渦を巻くように自然発生する中に福賀が入って来た。
月下会長の隣に立って頭を
深々と下げた。
「よ!福賀前総理」
笑い声。
「待ってました。福ちゃん。愛してるよ」
もうアイドルだ。
「もう何処にも行かないで。お願い」
本音でしょう。
下げた頭を上げにくい福賀が動かない。
「頼みますよ新社長」
この位で良いかなと静かに頭を上げて・・・。
「新しく社長になりました福賀貴義です」
「解ってるよ」
どっと笑い声が上がった。
隣で月下が苦笑している。
 
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 そんな事全く気にしてない株主たち。
「まだまだ色々教えていただかなければなりません。月下会長には入社前から
私の我儘を聞いていただき社内に気を使わせて来ました。その為の神経の消耗
は計り知れないものがあります。心筋梗塞は重度のストレスによるものと伺っ
ています。本当に申し訳なく思って居ます。また我儘を許していただき心から
感謝しております」
今度は無言の拍手が暫く続いていた。

「私の好きな温泉にお連れして疲れを癒していただこうと思います。そうです
ね。海在り山在り。ミネラル豊富な美味しいものを皆さん一緒に行かれるよう
な企画を考えてみたいです」
今度は拍手と一緒に踊り出す株主たち。
「皆さんあっての雪月花です。新米の社長ですがどうか、厳しいご指導ご鞭撻
を戴きたいと願っています。どうぞよろしくお願い申し上げます」
手が痛くなった株主は腕を振りながら拍手している。
福賀が改めて深々と頭を下げた。
「では、お手元にお配りした経営内容につき経理部長からご説明させていただ
きます」
すかさず手が挙がった。
「どうぞ」
「株主総会終了の動議を提出します」
「賛成!」の声が合唱のように響き渡った。

「前期株主総会終了の動議は賛成多数で決定しました」
もう拍手を忘れて株主たちは立ち上がっている。
「別室にささやかなお飲み物と料理を用意してありますのでどうぞ」
「これが堪らなく良いのよこの会社は・・・」
会社によっては荒れたり長引いたりすんなり収まらないが雪月花は違う。福賀
が居るから総会屋が来ない。
まるでお祭りのような雰囲気で終わった。
株主たちは福賀に聞きたい事が沢山あるから楽しみ一杯だ。
もう福賀に掴まって離れない女性の株主で大変。
揉みくちゃになりながら今までして来た経験話で対応している。

 株主総会と簡単なパーティが終わって福賀は社長室に戻った。
福賀が専務になった時に入社して秘書室に配属され専務付き秘書なった海辺が
今度は社長付きになった。
秘書室に電話をする。

「海辺さん。6時半二人福寿司さんに予約入れてください」
「はい。接待ですか?」
「そうです。また貴女に色々お世話になりますから」

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 つづく

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小説「イメージ4」No:90

イメージ No:90

 初めに・・・
 芸大受験の時から、そして合格者発表も一緒に見てかつ丼を食べて喜び合っ
た親友が立ち上げた「白組」の山崎貴監督作品は【ジュブナイル】から【黄泉
の国からDESTINY鎌倉ものがたり」そして【ALWAYS三丁目の夕日」そして今
日【ゴジラー1,/C」を観て来ました。あのフランス映画【太陽がいっぱい】の
ラストシーンの時にぞっとした感覚をトップシーンに感じさせられて始まって
冷血漢の私を涙ぐませてくれた。有難うそしておめでとう。

 楽しみ
 色々な違いを持ちながら其れなりの楽しみを持ち合いたい。
目が見えても目が見えなくても、音が聴こえても聴こえなくても。
「身体が動いても動かなくても、楽しみ合えたら良い。そんな事を簡単に云うな
と叱られるに違いないが・・・。私もナミカも楽しみ合う方法を考えて行動して
来た」
思ったらイメージして形にする。
これが3歳で両親を交通事故で無くした福賀だ。
「それは勿論。簡単な作業ではありませんが、物事全て絶対も完全も無いとして
考えて出来るところまでやって見る」
「見える人の楽しみもあれば、其れとは違う見えない人の楽しみもあるって云い
たいんでしょう福さんは」
「大将は解りが早い。その通りです」

