SSブログ

小説「イメージ4」

小説 イメージ No:71

 あらすじはNo:57にあります。
抜けてる部分は回毎に折り込んでまいります。

 福賀前総理そして早くも東西観光の社長のカラオケ開始。

 「ヨギリヨー・・・」
思いっ切り音程をはずして笑いをとる。
ツウコーラスから真面な音程に乗って楽しそうに歌い続ける。
「アリガト~オ」
みんなも嬉しくて拍手喝采だ。
「・・・カミノケガカタマデノビタラ・・・」
「カサガナイ・・・」
福賀の声は枯れていて渋い。

「ちょっとこの辺でジュエット曲を入れてほしいんですがその前に一緒に歌って
くれる人が居るかいないかですね」
「はい!」「はい!」「はい!」
と3人が手を挙げた。
「では、ジャンケンをしてください。一番勝った方が1番を二番目に勝った方が
2番をその次の方が3番をどうぞ。次の曲は今日23になったお祝いに歌わせて
いただきま~す」
温かい拍手が沸いた。

 みなさん達者ですね。
とても良い感じで歌って別れても良い人だったり、福寿司のある銀座の有楽町で
逢いましょうだったり。
そして〆は福賀がフランス語で「ラ・メール」を歌う。

一つ目のサービス・エリアに入って休憩。
福賀をチラッと見ては夫々首をかしげて行く。
それはそうでしょう。
総理だった人が辞めてこの時間に此処に居る訳がない。
それでも福賀の事が知れては不味い。
休憩もそこそこにバスに戻る。

「さ~あ。みなさん此れからは福寿司さん恒例の温泉一泊旅行特別企画フクガか
ら何でも聞いてやろうになります」
と添乗員山谷が案内する。
「本当に何でも良いんですね」
「本人から確約を取ってあります。何でも良いそうです」

 落書きー8.jpg
 
「は~い」
「どうぞ」
一つのマイクが質問者に渡され、もう一つのマイクが福賀に持たされて始まった。
「福寿司さんでは前総理はフクガセンムがニックネームになっていますね」
「はい。そのようです」
「国立アート大学をお出になって今の(株)雪月花の社長にスカウトされた時の正
月元旦に2ページ見開きで左派名変更と化粧品部門増設そしてフクガセンムの顔写
真入りの紹介記事が載った広告ページを見て凄いショックを受けた覚えがあります。
先ず入社される前に色々な会社からどの位のオファーが有りましたか?」
「そうですね。大学の先輩を通して23社からオファーをいただきました」
車内から声にならないドヨメキが起きた。

「そうでしたか。それ程に望まれていらっしゃった。それは想像以上の驚きです」
「私も驚きでした」
「なお突っ込んで伺いますが、それを振り切って雪月花に決められたのは何故?」
「沢山の会社からオファーを戴いたのは嬉しいのですが23社とも既に出来上がっ
ていて、更に新しい冒険が出来そうに無い会社でした。逆に雪月花は何か新しい事が
出来そうな予感を感じさせてくれました」
「フクガセンムの条件を全てOKして社長が自らスカウトされたって本当ですか?」
「本当です。社名変更から化粧品部門増設に関係するための条件10箇条全て受け入
れていただきました」

「そのなかに部長で入社もあったのですね」
「そうです。化粧品宣伝部・部長と開発プロジェクトのトータルマネージャーも兼ね
てです」
「入社2年目で業績が2倍になったって本当ですか」
「本当です。3年目で3倍になって社内と株主の要望を戴き役員に呼ばれ専務職を希
望しました」
「常務ではいけなかったのですか?」
「決定権のある職が良いと思ったのです」
「よく望まれた専務になられましたね」
「そうですね。確かに周りの方達が認めてくださったからだと思います」
車内から大きなため息がもれたようだ。

