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小説「イメージ4」

小説 イメージ No:61

 あらすじはNo:57にあります。

 福賀は新党「和」の党長になり、来る総選挙に立候補する前に活動のスタート
となっている銀座8丁目の福寿司から例の温泉一泊旅行で伊東温泉・山海ホテルへ
来ている。

 福寿司の大将をはじめ店の者や常連客と今しがた大浴場で福賀と一緒に温泉に
入って今は宴会場で食事しながら酒を飲んでいる。

 この山海ホテルの最上階には福賀が株式会社雪月花の専務になって間もないころ
立ち寄り,女将の求めでリニューアルに参加、デザインとホールの壁にホテルの
シンボルになるタペストリーの提供代として露天風呂つきの2室をもらっている。

 福寿司一泊温泉旅行の時には信用出来る人たちとの交流として女将に頼んで30分
大浴場の男風呂と女風呂を貸し切りにしてもらって福賀は一緒に入っている。

 自分党の山上に頼まれ手伝う事になり、まず最初に行ったのは組閣、福賀は当たり
前の事として男性と女性半々の大臣構成を提言して実行させた。
それは山上とお互いに持ち合っている”よりよい環境づくり”の基本的理念に沿ったもの
だった。

 党の役職と内閣の構成が行われる恒例の”呼び込み”の時もマスコミの記者たちが陣取る
テント村も今までに無い緊張感に包まれていた中で民間から呼ばれた福賀の時の驚きは
最高だった。
その後の呼び込みが男女交互に呼び込まれる様子にも驚きの声があがりテントが震えた。

 そして迎えた衆議院本会議の岩上総理の欠席で福賀副総理の代理演説、それも原稿を
持たずに2時間の総論・各論・具体策は日本国中と世界各国を興奮させた。

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 その議場のテレビ中継は福寿司でも観ていて大将はシャリを握ったままで立ち尽くし
客もあんぐり口を開けたまま寿司を口に入れることも忘れ呆然としていた様子を思い出
して宴会場は大盛り上がりだ。

 それは事件と云わせた張本人が同席して居るのだから当然と云えば当然の事だ。
この人があの時の人だなんて想像もつかない気持ちなのだろう。
その人が此処に居て自分たちとあの時の事を話している。
聞いている側も熱ければ話している福賀も熱い。

「そうです。女性は男性より優れています。そう男性は優れていると思って居いても思い
たくない気持ちは解りますが、考えてみましょう。第一に男性も女性から生まれたでしょ
う。生まれなければ存在すらしていないのですよ。それだけではない
育ててくれたのは女性です。それは自然から授かった母性によるものです。男性にそれ
がありますか?無いでしょう。今、男性が存在しているのは女性が居たからです。

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「それゆえに女性の尊厳を何よりも尊いものとして認めなければいけません。違うか
な?女性は産むために存在するのではなく、生み出す人間として存在しているのです。
男性は産み出す体質も精神も能力も女性のようには持ち合わせていないのです。その
弱点を補うかのように偉ぶって補っているにすぎません。哀れと云えば哀れ、寂しい
存在なのです。その寂しさをカバーしようと女性を哀れな存在として支配し続けて来
たのが此れまでの男性社会の実態なのです。何かと云えば力を固守し、女性は弱い者
として助ける役割を装って人殺しを続けて来た。人を思いやる気持ちも守る気持ちも
自然とのつながりも女性の方が遥かに優れています。そして精神的にも肉体的にも男
性より女性の方が強いのです。今こそ男性は女性が優秀である事実を認め、女性に対
し素直になってサブに回り、女性を援護して行くべきだと思います」

「福さんの仰る事は良く解った。確かにあっしもそう思うよ」

 大将は福賀が3歳で両親を失った事をしっている。
その子がいやその人が女性は素晴らしい尊敬して任せるべきだと云っている。
そう思うと胸が締め付けられるように痛いのだ。

「大将はおかみさんに頭が上がらない。見ていて感じます。それって尊敬してるから
でしょう。だから私も尊敬してるんです」

「そうですよね。男は戦う事しか出来ない人間だって云われてみると思いますよ。平和を
平和をと串では云っていますが、今まで本当に戦争に次ぐ戦争の連続でした」

「初めてでしょう。日本が不戦国を憲法に入れたのは」
「憲法第九条」

「それでも此れも絵に描いた餅になりそう」
「それは自然をないがしろにした男性の末期的な気持ちの哀れですね」
「まったくです」

「誰が変えてくれますか?」
「福さんしか居ないだろう」

「頼みますよ福賀前副総理」

 空には煌々と輝いて満月が微笑んでいる。

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 つづく

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