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45年前に点字の方法を使って作った作品

「まぁね。福さんとはツーカーの間柄だからね」
「私も大将の様になりたいです」
店の客が云ってくる。
「そんだったら。そうだね。もう少し福寿司に通ってくれると良いかも」
「通います通います頑張って通います」
店の中にどっと笑いが起こった。
「福さんに言わせえると私はエスパーだってよ」
「私もフクガセンムのエスパーになりたいです」
女性の客が割って入る。
次々に福賀のエスパー志望の声があがる。
「それも努力次第かな」
「大将。変な期待を持たせちゃ罪ですよ」
「まぁそう云ってしまったら夢も希望もなくなっちゃうから」
「フクガセンムのエスパーって大将以外にも居るんですか?」
「それは云ってはいけない事になっているんで。申し訳ない」
「フクガセンムの前だから?」
「いや前でも後ろでもなくて云えないんだ。知らないから」
「何だ。大将は他のエスパー知らないのか」
「実は知らないんだよ」
「フウガセンム。直に伺いますが今のところ何人ぐらい居るんですか?」
「せめて数くらい教えてくださいよ」
「そうですね。そんなに多くないです。9人ですね」
「へ~ぇ。9人もですか」
「エスパーって聞いた事あります。言葉にしなくても思ってる事が伝わるって」
「本当ですか?」
「そうですね。当たらずとも遠からずです」
福賀が真面目に答えたので聞きたい事がある程度聞けて納得出来たようだ。

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ペイントで描きました。

「今日はフクガセンムの奥様が参加されていますが・・・」
「前々回に山海ホテルの入り口まで来て東京にとんぼ返りでしたから今日は中に
入ってもらおうと来てもらいました」
「入り口から中に入って福寿司恒例の温泉一泊旅行の続きになりますね。福さん
いつもの通りで良いんですか?」
大将が聞いて来る。
他の連中もそこのところが聞きたいところだ。
「いつも通りでよろしく」
わ~っと歓声が上がった。
福賀は隣のナミカを見やって頷き合った。
今日はいつもの時間より早い。
東西観光の添乗員、今は福賀社長の片腕で副社長がバスの到着を知らせに来た。
常連の客とその連れから先に奥の方に乗るようにして次に大将と女将と店の人た
ち、そして運転席の後ろ添乗員席の後の窓際に福賀、通路側にナミカが座った。
運転は動いているか止まっているか解らない福賀仕込みのドライビングを心得た
車好人で元車両部係長だが今は取締役だ。
「私は福さんが総理になって所信表明演説で手話を使うのを見せてもらいました
けど、ナミカさんも手話を使えるんですか?」
「はい。私は私で手話と点字の先生に教えていただいています」
「そうでしたか。福さんが国会で初めて手話を使って演説された時はどんな感じ
でしたか」
「始めた時はビックリして、其れからどきどきし通しでした」
「前に予告は無かったのですか?」
「ありませんでした」

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ペイントで描きました。

「福さん。あれは考えていた事じゃなかったんか?」
「考えてなかったですね」
「それじゃあ、あれは本当のパフォーマンスだったんだ」
「そうです。議長に呼ばれ演壇に向かった時に耳が不自由な人が気持ちの中に浮
かんで、そうだ其の人たちにも伝えなければと思ったんです」
「やっぱり福さんは変な人だ。そんな人何処探してもあんたしか居ませんよ」
「大将。手話で話そうと決めて居たらその時から意識しちゃって色々考えて緊張
しまくって固くなってしまいます」
「って事は、手話を使うのはあの時に決めた?」
「そうです。手話は日常、ナミカと使っていましたから」
「なるほど。それで下地が出来ていたって訳だね」
「それは我々には解りませんでしたからビックリしました」
「大体ね。原稿無しでやる人なんて今まで誰も居なかったんだから。それだけで
も驚きだった。其のうえ手話まで使ったら其れは奇跡としか云いようがない」
「耳が不自由で聞くことが出来ない人たちは初めて私たちも仲間に入れてもらえ
たと喜んでいましたね」
「私も嬉しかったです。手話通訳を付ける方法はありますが、とっさの思い付き
ですし、人を介さず本人から直接が良いですよね」
「それは当たり前だよ」
「そうなんです。当たり前の事が当たり前に行われていますか?いないでしょう」
「そうだな。云われてみれば当たり前の事だ」
「当てり前の事としてやった驚きは世界中に伝わったでしょう」
「伝わったね。月下さんが敏感に感じ取ったように感じた人がフランスにも居た」
「そう。フランス航空の社長」
「福さんを副社長にって」