 落書きー0.jpg
 
「は~い」
「どうぞ
「何でもと云う事で伺いますが~じぶん党の最大派閥の会長・闇雲を贈収賄で告発し
た時に国会のテレビ中継で見ましたが決定的な証拠に赤坂でぶつかった時に見られた
刺青の一部を見ましたがあれは?」
「余りしたくない事ですが否定出来ない証拠を作らないと落せないので覚悟を決めて
やりました」
「何か昔の映画を見るようなシーンでしたが」
「確かにあれは遠山の金さんになりました」
「よりよい環境づくりには手段を選ばずでしょうか?」
「仰る通りです」
「その刺青についてお聞きしたいのですが・・・よろしいでしょうか?」
「何でもと云った手前仕方ありません」
「あの刺青はいつ?どのようにしてフクガセンムのお背中に?」

「あれは私が国立アート大学に入った時から登下校時に誰かに見られている感じが
していました。3年目の6月でした其の視線の主が現れて私は彫り師で彫辰と云う
と自己紹介されました。そして、お願いがありますと。刺青のデザインを頼まれる
のかと思っていたら六代目を継いでほしいと云われてデザイナー志望だから私には
お受けできない事ですと断りましたが断っても断っても六代目は貴方しかいないの
で何とかお願いしますと離れません。西郷さんの銅像の所まで来て私の前に回り込
み土下座をして前に何か置いたので見ると白鞘の匕首でした。きっと私を見上げた
その目を見たら魂が限界まで来て断ったら死ぬって云っていました」

 車内はシーンと静まり返って息を詰めて聞いているようだ。
「それで六代目彫辰を継ぐ事を承知されたのですか?」
「そうです。この人を死なせてはいけない。そう感じたのです」
「それでお背中の登り龍と散る桜の花弁は?」
「六代目の証拠とお守りだって彫りやがった」
「その口振りでは彫らせたくなかったって感じですが・・・?」
「それはそうでしょう。親からもらった大事な肌に墨を入れるなんて・・・しかし
六代目を継ぐ事を承知した以上は仕方なしと諦めました」

 落書きー9.jpg

「お守りになっているのでしょうか?」
「なっているようです」
「今までどんな時に?」
「例えば実際には専務になって最初の株主総会の時、総会屋が来た時です。あの
筋から五代目が貰ってくれた私と私が関わるところに手出し無用の血判状を見せて
今後一切関わらないように話をつけられたし、じぶん党の最大派閥の長を贈収賄で
告発して多少でも組織の環境を正常に出来ました」
「解りました。有難うございます」
では、次の方と山谷が促す。

「は~い。其の総理があの大臣のスキャンダルを野党に暴露されて任命権を問われ
て即辞任されましたね。それは何故ですか?」
それは乗り合わせている誰もが聞きたい事だった。
「責任があるものが責任をもって事にあたり過ちを起こせば辞する事で責任を取る
のは当たり前の事です。違いますか?」
反対に聞かれてしまった。
「でも、自分のスキャンダルではなければ当事者が辞する事で今までしてきてると
思いますが、フクガセンムは違いましたね」
「私が責任を取って辞する事で今後のありかたが変わってくるでしょう」
「確かに前例になります」
「その為にも私が責任を取って辞める必要があったのです。任命権の重さを考え」
「しかし、守りは万全だったのではありませんか?」
「絶対も完全もありません。私自身への攻撃は常にありました。それでも私が絶え
ていたから周りから攻めることを考えたのでしょう。姑息なやり方で陥れたのです」
「オトシイレタ?」
「そうです。スキャンダルになる状況の写真の顔に大臣の顔をはめ込んだのです」
「そんな事をしても本人が否定すれば済むことではありませんか?」
「いえ、それが今はインターネットで拡散されれば命取りになってしまうのです」
「恐ろしいですね」
「あの大臣は無い事を有る事にされてしまったのですね」
「気のゆるみだったのでしょう。人間ですから。仕方ありません。助けたかったの
ですが手遅れでした。残念です」

「お気持ちは充分解りました。出来ればもっと長く総理でいてほしかったですが何と
其の後の状況のありようにビックリしました。辞任されて松竹副総理に代行を指名し
て首班指名に移ってすんなりと松竹総理の決定であれよあれよって感じの進み方には
国民としては全て小気味よく感じられました」
「そう感じていただければ有難いです」
「今回の辞任劇は早めに女性総理誕生をイメージして形にした。そう云う事では?」
「そうです。岩上さんに手伝いを頼まれた時からイメージしていました」

 X'mas.jpg

 つづく




nice!(94)