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小説「イメージ4」

小説 イメージ No:62

 あらすじはNo:57にあります。

 まだ福賀が新党「和」の党長になったと公表されていない。
伊東温泉・山海ホテルの福寿司一泊旅行でリラックスした福賀は山上前総理の
手伝いをする前に頼まれて顧問になっていたホテル・旅館連盟と漁業組合とも
このホテルの部屋からオンラインで会議に参加している。

 そんな福賀は海が好きで温泉が好きで踊りも好きだ。
「では、久しぶりに奴さんとかっぽれを踊らせてもらいましょう」
「いよ!副総理!」
「大将!それは止めてください。辞めたんだから」
「ゴメン!じゃ~福賀専務!」

 福寿司の連中とは付き合いで来ているが、誰にも内緒でたびたび来ているのだ。
ホテルの女将に頼まれて地元の芸妓連に肩入れをしている。
新しい企業の進出もあって芸者衆を呼ぶよりコンパニオンを呼ぶようになって
芸妓置屋が寂しくなって来たので何とかしてもらえないかと云うので福賀は考えて
芸妓の一人、置屋の娘に東京の地唄舞の宗家に頼んで内弟子にしてもらって名取に
仕立てた。

 そんな縁もあって福賀には自分のバンドがついていて何時でもスタンバイの
状態になって福賀を待っているのだ。
ここ最上階の宴会場には高さ50センチ、ヒノキ造りの舞台が用意されている。
福賀はその上にひょいと飛び乗り浴衣を尻ばしょいし頭にねじり鉢巻きをきりりと。
「よっ!」とバンドに合図を送る。
待ってましたと唄と三味線が控えめながら心地よく軽快に流れ始める。

(あ~こりゃ こりゃ)
奴さん どちら行く(あ~きた こりゃ) 旦那 お迎えに さても 寒いのに
供揃い (雪の) 降る 夜も 風の 夜も(さて)お供は 辛いね
いつも 奴さんは 高ばしょり(ありゃせ~)え あこりゃせ それも そうかいな
(あ~こりゃ こりゃ) え~姐さん ほんかいな~(あ~こりゃ こりゃ)
後朝(きぬぎぬ)の 言葉も交わさず 明日の夜は (裏の)窓には わし一人
(さて)合図は よいか 首尾を ようして 逢いに 来たわいな(ありゃせ)
ありゃせ それも そうかいなえ~(あーこりゃ こりゃ)

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「続いて かっぽれ いきましょう」

(かっぽれ かっぽれ よーいとな よいよい)
沖の 暗いのに 白帆がえ~ 見ゆる(よいとこ りゃさ)
あれは 紀伊の国 あれこの これわいさ (よいとさっりっさ)
え~みかん船じゃえ(あ~みかん船)
みかん船 じゅさーえ 見ゆる(よいとこりゃさ)
あれは 紀伊の国 やれこの これわいさのさ(よいと さっさっさ)
えーみかん船じゃえ(かっぽれ かっぽれ よーいとな よいよい)
沖じゃ わしがこと 鴎と云うがなさ よーいやさ (よいとこりゃさ)

墨田川では やれこのこれわいさのさ(よいとさっさっさ)
都鳥(あ~みやこどり)
都鳥(あ~みやこどり)よいやさ(よいとこりゃさ)
隅田川では やれこのこれわいさのさ(よいとさっさっさ)
都鳥〈あ~みやこどり) 都鳥(あ~みやこどり)よいやさ (よいとこりゃさ)
隅田川では やれこのこれわいさのさ(よいとさっさっさ)
都鳥〈さて かっぽれ かっぽれ よーいとな よいよい)
ここは どこぞと 船頭しゅうに 問えばさ よいやさ(よいとこりゃさ)
ここは 屋島の やれこのこれわいさ(よいとさっさっさ)
壇ノ浦じゃえ (あ~壇ノ浦)

 幾何学形ーg.jpg

 時間は夜の10時を回っているだろう。
宿泊客には未だ宵の口かもしれないが静かな癒しの時間でもある。
それを充分わきまえた声とお囃子で歌が流れ三味線が追っている。

 日本の芸として海外で挨拶代わりに披露出来るように福賀はその筋の家元に
頼んで指導を受けて習得していたものだ。

「お楽しみいただけたでしょうか?」
福賀は芸者衆に頭を下げて礼をし、居並ぶ福寿司一行に伺った。
「十分過ぎるほど楽しませてもらいましたよ。福さん」
「奴さんとかっぽれ。日本の代表的な和の芸だって感じました」

 控えめだけど大きな拍手が沸いた。
「バリ島ではね。昔、部落で争い事があった時には踊りで決着をつけた」
「ほ~それは良いね」
「日本でも世界でも踊りで決着をつけると良いですね」
「すぐ力で争う事しか考えつかないって悲しいね」
「防衛費に何十兆円も掛けるなんてね。教育とか養護だとか医療とかね」
「助け合うことが必要な事が一杯あるっていうのにね」
「福さん。頼みますよ」

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 つづく


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