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ペイントで描きました。

「以前からフランスに縁があって繋がっていまいしたが・・・」
「フランス航空のキキさんも云ってましたね。早く総理大臣止めて来てほいいと
社長が何時も云ってると」
「フランス航空の副社長ってどんな仕事をするんですか?」
「主にですが、東洋圏と中近東圏を担当して、各国の主な人と交流を深めて会社
の発展に役立たせる仕事です」
「凄いですね。それもフクガセンムの魅力が認められて望まれたのでしょう」
「実際のところ日本文化の紹介や中国やアラブ系との文化交流です」
「それって外交官みたいですね」
「実はそれが私の主な仕事です。勉強でもあるし、日本の外交官たちを紹介する
役割を担っています」
「色々な国や人の違いを学んで関わる大切さって福さんの持論だからね」
「そうです。違いを知る事はとても大事です」

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ペイントで描きました。

「お待ちしていました。ようこそ福寿司ご一行様。まあ、ナミカさん。お父様ご
無事で良かったです。先日、お見えになって大変お元気でほっとしました」
「父が先日は大変お世話になりまして有難うございます。また今日は私が改めて
お世話になります。よろしくお願いいたします」
「どうぞ今度こそごゆっくりなさってください」
「フクガセンムさん。今日は如何なさいますか?」
「今日は初めに私の部屋に案内して、其れから皆さんと一緒に福寿司さん恒例の
貸し切り大浴場露天風呂と宴会場で例のおさらいを」
「了解です。専属バンドをスタンバイですね」
「よろしく」

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ペイントで描きました。

「ナミカ。私が家にも会社にも居ない時は此処に居て海外と交信してるんだ」
「そうでしたか。家とは違った異次元のアトリエって感じ。素晴らしいです」
「温泉露天風呂も付いているんだよ」
「ちょっと行ってみて良い?」
「どうぞ」
「暗くなって来て遠くに光っているのは漁火かしら?」
「そう。烏賊を釣る船だね」
「貴義が此処でトムソーヤのような秘密の世界が必要なのね」
「ま~ね。そんなところだね」
「メールが入ったみたいよ」
「ちょっとメールをチェック。アラブ系の王国の王子からだ。国王が私を呼んで
いるようだ。一緒に行ってみるか?」

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ペイントで描きました。

 つづく
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小説「イメージ4」No:89

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 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ[雲」の私
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)

出逢い
父方の叔父・自然・雲・自由・夏休み・武道・気功・彫辰・ナミカ・月下・山海
小波・福寿司の大将・キキ・フランス航空・フランスの美術家・パリの画廊・ア
ラブ系の王国・パリのアトリエ・岩上・大海・松竹など。

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ペイントで描きました。

「福賀顧問。例の法案を提出します」
「楽しみです」
例のって何だろう?
ひょっとしてあれかな?

 衆議院本会議が始まりました。
「松竹内閣総理大臣」
「はい」
呼ばれて暫定的ではあっても女性初の内閣総理大臣松竹梅子が立ち上がった。
「よりよい環境づくり内閣として閣議決定した法案の採決を求めます」
凛として力強く議事会場に響く声で法案を読み上げた。
「同性婚並びに夫婦別性の自由を認める法案に対して皆さんの同意を求めます」
各委員会などで有りや無しかを話し合って来た改革の決定事項であった。
与野党の議員が起立して採決が行われた。
賛成絶対多数で法案は通過した。
あちらの金と権力の与党政権では検討中を理由にいつまでも決められずにいる。

「福賀さんのお陰で【よりよい環境づくり」が又一つ形になりました」
「お疲れ様です。次の課題のクリアーが楽しみになりました。益々注意が必要に
なりますね。不覚を取らないように、足元をすくわれないように気を付けないと
いけませんね」
「はい。気を付けます」
「私も外から見張っています」
「宜しくお願いします。残りの任期はまだ2以上残っていますから」
「申し訳ないです。男社会に未練を強く持っている人達が此方の世界にも多いと
思わなければいけません」
「そうですね。油断は出来ません」
「決める事は大事ですが、決め過ぎるのも良くないです」
「そうですね。人間は拘束されたくありませんから」
「気をつけます」
「あちらでは偽物をもてはやして楽しんでいるようですが、此方では本物を大事
にしたいですね」
「そうですね。価値感も色々ですが、下げずに高めたいです」
「あちらでは真似を認めて楽しんでいますが、そうした気持ちが価値感覚を低く
しているのでは?」
「人の弱点を突いて笑いあったりしていますが、それは苛めを肯定しているので
はないでしょうか?」
「そうですね。お笑いのネタのつもりでいるのでしょう。いじめとは思わずに」
「そうですね。其処にあるのは人格形成に在ってはならない優越感だと気づいて
いないようです」
「やっぱり其の元を作っているのは、金と権力が作り出した社会通念ではないで
しょうか」
「そうだと思います」
「福賀さんは日本の古武道から和の精神を身につけられ、その上、中国4000
年の歩みを学ばれ、自然と親しくされていらっしゃる」
「そうする事しかありませんでしたから」
「そうだとしても、中々出来る事ではありません」
「出来るけど行わないのは行いたいけど出来ない人に申し訳ないから・・・」
「確かに」
「良い事とか悪い事とか決めるのは自分の中では出来ますが人に対しては如何か
と思います」
「なるほど」
「自分なりに云えることの一つですが、人を傷つけない心くばりが在るか無いか
です。例えば人が歩く前を横切る行為に見られます。昔はこうした行為はしては
ならないと教えられましたし自分でも認識していました。あちらの世界では習慣
的に危険な行為が行われています」

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ペイントで描きました。

「人を思いやる気持ちが全く感じられませんね」
「前に進むところを横切るのですから物理的にも危険度は高いです」
「その危険な行為を行う気持ちは全く理解出来ません」
「いけない事とも危険な行為だとも思っていない?」
「そうとしか考えられません」
「人心の荒廃ですね」
「車と車でもあります」
「そんなに気になっていませんでした」
「人を見てしているのでしょうか?」
「私も実際には経験が無いのですが・・・」
「やはり人を見てやっているようですね」
「尚更悪質です」
「何故そうなったか理解し難いです」
「自己顕示欲でしょうか?」
「認められたい気持ちが行為に出てるのでしょうか」
「そんな事で認められたって仕方ないと思いますが」
「誰でもよかった只人を殺したかったって理解しようがない殺人」
「人の気持ちは無視して自分の気持ちだけで行動する」
「こうした精神構造を作った元凶はボランティア精神を忘れ金と権力志向になった
一部の政治屋集団ではないかと思えてなりません」
「国民の命と財産を守る精神は何処に行ってしまったのでしょう」
「人殺し戦闘機の製造販売?」
「時代が変わると心まで変わるのでしょう」
「其のままで良い訳がありません」
「そうです。福賀さんの仰る通りです」
「固い事を云うようですが、大事な事ではないでしょうか?」
「基本的に硬い思考は大事です」
「あちらで聞いた話ですが、営業の接待法は食事か酒か女だそうです」
「何て事ですか」
「物的な認識で女性蔑視です」
「そんな事が・・・」
「松竹さんは驚くでしょう。私も呆れましたが此れが全てではありませんが男社会
の一部の考え方であると思わない訳にはいきません」
「なるほど、男性の中にはそうした意識が含まれていると解りました。共存共生は
相手を知る事と福賀さんに教えていただきました。ところで福賀さんがご両親から
授かったであろう無形の財産を発掘しながら力を付けられたと伺っていますが月下
社長さんにスカウトされた時にどんな条件を出されたか知りたいのですが?」
「私が一年浪人して国立アート大学に進み卒業までに出来る限り自力をつけて23
社からオファーを受け雪月花石鹸株式会社の社長月下さんからスカウトされ、社会
人の一歩を踏み出したかですね。その条件は私が入社する前に社名を雪月花株式会
社に変更、化粧品部門を新設して製造とデザインと宣伝部門を準備して其のプロジ
ェクトの構成を社長の手で行っていただき私が入社時にトータル・マネージャーと
して其の任につき化粧品部。部長として受け入れていただく。私の入社年4月以前
1月元旦の朝刊に社名変更と化粧品部門新設並びに私の略歴と化粧品宣伝部・部長
として入社の紹介を載せた2ページ見開きの広告を有力紙に掲載する事に加え入社
後は社内外を問わず活動は自由に何れの拘束は一切無しが入社条件の全てでした」
聞き終わって松竹は大きく深呼吸をした。

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ペイントで描きました。

「私は小さな町工場を経営する父の手伝いをしていましたから伺った条件は夢のよ
うで驚きで胸が詰まりそうでした。その条件は其のまま受け入れられたのでしょう
か?お金の話は?」
「出した条件は全て受け入れられました。報酬の事は一切社長にお任せしました」
再び松竹は深く深呼吸をして思った。
3歳で両親を失って叔父に育てられた人が前代未聞の条件で業界で初めてのスカウ
ト入社で社会人をスタートさせた福賀貴義を知る事が出来た。
両親の顔も朧げな悲しみが無いと云えない状況で前へ前へ力を付けながら進んでい
る福賀がそこに居る。
頑張らねば出来る限り頑張らねば。
松竹は聞いて良かった。
生まれて初めての驚きだったし、愉快だったし、楽しくて体中が笑ってしまった。
男の社会は昔から戦争の歴史だった。
世界が大国を目指して戦って来た。
そして未だ戦争をして殺し合っている。
愚かさも無視して。

つづく


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小説「イメージ4」No:88

イメージ No:88

 あらすじはNo:57にあります。
抜けた部分は回毎に折り込んでまいります。

語り手 空に浮かぶ「雲」の私。
主人公 福賀(フクガ)貴義(キヨシ)

    3歳の時に両親を交通事故で失う。
    父方の叔父に合気道を教わりながら小さな海岸近くの町で育つ。
    両親から受け継いだ無形の財産を探し、高める事に全ての時間を使って
    自分に力を付けて来た。
    中学の時に美術の先生の作品に感動して絵を描きまくり自然と対峙しな
    がら会話をするようになる。
    
    国立アート大学に進み、2ヶ月の夏休みがあるとしり、中国に渡り河南
    省中岳嵩山にある寺院・少林寺に入門。
    少林拳と気功術を習得して師範の資格を戴く。
    大学入学の時点で日本の武道・合気道は九段を戴いている。

    大学3年の時に命懸けで五代目彫辰に六代目を継いでくれと頼まれ人一
    人の命に代えがたく承知する。
    その10月に日本広告アート協会主催の公募展に特選を受賞して3年連
    続特選受賞で学生として初めて会員に推挙され、同時期に国際アート・
    フェスティバルに出品していた作品がグランプリを受賞し、新聞に大き
    な記事になる。
    その記事を見た当時雪月花石鹸株式会社の社長月下に条件を全て受け入
    れられスカウトの形で新設化粧品部。宣伝部部長として入社。
    1年後に2倍、2年目に3倍と会社の収益を上げて役員と株主に役員と
    して経営に参加を望まれ専務取締役を望み参加する。
   
    2年後ナミカと結婚してフランスのパリに旅行するも付いたその夜に【じ
    ぶん党】の総裁候補だった山上に手伝いを頼まれ副総理ならと条件を出し
    受け入れられ男女半々の組閣を行い、同じ理念の【よりよい環境づくり】
    を進め内閣府に全て民間人による監査機関を置き、先ず与党の最大派閥の
    会長で前総理闇雲の収賄を摘発して退廃した【じぶん党】の浄化を行った。
    国外に於いては世界の各国と不戦条約を締結させた。

    エネルギーは自然の恩恵を極力活用し、自然と生物に害しない他のエネル
    ギーを作り出し原発は廃止する方向で早急に強力な研究チームを設けて最
    良の方法を発案する。
    不戦国日本としては武器を持つ必要なしと考え全ての武器を放棄する。
    よって今後武器の購入は行わない。
    勿論、武器の生産も行わない。

    現在の防衛省は災害対策省に変え自然災害やその他の災害に対応する。
    日本の文化を大切にし、国外の文化と交流を図り豊かにして行く。
    そして、文化と科学のバランスを取るようにしていきたいと思って居る。
    不戦国日本を世界にアピールし、好かれなくても嫌われない日本として
    の外交を最優先とする。 
    こうした政策で武器を待たない中立国を目指して【よりよい環境づくり】
    進めて来たが・・・岩上が体調不良のため総理を辞任・政界を引退してし
    まい手伝う相手を失った福賀は残る理由が無く、副総理を辞任し党からも
    抜け全てを大前田副総理に託して民間人に戻った・・・が

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2013年10月「個展」手で触れられる作品

    最大野党の党首・大海に誘われ新党【和」を結成、党長として総選挙に出
    馬し総理になり副総理に女性を置いた。
    1年後、一人の閣僚が何者かにはめられスキャンダルとして報道された。
    福賀は任命責任を問われ責任を取って辞職、暫定的に副総理の松竹梅子が
    女性で初めての内閣総理大臣になった。
    「イメージした事が一つ形になった」
    瞬間だ。

    「福賀さん内閣府の特別顧問になってください」
    松竹梅子総理に頼まれては断れない。
    「解りました。私にも責任がありますからお引き受けいたします」
    まだ、男性社会が女性社会になった訳ではない。
    男性社会を誇示しようと考える者が巻き返しを狙って妨害するだろう。
    油断できない。
    
    「お疲れさまでした」
    「いや~君の隠れていた部分が刺激になって何か力が湧いて来ました」
    「そうですか。それは良かったです」
    「まだ色々ありそうですね?」
    「在ります。でも今日はこの位で次の時にご覧にいれます」
    「是非、私の知らない部分を見せてほしい。あの刺青の話は哀しかった。
    でも、実物は神々しくて素晴らしかったです」
    「色々な物事が巡り会って来てるのだと思います」
     
     福賀にはこうして居たらとか、こうして居ればよかったが無いのだ。
     そうした人間をタラレバ無しの人間と云う。

 2013年10月.jpg
2013年10月 「個展」手で触れられる作品

    「明日は朝の伊豆の漁港に皆で行きますからお休みください。何も考え
    ず明日を楽しみにしてください」
    そう云いながら福賀は月下の目を見ながら柔らかく気を送った。
    
    福賀は次の朝5時に起きて毎日の基礎トレーニングをを済ませた。
    「おはようございます。良くお休みになれましたか?」
    「おはよう。君の話を聞きながら眠りに入ったようです。これは?」
    「合気道と少林拳の基本のトレーニングです」

     ロビーのホールには福寿司一行が揃って福賀たちを待っていた。
    
    「おはようございます。月下さん良く眠れましたか?」
    大将が気遣って聞いて来た。
    「はい。お陰様で良く眠れました」
    「親子で温泉に浸かって良いお話が出来たでしょう」
    「はい。とてもいい話が出来ました。次回が楽しみです」
    「それは良かった。次回は福さん次第ですから私も楽しみです」
    「フクガセンム宜しくお願いいしますよ」
    「頼まれ弱いところを大将にしっかり捕まえられているフクガセンムだし」
  
    「ではお魚に会いに行きましょう」
    港では漁業組合の会長が待っていた。
    天気は上々朝の7時、空は青々と何処までも青い。
    雲一つ無いと云いたいところだが私の雲だけがぽつんと浮いている。

    「おはようございます。お待ちしてましたよ。お好きな魚介類を適当に選
    んで箱に詰めてください。費用は心配ないです。うちの顧問持ちですから
    遠慮はいりませんよ」
    「え~!そんな事になってますか?顧問って?」
    「そうです。うちの顧問になってもらう前、雪月花って会社の専務になっ
    た頃から恒例になってます」
    「月下さん又一つ刺激が増えましたね」
    「増えました」

    「この方はどなた様で?」
    組合の会長が聞いて来た。
    福寿司の大将がそっと伝える。
    「株式会社雪月花の社長さん。福さんの義父さんですよ」
    「え~福賀さんをスカウトした?それはそれは私、漁業組合の会長です。
    福賀さんには大変お世話になっています。よろしくお願いいたします」
    「いや~私の方こそよろしくお願いいたします」
    「今日は大漁でして気分も上々なんで皆さんに喜んでもらえます。社長さ
    んは初めてでは・・・私が適当にみつくろってさしあげましょう。それで
    今回は如何でしょうか?」

    「有難うございます。皆さんと同じように適当にお任せでお願いします」
    「解りました」
    会長の手で鯛や平目など、まるで竜宮城が送られていくような風景になっ
    て来た。

 ミッキー.jpg
もう行く事もなくなった思い出のディズニーシー。

  つづく
 

    
    
    

    
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